日の出をもって新しい日の始まり 未明は危険な時間帯
昔の話です。インドや日本など太陽を神聖なものと考える人は、太陽が昇るのをもって新しい日の始まりと考えていました。
御来光は、元日の到来を告げながら登る太陽を拝むことでした。
元旦は、もともとは新しい年の始まりでした。
しかし、太陽を神聖なものと考える人だけではありません。
日没を日境と考える人と多くの人が納得する日境
キリスト教やイスラム教など月を神聖のものと考える人は、夜がきたのをもって新しい日の始まりと考えていました。
キリストが生まれたとされる12月25日の一日は、今でいう12月24日のイブニングから25日の日暮れまでで、クリスマスイブが盛大な理由とも言われています。
これに対し、いろいろな人が暮らしていた古代ローマでは、多くの人が納得できる日没と日の出の中間をもって、一日の始まりと考えていました。
そして、夜をおおよそ3時間ごとの4つの時間帯に分け、「一日も遅くなってから」、「真夜中」、「おんどりの鳴くころ」「朝早く」と名付けていました。
気象庁の時間帯に関する用語
気象庁では、防災に係る用語について一般利用者の目線に立った明確さ、平易さ、聞取りやすさのため、天気予報や気象情報、解説等で用いる「予報用語」を定めています。
予報用語のうち、時間帯に関する用語は、平成19年4月からそれまでの用語を少し変え、18時~21時を「夜のはじめ頃」、21時~24時を「夜遅く」、日付が変わった00時~03時を「未明」、03時~06時を「明け方」としています。
気象庁の用いる予報用語の時間帯と古代ローマ人の時間帯とを比べると、言葉のイメージからだけですが、私たちは古代ローマ人より宵っ張りの感じがします。
18時~21時については、それまでは「宵のうち」としていましたが、変更時には、「夜のはじめ頃にかえると情緒がなくなる」などの意見がでています。
当時、日本語学の金田一瑞穂杏林大学教授は、「宵はお酒を飲むイメージもまとわりつくので、なるべく色やにおいのついていない中立の言葉がいいと思うのはわかる」と述べています。
大災害の可能性がある「未明」
「夜遅く」がすぎ、日付けが変わって「未明」となると、多くの人が睡眠中で、避難などが遅れがちになることから、この時間に顕著現象が起きると大災害の可能性があります。
例えば、昭和26年以降、100名以上が死亡するという大惨事をもたらした台風は13個あります。この13個が上陸した時間でみると一番多いのが「未明」の4個、次いで「夜のはじめ頃」の3個です(図2)。
台風の上陸は、気圧が一番低い場所(気圧中心)が、九州、四国、本州、北海道という4島上にきたときを「台風上陸」と定義していますが、上陸した時刻を調べると、夜間のほうが昼間より1.5倍程度多くなっています。これは、太陽からの日射で陸地が加熱されている影響とも言われていますが、この上陸数の昼夜の割合の差以上に、大惨事をもたらした台風が上陸する割合は夜間で多くなっています。
特に「未明」は防災において危険な用語です。
気象情報で「未明」という言葉がでてきたら、より一層の警戒が必要です。