熊本地震を教訓に物の備蓄とともに知恵の備蓄も
熊本地震が発生して2週間が過ぎました。地震発生後、梅雨を思わせるような天気が続いていましたが、これからは晴れの日が多くなり、同時に気温も高くなりますので、食中毒の可能性が非常に高い状態となり、警戒が必要です(図1)。
熊本地震の教訓を活かすには
ゴールデンウィークを利用して災害対策を考えているかたも多いと思いますが、生き残るためには、災害に備えての物の備蓄と同時に、知恵の備蓄も必要です。
知識の備蓄ではありません。
熊本地震など、大きな災害時には、普通のことができなくなります。そのときのために防災グッズがありますが、これを常に十分の量と数を持って、維持していくことは事実上できません。結局は、身の回りにあるものの有効利用です。
目的とは違う使い方をするのですから、安全に目的を達成するためには、ものの備蓄より知恵の備蓄が必要になります。
そして、一人の知恵の備蓄はそれほどでなくても、皆で出し合えば大きな備蓄となります。ものの備蓄と違って、知恵の備蓄は皆で出し合っても減りません。
熱帯魚用のヒーターでお風呂をわかす
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、いろいろなアイデアが使われました。
例えば、平成7年の阪神・淡路大震災では、地震後半月位たつとお風呂の問題が大きくなってきました。地震により機能停止だった電気と水道が復旧したものの、ガスの普及が遅れていた時期に、風呂の問題を解決するために熱帯魚用ヒーターを利用するというアイデアです。
神戸を襲った地震から20日後の2月4日、多くの新聞に被災地では熱帯魚用のヒーターを利用しで風呂を沸かしているという記事が載りました。
当時勤務していた神戸海洋気象台(現在の神戸地方気象台)の若手グループは、この記事が出る前から、同しことをして風呂を沸かし、やけどや感電、電気のブレーカーの遮断などに注意しながら、沸かした人の宿舎に集まって交代で入浴していました。
知恵を集めて代用品を作ろうとした場合、同じアイデアがでるものと思いました。
熱帯魚用のヒーターを10個(合計1、500W)組み合わせて浴槽に入れると4時間で入浴できる温度になりました(図2)。
熱帯魚がブームとなっており、ペットショップ等ではかなり熱帯魚グッズが販売されましたし、地震発生後しばらくは、比較的容易に購入できました。
しかし、この話が伝わると状況が一変します。
あっという間に熱帯魚用のヒーターが売り切れ、地震で交通網が寸断していたことから補給もありませんでした。加えて、せっかく入手した熱帯魚用ヒーターによる感電事故が相次いでいます。
このため、2月9日に資源エネルギー庁は、「やけどや感電の危険があり使わないように」という注意を呼びかけています。
この場合、「熱帯魚用のヒーターでガスがなくても風呂がたける」という知識だけでは不十分です。「使える代替品は何かないか」、「本来の目的とは違う使い方なので、これを安全に使うにはどうすれば良いか」といった、深く考える力(知恵)が必要と思います。
熊本地震の教訓を活かすには
大きな地震が起きると、防災グッズを購入する人が急増します。
災害発生時に生き残るためには、災害に備えての物の備蓄が大事です。
と同時に、知恵の備蓄も必要です。
ゴールデンウィークが始まりました。久しぶりにあう家族も多いかと思います。この機会を利用し、家族で災害対策を考えてみてはどうでしょうか。家族と緊急時の連絡のことを決めるのは大事なことと思います。
自分の身の回りの避難場所の確認や防災グッズの確認も大事なことと思います。
家族が集まった時に、地震が起きたときにどうするかということを話題に出すだけでも、防災意識が高まり、後に災害に巻き込まれたときに少しでも冷静に行動がとれる一助になると思います。
写真の出典:饒村曜(1996)、防災担当者の見た阪神淡路大震災、日本気象協会。