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夏も近づく八十八夜の茶摘みと「ちゃっきり節」の蛙の天気予報

饒村曜気象予報士
広大な茶畑で茶摘をする人々(写真:アフロ)

閏年の今年は、5月1日が八十八夜(はちじゅうはちや)です。立春を1日目として88日目の夜であるからです。

閏年でなければ、5月2日が八十八夜です。

茶摘み歌

八十八夜の時に摘むお茶は、昔から最高級のものとされてきました。

また、お茶に関するイベントも、多くは八十八夜の日に行われます。

明治45年(1912年)に発表された童謡「茶摘」では、「夏も近づく八十八夜」と歌われています。

夏の気配が感じられるのが、八十八夜です。

泣き霜

八十八夜の頃には霜の心配がなくなることから、「八十八夜の別れ霜」と言われます。

しかし、年によっては、八十八夜以降に霜が降りることがあり、この時には大きな被害が発生します。

「九十九夜の泣き霜」という言葉もあります。

霜注意報は季節限定の注意報

寒い冬の間、植物の芽は固い殻などで守られていますので、霜が降りても被害がありません。

被害が出るのは、主に春になって植物が生育してからの霜(遅霜)です。

秋の収穫前の霜(早霜)でも被害が発生しますが、冬の連日のように霜が降りている時には被害が発生しません。

このため、気象台等が発表する霜注意報は、遅霜と早霜についてだけで、季節限定の注意報です。

発表する期間は、その地方で栽培されている植物等によって異なります。

例えば、

東京都八王子市の霜注意報の基準

4月10日から5月15日で、最低気温が2度以下。

静岡県牧之原市の霜注意報の基準

早霜・遅霜期に最低気温が4度以下。

ちやっきり節

茶摘の歌には、お茶の産地・静岡の民謡「ちやっきり節」もあります。

静岡電気鉄道(現在の静岡鉄道)の狐ヶ崎遊園地のコマーシャルソングとして、昭和2年に北原白秋が作詞したもので、戦後に市丸がレコード化してから全国的に有名になりました。

静岡県内の地名や方言が入り、30番までありますが、各コーラス通しで「きゃあるが鳴くんて雨ずらよ」という囃子詞が入っています。

蛙が鳴くので雨であるという地元に伝わっている諺、つまり、蛙を使った天気予報を、北原白秋が作詞のために逗留していた静岡市の花柳地で聞き、取り入れたものです。

湿度が高くなると、雨の可能性と蛙の活動が共に増すからという説明がなされますが、実際に中央気象台(現在の気象庁)では、蛙が鳴くと雨が降る確率が高いという調査があります。

つまり、「ちやっきり節」には意味がある諺が入っていることになります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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