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真夏日到来、でも台風1号は未だ発生せず

饒村曜気象予報士
雲の渦巻き 台風イメージ(提供:アフロ)

5月23日の東京の最高気温は30.9度と、今年初めて30度を越し、真夏日となりました。

群馬県・桐生で34.2度など、全国のアメダス観測点の2割以上の213地点で真夏日、夏が近づいてきました。

しかし、夏の主役である台風は未だ発生していません。

多くの年は、3月中旬くらいまでに台風1号が発生し、5月下旬には台風3号が発生していますので、かなり遅いペースです。

5月下旬以降の台風1号の発生というと、平成10年の7月10日に上陸した平成10年以来、18年ぶりということになります。

平成10年の台風1号

台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年の7月9日15時で、次いで昭和48年の7月2日と、7月になってからの台風1号の年がありますので、現時点まででいえば、記録的な遅さではありません(表1)。

表1 遅い台風1号発生の記録
表1 遅い台風1号発生の記録

訂正 :平成10年台風1号の最終確定の発生は、7月9日でした。5月24日の記事では、7月10日としてしまいました。訂正いたします。図1の台風経路図で、「10」の数字の近くの黒丸は、9日21時の位置を示す黒丸ですので、ご注意ください。

ただ、台風1号の発生が一番遅かった平成10年は、年間で発生した台風の数は16個と少なかったのですが、上陸した台風は4個と多くなっています。特に、台風7号と台風8号は、2日連続して近畿地方に上陸し、東海から四国東部にかけて大雨となり、大きな被害が発生しています。

図1 平成10年台風1号の経路(気象庁HPより)
図1 平成10年台風1号の経路(気象庁HPより)
図2 昭和48年台風1号の経路
図2 昭和48年台風1号の経路

エルニーニョ現象が終わった年には7月の台風1号

台風1号の発生が7月となった平成10年と昭和48年には共通点があります。それは、エルニーニョ現象が終息した年ということです。

平成10年のエルニーニョ現象は、20世紀最大のエルニーニョ現象といわれていました。

そして今年、20世紀最大のエルニーニョ現象と同等といわれるゴジラ・エルニーニョ現象が終わりかけています。

気象庁では、今年の夏にはエルニーニョ現象が終息に向かい、それどころか、いきなり逆の、ラニーニャ現象がおきると予想しています。

エルニーニョ現象が終わると、台風1号の発生が遅くなるというジンクスは今年も行きそうです。

台風1号の早い発生は意味がない

昭和54年の台風1号は1月2日09時に発生したため、マスコミに『1番早く発生した台風』として取り扱われました。それまでは、昭和30年の1月2日15時に発生が1番早かったからですが、このときに『正月なのにもう台風1号が…』というより、『正月なのにまだ台風…』といったほうが適当のように感じました。

というのは、台風は暖かいと多く発生するということから、その年の台風シーズンは、北半球の気温が1番低くなって、これから暖かくなる2月下旬から始まるといってよく、1月は前年のシーズンの続きだからです。

多くの年は、台風が1月に1個発生した後、しばらく発生することがなく、2個目は4月から5月に発生します。

19ヶ月連続で台風が発生

平成27年は、毎月台風が発生していますが、これは気象庁が台風の統計をとりはじめた1951年以降、初めてのことです。そして、平成26年6月から平成27年12月まで、19ヶ月連続で台風が発生しています(表2)が、これは、昭和39年5月から40年11月までの19ヶ月とタイ記録です。

今年1月に台風が発生していれば、20ヶ月と新記録でした。 

表2 台風の月別発生数(気象庁HPより)
表2 台風の月別発生数(気象庁HPより)

越境して台風1号となったかもしれないハリケーン

北西太平洋で、最大風速が17.2メートル以上となった熱帯低気圧を台風といいます。

平成28年1月15日頃にハワイの南東海上で発生した熱帯低気圧は、西進して日付変更線を超え、北西太平洋に入ると見られていました(図3)。

平成27年はエルニーニョ現象の最盛期で、記録的にハリケーンが多い年でしたが、平成28年1月もそのなごりは続いており、7日に熱帯低気圧・パリ(Pali)が北緯4.7度と記録的な低緯度で発生し、12日には、ハリケーンにまで発達しています。

図3 National Hurricane Centerが発表したハリケーンの進路予報
図3 National Hurricane Centerが発表したハリケーンの進路予報

北西太平洋に入れば、初めての越境した台風1号の発生でしたが、強い勢力で日付変更線を超えることなく、台風1号の発生とはなりませんでした。そして、台風の連続記録はタイ記録である19ヶ月連続でストップとなったのです。

台風1号が遅く発生したからといっても、台風の上陸数が少ないわけでもなく、台風被害が少ないわけではありません。

台風に警戒が必要なことにはかわりがありません。台風情報に注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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