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関東甲信地方の梅雨は、実質上、明けている

饒村曜気象予報士
積乱雲と青空(写真:アフロ)

梅雨明けの速報

気象庁では、梅雨のない北海道を除いた日本を12の地域(沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、北陸、東海、関東甲信、東北南部、東北北部)に分け、気象予測をもとに「○○日頃梅雨入りしたと見られます」とか、「○○日頃梅雨明けしたと見られます」いう速報値を発表しています。

そして、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討をし、9月の初めに梅雨入りと梅雨明けを統計値として確定しています。

速報値と統計値は異なります。

特定しなくても梅雨入りや梅雨明けはある

梅雨入りがはっきりしないと、梅雨入りを特定しません。

統計資料が整備されている昭和26年以降では、昭和38年だけ、四国地方と近畿地方について梅雨入りを特定していません。

梅雨明けもはっきりしないと、梅雨明けを特定しないこともあります。平成5年の関東甲信地方は梅雨明けを特定しませんでした。

梅雨明けは、夏を迎えるという意味があることから、秋の気配が表われてくる頃とされる立秋(8月8日頃)を過ぎると日の特定はしません。このため、梅雨明けを特定しないことは、それほど珍しくはなく、梅雨明けが遅い北日本ほど梅雨明けを特定しない年が多くなります。そして、近年増加傾向にあります。

梅雨明けを特定しなくても、梅雨明けがなかったわけではありません。関東甲信地方は、平成5年5月30日に梅雨入りし、特定できなかったものの、どこかの時点で梅雨明けしたので、翌6年6月7日に梅雨入りがあったのです。  

関東甲信地方の遅い梅雨明けと早い梅雨明け(1951~2015年)

【遅い梅雨明け】        【早い梅雨明け】

特定せず(1993年)

1位 8月 4日(1982年)1位 7月1日(2001年)

2位 8月 2日(2003年)2位 7月4日(1978年)  

3位 8月 2日(1998年)3位 7月5日(1973年)

4位 8月 1日(2007年)4位 7月6日(2013年)

5位 7月31日(1988年)5位 7月6日(1959年)

平年 7月21日

関東甲信地方の梅雨は、実質上、明けている

図1 北陸地方が梅雨明けした7月22日9時の地上天気図
図1 北陸地方が梅雨明けした7月22日9時の地上天気図

気象庁は7月18日に、九州地方から東海地方にかけて梅雨明けしたと見られるという速報値を発表しました。九州南部は平年より4日遅かったものの、四国は平年と同日、九州北部は平年より1日早く、中国、近畿、東海はいずれも平年より3日早い梅雨明けでした。

また、22日に平年より2日早く北陸地方が梅雨明けしたと見られる速報値を発表しました。

九州地方から東海地方にかけて梅雨明けした7月18日以降は梅雨前線が消えています(図1)。加えて、24日3時に発生した台風2号が日本の東海上を北上し、その後、温帯低気圧に変わって千島列島に達する見込みです(図2)。このため、梅雨の主役の一つであるオホーツク海高気圧は大きく後退します。

図2 予想地上天気図(7月26日9時)
図2 予想地上天気図(7月26日9時)

関東甲信地方は、北東気流の雨や不安定性降雨が続いているため(表)、梅雨明けとならないのですが、実質上は、数日以上梅雨前線が消え、オホーツク海高気圧も大きく後退したことから梅雨明けとなっています。

表 東京の天気概況
表 東京の天気概況

週間天気予報では、火曜と水曜の雨のあとは、晴れる日が多くなります(図3)。このため、週の中頃で梅雨明けかもしれません。週の後半で雨や曇りの日が多くなったために梅雨明けにならない場合は、梅雨明けが記録的な遅さとなるか、梅雨明けが特定できないことになります。

図3 東京地方の週間天気予報(7月24日17時発表)
図3 東京地方の週間天気予報(7月24日17時発表)

梅雨前線が北上しない梅雨明け

梅雨前線は、普通、7月中旬頃には北上して北海道付近で弱まり、梅雨明けとなります。その後の日本付近は小笠原高気圧に覆われ暑くなります。しかし、年によっては、オホーツク海高気圧が弱いために、梅雨前線が北上せずに弱まって梅雨が明けることがあります。このような年は冷夏となりやすいので注意が必要です。北日本は夏でも気温が上がらず、冷害の可能性もあります。平成22年は、梅雨前線が北に押し上げられて梅雨明けとなり、記録的な暑さの夏となりましたが、平成23年梅雨前線が北上せずに弱まっての梅雨明けで、暑い夏にはなりませんでした。

今年は、梅雨前線が北上しない梅雨明けになりそうで、気象情報に注意が必要です。

梅雨明けまでは雨の日が多いといっても、その雨は教科書に乗っているような典型的な梅雨の雨ではなく、多くは夏の大気不安定による激しい雷雨のような雨です。

強い日射や、発達した積乱雲による落雷や突風などに注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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