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台風7号 温帯低気圧に変わりながら加速して北日本へ

饒村曜気象予報士
雲の渦巻き 台風のイメージ(提供:アフロ)

台風7号は、当初の予想より東よりを北上し、関東地方への上陸はなくなりましたが、加速しながら関東の東海上を北上して北日本に接近中です(図1)。台風の進行速度は、17日3時には北へ時速30キロメートルですが、18日3時には時速65キロメートルまで加速する予報です。

以前、私が調査した台風の進行速度は、年間の平均で21キロメートルです(図2)。

台風7号は速度が早い台風といえます。

台風の進行速度が一年のうち、一番遅いのが8月の台風ですが、その中では異例の早さです。

図1 平成28年8月17日3時の台風7号の進路予報
図1 平成28年8月17日3時の台風7号の進路予報
図2 台風の速度の分布
図2 台風の速度の分布

気象庁では「温帯低気圧に衰えた」とは言わない

台風が北上し、台風域内の暖かい空気に寒気が混じり始めると前線ができ、温帯低気圧に変わります。これを台風の温低化といいますが、気象庁では「温帯低気圧に衰えた」とは言いません。必ず「温帯低気圧に変わった」といいます。

これは、温帯低気圧に変わっても、低気圧の性質がかわったというだけで、大雨をふらせたり、強い風の範囲が広がって災害発生の可能性が高い場合があるからです。

つまり、「衰えた」といって、利用者が油断しないように考えてのことです。

台風が温帯低気圧に変わるといっても、一気に変わるわけではありません。加速しながら徐々に温帯低気圧の性質をもち、その後、減速して温帯低気圧に変わります。

台風7号も、関東の東海上を加速しながら北上して北日本に上陸し、18日3時にはオホーツク海で温帯低気圧に変わる予報です。

台風が北海道か東北地方に上陸した場合は、今年最初の上陸台風ということができます。

ちなみに、温帯低気圧に変わる6時間前には、台風7号は北海道にあって、東側に温暖前線、西側に寒冷前線ができています(図3)。この時間では、台風の中心付近は前線がありませんが、その後、寒冷前線と温暖前線が結ばれ、そこに温帯低気圧ができます。

図3 予想天気図(平成28年8月17日21時)
図3 予想天気図(平成28年8月17日21時)

台風7号などによる大雨

台風7号は、暴風警戒域をもっておらず、風による大きな被害は発生しにくい台風です。

しかし、北日本に停滞する前線が台風の影響で活発化していることと、台風の前面に活発な雨雲があることから、関東から北日本では大雨となっています。

17日15時追記

台風7号は、三陸沖を発達しながら北上し、暴風域をもつようになっています。台風としての発達ではなく、温帯低気圧に変わるときの再発達ですので、広い範囲で、風に警戒が必要になりました。

以上追記

しばらくは、台風7号や前線による大雨に警戒が必要です。

また、台風7号が温帯低気圧に変わっても、温帯低気圧に伴う寒冷前線が南下しますので、しばらくは雨に警戒が必要です。

また、日本の南海上には台風8号候補の熱帯低気圧が次々に発生しますので、こちらにも注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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