Yahoo!ニュース

台風7号が襟裳岬付近に上陸 台風はいつも「腐ってもタイ」

饒村曜気象予報士
気象衛星ひまわりから見た台風7号(8月17日17時30分 提供:ウェザーマップ)

台風7号が温帯低気圧に変わりながら発達し、8月17日17時半頃に、北海道の襟裳岬付近に上陸しました。今年初めての台風上陸です。

北海道に台風が上陸するときは、本州などに上陸した台風の再上陸がほとんどですが、台風7号のように、直接北海道に上陸するのは、平成5年8月28日の台風11号以来、23年ぶりとなります。このときは、関東地方に大雨をもたらしながら三陸沖を北上し、釧路市付近に上陸しました。

「腐ってもタイ」

台風が北上し、台風域内の暖かい空気に寒気が混じり始めると前線ができ、温帯低気圧に変わります。これを台風の温低化といいますが、気象庁では「温帯低気圧に衰えた」とは言いません。必ず「温帯低気圧に変わった」といいます。

これは、温帯低気圧に変わっても、低気圧の性質がかわったというだけで、大雨をふらせたり、強い風の範囲が広がって災害発生の可能性が高い場合があるからです。

気象庁で勤務していたとき、先輩から「腐ってもタイ(台風)」という言葉を聞いています。台風が「温帯低気圧」や「熱帯低気圧」変わっても、災害の危険があることにはかわりがありませんので、油断できないという意味です。

台風が温帯低気圧に変わるといっても、一気に変わるわけではありません。加速しながら徐々に温帯低気圧の性質をもち、その後、減速して温帯低気圧に変わります。

一般的に、台風は温帯低気圧に変わると中心付近の風は少し弱まりますが、強い風の範囲は逆に広がります。

台風7号も三陸沖を北上中に、温帯低気圧に変わりながら発達し、最大風速が毎秒30メートル、最大瞬間風速が毎秒40メートルとなり、これまでなかった暴風域(風速が毎秒25メートル以上の範囲)を持つようになっています。そして、この暴風域は東側に広いという特徴があります。

「北海道には台風のまま上陸させて」と言われたことがある

昔の話です。北海道の防災担当者から、「台風が温帯低気圧に変わっても、変わったことは言わずに台風のまま上陸させて欲しい」と言われたことがあります。

「一般の人は、台風なら警戒するが、温帯低気圧なら警戒しない。台風が北海道にくるころの台風報道は普段でも減るのに、温帯低気圧になると全く報道しなくなる。」との思いからの発言です。

「事実は事実として報じるのが責務」と答えましたが、気持ちが分からないわけではありません。「台風7号が通過し、台風一過の晴天です」と全国放送をしていても、北海道は大荒れの天気が続いています。

気象庁でも、現在では、台風が温帯低気圧に変わったあとも、警戒しなければならない状態が続く場合は、台風と同様の情報発表を継続しています。

台風7号は、18日朝までにはオホーツク海で温帯低気圧に変わる予報ですが、北日本で前線と台風の影響で局地的に非常に激しい雨が降っており、土砂災害の危険性が高まっていますので、しばらくは警戒が必要です。

また、日本の南海上には台風8号候補の熱帯低気圧が次々に発生しますので、こちらにも注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事