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まず警戒すべきは台風9号と10号より、北西進している台風11号

饒村曜気象予報士
8月19日21時の地上天気図(左)と20日21時の予想天気図(右)

今年の台風1号は「エルニーニョ現象の終わった年は台風1号の発生が遅い」というジンクス通り、7月2日に発生と歴代2位の遅い発生でした。

しかし、7月に4個と平年並に、8月にはすでに6個と平年より多く発生しています。

台風の月別発生数

台風の発生は、8月が一番多く、ついで9月となっています。

1月  2月  3月  4月 

0.3  0.1  0.3  0.6 

5月  6月  7月  8月 

1.1  1.7  3.6  5.9 

9月 10月 11月 12月  年間

4.8  3.6  2.3  1.2  25.6

台風の上陸数も、8月が一番多く、ついで9月となっています。

5月  6月  7月  8月 

0.0  0.2  0.5  0.9 

9月 10月 11月   年間

0.8  0.2  0.0    2.7

8月19日に2個発生

8月19日15時にマリアナ諸島で台風9号が発生したのに続き、21時には八丈島の東海上で台風10号が発生しました。

日本の東海上にある熱帯低気圧も、12時間以内に台風11号になると予想されており、日本近海には3つの台風が同時に存在することになりそうです。

20日11時に追記

日本の東海上の熱帯低気圧は、20日9時に台風11号になりました。

追記おわり

今年の台風は北西進して接近

台風経路には年毎のくせがあると言われていますが、今年のくせは、日本へ北西進しての接近です。

いつもの年ですと、台風は北から北東と進路を変えながら日本に接近するのですが、今年は、日本の南海上の上空には寒気を伴った大きな低気圧が居座っているために、台風は、この上空の低気圧をまわるように移動することが多く、北西からの接近が多いのです。

台風7号は、北西進して関東地方に接近し、その後、北上して北海道の襟裳岬に上陸しました

台風9号もマリアナ諸島から北東、北、北西と進路をとっての接近する予報です。

八丈島付近で発生した台風10号は西進です。

そして、9号と10号は相互作用をしながら反時計回りに回転しています。

図1 台風9号の進路予報(8月20日3時)
図1 台風9号の進路予報(8月20日3時)
図2 台風10号の進路予報(8月20日3時)
図2 台風10号の進路予報(8月20日3時)

警戒すべきは熱帯低気圧

気象衛星ひまわりから見ると、日本の南海上で西進している台風10号の雲の塊と、日本の東海上で北西進している熱帯低気圧の雲の塊があります(図3)。

熱帯低気圧周辺の雲の塊は大きく、かなりの雨を伴っていることが想像できます。

日本は晴れて暑い日が続いているとはいえ、上空に寒気が入りやすい不安定な天気が続いていますので、時々、積乱雲が発達して局地的な豪雨もおきています。

このような状態のときに、熱帯低気圧(台風11号)が湿って暖かい空気を持ち込みますので、大雨の可能性が非常に高くなります。しかも、今夜には東日本にかなりの接近です(図4)。

台風7号が上陸した北海道を中心に北日本では要警戒です。

図3 気象衛星ひまわりから見た熱帯低気圧(8月20日4時30分 提供:ウェザーマップ)
図3 気象衛星ひまわりから見た熱帯低気圧(8月20日4時30分 提供:ウェザーマップ)
図4 熱帯低気圧の進路予報(8月20日3時)
図4 熱帯低気圧の進路予報(8月20日3時)

複数の台風があると進路予報誤差は大きくなる

複数の台風があると、お互いに影響しあって動きが複雑になります。台風の渦を研究した藤原咲平中央気象台長(現在の気象庁長官)にちなみ、「藤原の効果」として名前がついている現象です。

また、複数の台風があるときは、台風の進路予報誤差が大きいという調査もあります。

最新の台風情報の入手に努め、警戒を強化する必要があります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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