東北を襲う台風10号と日本海の低気圧を結ぶ長大な危険な雲
台風10号が東北地方に向かっており、宮城県の東部仙台では30日15時~18時に暴風域に入る可能性が80%を超えています(図1、図2)。
台風10号が接近し、台風周囲に雲域がかかると大雨となりますが、台風10号からの気流と、日本海にある低気圧からの気流が合流しているところにできる、非常に細長い帯状の雲域がかかるところでも大雨となります。
帯状の長大な雲
気象衛星が登場してから分かったことですが、台風と台風(熱帯低気圧、低気圧)の間で非常に細長い帯状の雲域ができることがあり、この雲がかかるところで大雨となることがあります。
気象庁では、昭和43年8月からアメリカの軌道気象衛星(「エッサ」など)の画像を受信し、日々の天気予報業務に使っています。静止気象衛星「ひまわり」を打ち上げ、本格的に宇宙から観測を始める9年前の話です。
アメリカの軌道気象衛星の画像を使いはじめると、すぐに、これまで知られていなかったパターンの豪雨が見つかりました。南北に二つの熱帯低気圧(台風)があるとき、その間に、この二つの熱帯低気圧を結ぶように、細長い帯状の雲が現れるときの豪雨です。
この帯状雲が長時間継続し、その帯状雲が動かずに1カ所に留まると、そこでは記録的な雨量となります。
昭和43年8月17日に発生した飛騨川豪雨、その6年後の昭和49年7月7日に発生した七夕豪雨がそれにあたります(図3)。
宇宙からの観測で、大雨をもたらす雲の様子が詳細にわると、予報技術が飛躍的に向上しました。そして、昭和52年になると、静止気象衛星「ひまわり1号」が打ち上げられ、その後も機能が進化した後継機が順次に打ち上げられています。
平成27年9月上旬にも、日本海にある台風18号から変わった低気圧からの気流と、三陸沖を北上している台風17号からの気流が合流して南北方向にのびる雲の帯ができています(図4)。そして、関東北部から東北南部を中心に、「平成27年9月関東・東北豪雨」と命名されるほどの大雨被害が発生しています。
台風10号の雨域
台風10号から伸びる帯状の雲による豪雨は、近畿地方から東海地方へと移動していますので、帯状の雲がかかっているところでは豪雨となっているものの、いまのところ、記録的な豪雨となっていません。
しかし、東から北日本では、台風本体の雨が来る前の大雨です。
このため、大雨で地盤が緩んでいるときに台風の大雨が加わります。
特に、山岳部では海からの強風が吹き付け、強制的に上昇気流が生じで降雨が強まりますので、厳重な警戒が必要です。
台風10号が東北地方に直接上陸した場合は、台風の統計をとり始めた昭和26年以降では初めてのケースとなりますが、103年前に東北地方に直接上陸した台風があります。
今から103年前の大正2年(1913年)8月 27日朝9 時、台風が関東の南海上に達し、その後急速に加速して三陸地方に上陸、北海道南部を通って日本海北部に達しています。このとき、宮城県の松島湾やその周辺で大きな高潮被害が発生しています。
仙台新港の満潮時刻は15時18分と、台風10号の接近時と満潮時刻が重なる可能性がありますので、高潮にも警戒が必要です。