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寒い月末 東京に「木枯らし1号」が吹くかも

饒村曜気象予報士
木枯らし(ペイレスイメージズ/アフロ)

秋の移動性高気圧

秋の移動性高気圧は東に進むにつれて衰弱したり、中心が停滞しがちであるため、高気圧の前面(中心より東側の領域)に入る期間が長くなります。高気圧の前面は、北方からの澄んだ寒気が流れ込みやすいので、視程が良くなります。また、中国大陸も湿っているため、偏西風等にのってくる塵が少なく、「天高く馬肥ゆる秋」と言われるように、天が高くなったように感じます。また、秋の空は変わりやすく、男心や女心に例えられます

10月の東京の気温

東京では、10月のはじめは、平年より高い状態が続いていましたが、中旬以降は、低気圧が通過したときに暖かくなって雨が降り、移動性高気圧が通過時には晴れて寒くなる(日射がある昼間は気温が上がる)を繰り返しながら、気温が低くなって冬に向かっています(図1)。図1で黒丸は、東京で0.5ミリ以上の雨が降った日です。

図1 東京の今年の10月の最高気温と最低気温(28日以降は週間予報)
図1 東京の今年の10月の最高気温と最低気温(28日以降は週間予報)

東シナ海で発生する低気圧が通過

図2 予想天気図(10月29日9時の予想)
図2 予想天気図(10月29日9時の予想)

月末は、東シナ海で発生した低気圧が通過し、その後、大陸から高気圧が張り出して冬型の気圧配置になります(図2)。寒気が南下し、寒くなりますが、東京では冬の訪れを告げる「木枯らし1号」が吹くかもしれません。

「木枯らし1号」の定義

気象庁では、関東地方(東京)と近畿地方(大阪)について、最初に吹いた木枯らしを「木枯らし1号」として発表しています。「木枯らし1号」の後に木枯らしが吹いても、「木枯らし2号」、「木枯らし3号」とは言いません。

「春一番」と同じく、最初だけの情報です。

日本人にとってなじみ深い言葉である木枯らしは、正確さを期す気象庁で、東京と大阪について、別々の定義をしています。東京と大阪以外では、定義がありません。

東京と大阪では、西高東低の冬型の気圧配置のときに最大風速が毎秒8メートル以上というのは同じですが、東京では10月中頃から11月30日の間で北〜西北西に吹く風というのに対し、大阪では二十四節季の霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)の間で、北北東〜西北西に吹く風です。

この定義に該当する風が発生しない場合は、「木枯らし1号の発生はなし」になります。

「木枯らし1号」は、気象庁で統計の対象とはなっていませんので、平年値というものはありません。だいたい東京では11月5日頃、大阪では11月10日頃に吹きますが、最近は遅くなる傾向があります。

昨年の「木枯らし1号」は10月24日

「木枯らし1号」は、初雪のたよりと一緒のことが多いのですが、一昨年は東京と大阪ともに10月27日でした。そして、昨年は、東京が10月24日、大阪は10月25日でした。

月末は一時的に冬型の気圧配置になりますので、「木枯らし1号」が吹くかどうかは、最大風速が毎秒8メートル以上になるかどうかということにかかっていると思います。

来週からは本格的な寒さに

東京地方の週間天気予報によると、10月30日(日)の最高気温は15度、最低気温は10度となっています。そして、3日(木)まで、最低気温が予想が10度の日が続きます(図3)。

図3 東京地方の週間天気予報(10月27日17時発表)
図3 東京地方の週間天気予報(10月27日17時発表)

今年の秋は、10月25日に10.0度まで気温が下がりましたが、まだ10度を下回っていません。日曜から5日間も最低気温の予想が10度の日が続きますので、このうちのいずれかで10度を下まわると思います。

東京で気温が10度を下まわれば、4月20日の9.8度以来、約半年ぶりということになります。

「木枯らし1号」が吹くかどうかはともかく、来週からは、本格的な寒さの季節に入ります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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