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大阪では、例年と違って東京より早い「木枯らし1号」

饒村曜気象予報士
木枯らし(ペイレスイメージズ/アフロ)

気象庁では、関東地方(東京)と近畿地方(大阪)について、最初に吹いた木枯らしを「木枯らし1号」として発表しています。木枯らし1号の後に木枯らしが吹いても、木枯らし2号、3号とは言いません。春一番と同じく、最初だけの情報です。

「木枯らし」の定義

日本人にとってなじみ深い言葉である「木枯らし」は、正確さを期す気象庁で、東京と大阪について、別々の定義をしています。東京と大阪以外では、定義がありません。

東京と大阪では、西高東低の冬型の気圧配置のときに最大風速が8メートル/秒以上というのは同じですが、東京では10月中頃から11月30日の間で北〜西北西に吹く風というのに対し、大阪では二十四節気の霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)の間で、北北東〜西北西に吹く風です。

この定義に該当する風が発生しない場合は、「木枯らし1号の発生はなし」になります。

東京になくて大阪にあるもの、12月の「木枯らし」

12月は東京は木枯らしの該当期間ではありませんが、大阪は該当期間です。したがって、12月の「木枯らし」は大阪だけのものということになります。

「木枯らし1号」は、気象庁で統計の対象とはなっていませんので、平年値というものはありません。だいたい東京では11月5日頃、大阪では11月10日頃に吹きますが、最近は遅くなる傾向があります。

特に、大阪での遅れは顕著で、東京との差が広がる傾向にあります。これは、温暖化により初冬の季節風が弱まったためにもともと遅れがちであり、さらに季節風の南限に近い大阪では、その影響が顕著なためであると考える人もいます。

昨年の東京の「木枯らし1号」は10月24日

「木枯らし1号」は、初雪のたよりと一緒のことが多いのですが、一昨年は東京と大阪ともに10月27日でした。そして、昨年は、東京が10月24日、大阪は10月25日でした。

そして、今年は、南岸低気圧の通過で北風が強まった大阪が10月29日に「木枯らし1号」が吹きました(図)。

図 地上天気図(平成28年10月29日9時)
図 地上天気図(平成28年10月29日9時)

しかし、東京では一時的に冬型の気圧配置になったのですが、最大風速が毎秒5.8メートル(北北西の風)と、毎秒8メートル以上という「木枯らし1号」の基準には達しませんでした(表)。なお、最大瞬間風速は毎秒13.6メートル(北西の風)でした。

表 東京の気温と風向・風速(平成28年10月26~29日)
表 東京の気温と風向・風速(平成28年10月26~29日)

今後、移動性高気圧が通過するなど、冬型の気圧配置になるのはもう少し先ですので、「木枯らし1号」も、もう少し先になりそうです。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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