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高知県室戸岬で10年前に1時間降水量149ミリ、11月は記録的な短時間強雨が以外と多い

饒村曜気象予報士
集中豪雨の暗雲(ペイレスイメージズ/アフロ)

気温が高いと水蒸気を多く含む

図1 温度に対する飽和水蒸気圧の変化(気象庁ホームページより)
図1 温度に対する飽和水蒸気圧の変化(気象庁ホームページより)

気温が高いほど、空気に多くの水蒸気を含むことができます。ある温度で、どのくらい多くの水蒸気を含むことができるかを圧力で表したのが「飽和水蒸気圧」です(図1)。

気温が10度のときの飽和水蒸気圧が12.27ヘクトパスカル、20度のときの飽和水蒸気圧は23.37ヘクトパスカルですので、気温が20度のときは、10度のときに比べて約2倍の水蒸気を含むことができます。気温が30度となると、約3.5倍です。

このため、暖かい季節の大気ほど多くの水蒸気を含むことができ、条件が整えば、水蒸気を多く含んだ大気から大雨が降ります。

日本の降水量の記録

気象庁のホームページには、日本の降水量の20位までのランキングのページがあります。

これによると、

10分間降水量の第1位は、新潟県室谷で2011年7月26日に観測した50.0ミリです。

1時間降水量の第1位は、千葉県香取で1999年10月27日に観測した153.0ミリです。

日降水量の第1位は、高知県梁瀬で2011年7月19日に観測した851.5ミリです。

また、夏から初秋にかけての暖かい季節での観測が多くランキングに入っています。

しかし、詳しく見ると、雨の観測時間による差があります。

というのは、20位までを月別に集計すると、日降水量が7~9月に集中するのに対し、1時間降水量は7~9月に加えて10~11月に多い傾向があります(図2)。

また、10分間降水量は7~9月に加えて3~6月も多い傾向があります。

図2 降水量ランキングの月別集計
図2 降水量ランキングの月別集計

広範囲で多量の雨は台風

日本の降水現象の3本柱は、梅雨期の雨、台風による雨、冬の季節風による雪ということになります。

このうち、記録的な強い降り方をするのは、台風による雨です。

広範囲で多量の雨を降らせる台風によって、7月~9月のランキング入りが多いのです。

ただ、一般的な話です。

気温が低く、暖かい季節ほど大量の水蒸気を含むことができなくても、短い時間であれば、雷雨や低気圧によって狭い範囲に集中的に水蒸気が流入することがあります。

1時間降水量の20位までのランキングを月別に見ると、一番多いのが9月の5例ですが、11月は4例もあります。7月の3例、8月の3例より多いのです。

11月に1時間降水量149ミリ

図3 平成18年11月26日9時の地上天気図
図3 平成18年11月26日9時の地上天気図

今から10年前の平成18年、11月25日には宇都宮市や前橋市、福井市等で初氷や初霜といった冬の到来を告げる現象がおきましたが、その翌26日に、高知県室戸岬で1時間降水量が149.0ミリという、全国歴代6位の値を観測しています。

西日本で停滞していた前線上を低気圧が接近し、暖かくて湿った空気が流入したため、太平洋側で激しい雷雨となったからです(図3)。

近年、都市化が進んで、田圃などの遊水地に蓄えられてから川に流入することが減り、道路舗装などで地中に浸透してから川に流入することも減ったことから、短時間強雨による水害が増えています。

晩秋には、台風による広範囲で多量の雨は降らなくなりますが、狭い範囲で限られた時間となると、雷雨や低気圧によって台風以上の雨を降らせることがあります。

11月といっても短時間強雨に注意

11月9日は、冬型の気圧配置が強まったため、北日本では暴風雪となり、東京では「木枯らし1号」が吹きました。

しかし、12日には、南岸を低気圧が通過する見込です。

11月は、冬型の気圧配置が長続きせず、時々、低気圧が通過し、暖気が入って短時間強雨の可能性があります。

11月といっても、低気圧の通過時には、雨に対しては油断はできません。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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