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シベリア大陸からの離岸距離から今回の寒気のピークはすぎつつある

饒村曜気象予報士
プーチン大統領が来日 山口県で日露首脳会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

西高東低の気圧配置

冬のシベリア地方は、太陽光がほとんど当たらず、さらに放射冷却も加わり、上昇気流も起こらず、冷たいシベリア高気圧が発生します。シベリア高気圧は、地表付近で特に冷たく、東シベリアでは1月の平均気温がー40度以下になるほどの低温をもらたします。

これに対し、海が凍っていなければ、海面付近の気温はマイナスにはならないことから、暖かい千島近海からアリューシャン列島南部にかけては気圧が低くなります。このため、日本付近の等圧線は、ほぼ南北に走り、西側で気圧が高く、東側で低いという「西高東低の気圧配置」になります。

そして、日本付近は北風や北西風が吹き、シベリアからの乾いた寒気が日本海に流れ込んできます。

12月15日から16日にかけて、日本付近は西高東低の気圧配置になりましたが、等圧線の間隔が狭くて風が強いのは、低気圧に近い北日本や東日本ではなく、西日本です。

寒気が西日本を中心に南下しているためです。

図1 地上天気図(平成28年12月15日21時)
図1 地上天気図(平成28年12月15日21時)

日本海で変質

シベリアからの寒気にとっては、表面付近の水温が10度以下の日本海であっても、熱湯です。そのため、寒気にも係らず、湯気を上げて日本海を吹き渡り、日本海から熱と水分を吸収して積乱雲ができます。

気象衛星から見ると、筋状の雲が大陸の沿岸近くで発生し、季節風に沿って日本に向かって移動しています。

シベリアからの寒気が強いと、日本海に入ってすぐに積乱雲ができますので、大陸からの距離(離岸距離)が短くなります。

そして、離岸距離の短い積乱雲が日本にやってくると、脊梁山脈によって強制的に上昇させられ、日本海側の地方に大雪を降らせます。また、筋状の雲の中に、雲の渦があると、この渦が陸地にかかったときに、大雪を降らせることがあります。

12月15日から16日にかけての離岸距離

気象衛星から、12月15日2時30分の離岸距離(図2)より、16日2時00分の離岸距離(図3)のほうが大きくなっており、今回の強い寒気のピークは過ぎたことを示しています。

図2 ひまわりの赤外画像(平成28年12月15日2時30分)
図2 ひまわりの赤外画像(平成28年12月15日2時30分)
図3 ひまわりの赤外画像(平成28年12月16日2時00分)
図3 ひまわりの赤外画像(平成28年12月16日2時00分)

追記(12月16日14時):

強い寒気が南下し寒い日中となっていますが、16日13時30分のひまわり画像をみると、日本海にでている線状の雲の離岸距離は、どんどん離れており、今回の寒気のピークはすぎつつあることを示しています。

図4 ひまわりの赤外画像(平成28年12月16日13時30分)
図4 ひまわりの赤外画像(平成28年12月16日13時30分)

(追記終わり)

ちなみに、週間天気予報等によると、山口県下関の最高気温と最低気温は次のようになり、明日以降は少し暖かくなります。

最高気温 最低気温

14日(水) 13.3度  7.7度

15日(木) 8.2度   5.7度

16日(金)  9度   5度

17日(土) 12度   5度

18日(日) 15度   8度

19日(月) 16度  10度

20日(火) 18度  12度

21日(水) 18度  13度

22日(木) 17度  12度

日露首脳会談では、北方領土問題に関心が集まっていますが、この北方領土は、162年前の安政東海地震と津波、南岸低気圧による暴風被害を受けた中での交渉で、平和裡に日本領となったものです

お互いに譲れないところがあり、初日の会談は寒いものになったとしても、その後の会談では温かいものになることを期待したいと思います。

図の出典:いずれも気象庁ホームページより

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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