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冬型の気圧配置が強まる中でのセンター試験、38年前から関係者に天気の試験問題

饒村曜気象予報士
勉強をしている達磨(写真:アフロ)

日本海の筋状雲は、大陸のすぐ近くから発生

日本付近は西高東低の気圧配置となり、今冬一番の寒気が南下し、日本海には寒気の流入を示す筋状の雲が発生しています。(図1、図2)。

図1 地上天気図(1月11日9時)
図1 地上天気図(1月11日9時)
図2 ひまわり画像(2017年1月11日12時の可視画像)
図2 ひまわり画像(2017年1月11日12時の可視画像)

日本海の筋状の雲は、特に、大陸のすぐ近くからの発生しています。このことは、今回の寒気が非常に強いことの反映です。つまり、寒気の強さは雪雲ができる場所でわかるのです

今週末は、強い寒気がさらに南下し、西高東低の気圧配置が強まって全国的に風が強くて寒くなります。

太平洋側では晴れますが、日本海側では雪となり、暴風雪にところもあります。

そんな中、「大学入試センター試験」が行われます。

太平洋側が雪で始まった試験

「大学入試センター試験」が始まったのは、平成2年(1990年)からですが、その前身の「共通一次試験」が始まったのは、昭和54年(1979年)です。

日本の南岸を低気圧が通り、太平洋側で雪が降った昭和54年1月13日、日本の教育に大きな影響を与えた「共通一次試験」が始まりました。

全国225会場一斉に行われた試験に34万人が挑戦しましたが、大学入試センターでは大雪などで 試験実施不能の会場がでることに神経をとがらせ、68人の職員の半数が泊まり込んでいます。青森では大雪注意報が発表となり、関東から山梨、長野も雪景色で、東京は小雪がちらつく天気でしたが、交通機関への大きな影響はなく、試験関係者の努力によって、雪の影響もなく順調に試験が行われました。

ただ、東京都の本郷にある東京大学のキャンパスでは、東京都内の受験生の約3分の1にあたる1万6千人が受験しましたが、校舎の配置が複雑で、受験生が試験場探しに手間取ったため。東京大学の試験会場だけ試験開始を20分遅らせています。

試験を受けるのは受験生だけでない

4月に入学となると、1~2月に入学試験となりますが、この頃は、一年で一番寒い時期です。

しかも、天気は、全国各地で大きく異なることが多い季節です。

全国一斉の試験ですので、受験生が天気によって大きな不利にとなる地方がでないよう、試験に関係する多くの人が、当日の天気予報をもとに対策をとっています。

つまり、試験を受けるのは受験生だけではありません。

試験関係者は、38年前から、当日の天気の問題についての試験が行われているのです。

順調に試験が行われてあたりまえ、順調でなければ非難をうけるという責任を伴った受験です。

図3 試験のイラスト
図3 試験のイラスト

仮に、大学入学が10月となり、全国一斉試験が8月となった場合、暑さ対策が必要ですが、多くの年は冬ほどの地域差がでません。ただ、台風がやってくる年があり、その場合は、深刻な影響がでる可能性があります。

試験関係者に対する「当日の天気の問題」は、1月試験の場合は難しい年が多く、8月試験の場合は易しい年が多くても、極端に難しい年が混じっているという、どちらにしても、大変です。

試験の規模が全く違いますが、気象予報士試験は、毎年1月と8月に、全国5ヶ所(北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県)で一斉に行われます。今年の1月で47回目ですが、この間、中止となったのは、38回(平成24年8月)の沖縄県の1回だけで、1月の中止はありません。

38回の気象予報士試験は、大型で非常に強い台風15号が沖縄県に接近したための、沖縄県だけの中止で、沖縄県の受験生に対しては、後日、全く違った問題を使って再試験が行われました。できるだけ他の会場の受験生と差がでないような配慮がされたのですが、このことによって、有利・不利が全く生じなかったと言い切れないと思います。

週末の天気

気象庁が発表した情報では、「北日本の上空約5000メートルには平年より5度以上低い氷点下36度以下の寒気が流入しており、日本付近は北日本を中心とした強い冬型の気圧配置が13日にかけて続き、14日から15日ころには、東日本や西日本にも強い寒気が流れ込み、冬型の気圧配置はさらに強まる見込みです。」となっています。

このため、北日本から西日本の広い範囲で日本海側を中心に大雪となるなかで、「大学入試センター試験」が行われます。

図4 週間天気予報(2017年1月11日12時発表)
図4 週間天気予報(2017年1月11日12時発表)

図4は、気象庁が発表した各地の週間天気予報の一部です。

試験が行われる土日の天気は、氷点下で雪の札幌、晴れているが寒い仙台と東京、風雪が強い新潟と、各地の天気に大きな差があります。

しかも、東京と新潟の週間天気予報の信頼度は「A」と高いのですが、札幌と仙台の信頼度は「C」となっており、今後変わる可能性があります。

今年は特に、受験生、試験関係者ともに、最新の気象情報の入手に努め、早め、早めの対策が重要です。

図1、図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(1998)、天気のしくみ、新星出版社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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