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週半ばの今冬最後かもしれない寒気南下は、アンサンブル予報によれば信頼性が高い

饒村曜気象予報士
カレンダー(ペイレスイメージズ/アフロ)

今週の天気予報

週間天気予報によれば、北日本から西日本の日本海側は、曇りや雪または雨の日が多く、太平洋側は期間の前半は、曇りや雨または雪の日、後半は晴れる日が多くなっています。

図1 予想天気図
図1 予想天気図

また、週の中頃は北日本から東日本の太平洋側では発達する低気圧の影響で荒れた天気となり、特に15日(水)の東日本太平洋側では大荒れや大しけとなる所があります。これは、今週前半は日本上空で偏西風の蛇行が大きくなり、日本海低気圧や南岸低気圧の通過後寒気が大きく南下し、週半ばは一時的に冬型の気圧配置が強まるからです(図1、図2)。

この、今冬最後かもしれない寒気南下は、アンサンブル予報によれば信頼性が高い予報です。

図2 地上天気図(左上14日21時から右下19日21時まで1日毎 )
図2 地上天気図(左上14日21時から右下19日21時まで1日毎 )

アンサンブル予報

アンサンブル予報は、従来の天気予報が一つの初期値から出発する単独予報であるのに対して、実況値にごく近い複数の初期値から出発する複数個の数値予報を行い、それを統計的に処理することにより、よりたくさんの情報を得ようとするものです。アンサンブル予報では,初期値,予報結果をある決まった値と考えるのではなく、ある拡がりをもった有限個(メンバー数)のかたまりと考えます(図3)。

図3 アンサンブル予報の説明図
図3 アンサンブル予報の説明図

そして、全メンバーの中で、予報結果の類似しているものどおしを集めてグループに分けたものをクラスターといいます。また、それぞれのクラスターを構成するメンバーの平均をそれぞれクラスター平均といいます。

クラスター平均のばらつき(スプレッド)が小さいほど、信頼度(スキル)が高いことに相当しています。このように、アンサンブル予報結果に基づき、統計的な処理をすることで、最良の予報値や予報誤差などを推定することができます。

このため、アンサンブル予報は、週間天気予報だけでなく、台風進路予報(5日先まで)、異常天候早期警戒情報、一ヶ月予報、三ヶ月予報、暖候期予報、寒候期予報、エルニーニョ監視速報でも使われています。

今回の寒気南下はクラスター平均のばらつきが小さい

図4は、気象庁が専門家向けに提供している平成29年3月11日21時の観測値をもとにしての8日先(192時間先)までの週間天気予報支援図の一部です。

図4 週間天気予報支援図(平成29年3月11日21時の観測をもとにした予報)
図4 週間天気予報支援図(平成29年3月11日21時の観測をもとにした予報)

いろいろなことが書いてある図で専門的ですが、図の中にある線の束のうち、一番北にあるものに注目して下さい。

これは、気圧が500hPaになる高さが5400mという特定高度線のクラスター平均です。どのクラスター平均も、週の前半は蛇行が次第に大きくなり、96時間後には日本付近が深い気圧の谷となり、このタイミングで強い寒気が南下することを示しています。

また、この気圧の谷は、大きく蛇行しているものの、クラウター平均のばらつきが小さく、予測の信頼性が高いと考えられます。

その後、気圧の谷は東に抜け、蛇行は小さくなるクラスター平均が多いのですが、そうでもないクラスター平均もあります。4日先(96時間後)に強い寒気が南下し、冬型の気圧配置が強まるのは信頼度が高い予報です。その後、信頼度が少し落ちますが、大陸から高気圧が張り出し、冬型の気圧配置が弱まります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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