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【龍神、リオへ挑む】男子バレーの未来を担う「NEXT4」がデビュー戦で見せた可能性

大林素子スポーツキャスター、女優

日本男子バレーボール“新生・南部ジャパン”が、ワールドリーグ(5月30日開幕)でスタートを切った。

9月のワールドカップに向けていろんなことをやりたい、試したいというワールドリーグ。若い選手がどうでるか、すごく興味があった。

男子バレーの未来を担う「NEXT4」(左から高橋健太郎、石川祐希、柳田将洋、山内晶大)
男子バレーの未来を担う「NEXT4」(左から高橋健太郎、石川祐希、柳田将洋、山内晶大)

若いチームにとって初戦白星は自信に

そんな大注目の中、見事な初戦勝利(チェコに3-1で逆転勝ち)、2008年以来の初戦白星。

「NEXT4」のうち、20歳の高橋健太郎(筑波大学)はけがの治療で外れていたが、19歳の石川祐希(ウイングスパイカー、中央大学)、21歳の山内晶大(ミドルブロッカー、愛知学院大学)という若い選手が先発し、22歳の柳田将洋(ウイングスパイカー、サントリー)もワンポイントで出場。ホーム初戦で勝利したことはまずよかったと思う。若いチームは勝つことで自信をつけていくし、乗っていけるし、周りの期待も高まる。いいスタートだったと思う。

南部(正司)監督はまだまだ課題があると言っていたが、石川が5月26日に合流したばかりで、ワールドリーグに向けチーム練習がほとんどできなかったわりにはコンビとかチームにまとまりがあると思った。合宿や前日練習の雰囲気もいい。若い選手が積極的に声を出し、新しいものに進んでいくっていうエネルギーがすごく感じられる。

期待の「NEXT4」について。

石川祐希――「史上1、2の選手」天才はやはりすごかった

石川祐希は初戦で17得点を挙げる活躍
石川祐希は初戦で17得点を挙げる活躍

まずは石川祐希。男子バレー史上1、2の選手、天才がやってきた的な感じで言われているが、石川の潜在能力、センスというのは初戦を見てもやっぱりすごいと言わせるものだった(石川はチーム一の17得点で勝利に貢献)。

石川はジャンプ力があり滞空力があるので、相手を見て様々なタイミングでスパイクを打てる。打ち分けも含めて自分が点数を取らなければいけないということを冷静に理解できている。19歳でこれだけ自分の立場と役割を理解してそれを全うできるという選手はなかなかいない。恐ろしい新人。すでに日本の柱だ。

これからの課題の一つとして南部監督がおっしゃっていたのはブロック。だが、海外と戦っていくにしたがっていろんなものが変わってくると思うし、時間と経験を重ねれば、クリアになってくるだろう。

今はバレーボールをすごく楽しんでいる。好きでやっているから、すべてを吸収している。100点満点のアスリートの感じがする。中大のトレーナーの人から、体のバランスや自分のメンタルのケアにも意識をしていると聞いた。持っている質もいいらしい。「出てきたな、天才が」という感じだ。

初戦はチーム全体的に緊張感があって、緊張していたと思うが、石川は落ち着いてプレーできていた。あまり口で言わず冷静に見ているタイプだが、初戦は言葉を発して、試合の中で自分をコントロールしていた。新人でここまでできる選手は見たことがない。星城高校時代からレポーターとして見ているので、春高で優勝し、2年連続3冠を達成したときにも書いたが、普通じゃない天才がそのままどんどん成長してきている。そして石川のうまさを見て、他の若手やベテランもすでに、すごいなと思い刺激になっているそうだ。

山内晶大――バレー歴6年でここまで進化、どんどん暴れてほしい

日に日に進歩を遂げている山内晶大
日に日に進歩を遂げている山内晶大

そしてアッキーこと山内晶大。6年というバレー歴を考えると、この1年、半年での進化・進歩はすごいものがある。昨年、チェコと親善試合をしたときに相手の攻撃にブロックがついていけなかったとのことで、今回のテーマとしてボールをちゃんと見てしっかりブロックに跳んでいくということを意識してやっている。もちろんスパイクが3得点で少なかったり、本人も「課題だらけですよ」と言っていたけれど、スタートとしてはよかったのではないかと思う。

同じミドルブロッカーの鈴木寛史が15得点(スパイク9得点)と素晴らしかったので、数で比較されてしまうが、それは山内(ミドル)とセッターのコンビがまだ始まったばかりだからで、これから合わせていけばいいと思う。

204cmと高さがあり、ブロックポイントもあった(鈴木らと合わせると初戦のブロックポイントは日本がチェコを上回った)。スパイクもブロックも両方兼ね備えた選手になれると思う。経験と時間がどんどん大きくしてくれるはず。山内は謙虚な選手なので、ぜんぜんまだまだですと言ったり、いろいろ考えてしまうところもあるみたいだが、どんどん何でも吸収して暴れてほしいと思う。

柳田将洋――安定感や勝負強さ、これからに注目

初戦はピンチサーバーとしてワンポイント出場だった柳田将洋(2戦目は4セット目途中から前衛でも)。

やっと始まったというところ。石川や山内らの活躍を見ながら、“俺も早く出たい、やりたい”と思っていたと思う。そういう気持ちがひしひしと感じられた。

安定感や勝負強さが、何よりも彼の持ち味。南部監督も「スタート(先発)はもちろんのことだが、途中から出てきて流れを変える力もある」とおっしゃっていた。これからの柳田のプレーにも注目してほしい。

「新たな可能性と勢い」でリオへ、自信を持って挑んで

とにかく「NEXT4」のみんなの最大の魅力は「新たな可能性と勢い」なので、今のまま貪欲にやってほしい。負けとか1本の失敗など気にしないで、リオを見つめて進んでほしい。南部監督がおっしゃっていたように方向性は間違っていないので、自信を持って挑んでほしい。みなさん応援してあげてください。

■ワールドリーグ2015の結果(日本バレーボール協会)

■龍神NIPPONのメンバー(日本バレーボール協会)

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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