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イスラエルの弾道ミサイル防衛システム「アロー3」試験成功

JSF軍事/生き物ライター
米ミサイル防衛局よりアロー3迎撃試験

12月10日、イスラエルとアメリカが共同開発している大気圏外迎撃用の弾道ミサイル防衛システム「アロー3」の迎撃試験に成功しました。

  • 米ミサイル防衛局公式よりアロー3迎撃試験

アロー3は大気圏外でのみ機動できる迎撃体を搭載しています。宇宙空間で使用される兵器であり、弾道ミサイルのみならず低軌道の人工衛星をも撃墜も可能です。アロー3の弾頭部分である大気圏外迎撃体はこれまで図と模型が公開されているのみで、実物はまだ公開されていません。その構造は同じ大気圏外迎撃ミサイルであるSM-3やTHAADの物とはかなり異なっています。

アロー3の大気圏外迎撃体
アロー3の大気圏外迎撃体
SM-3の大気圏外迎撃体(DACS)
SM-3の大気圏外迎撃体(DACS)

アロー3はシーカー(目標を捉える光学センサー)が首振り可動式でSM-3は固定式。姿勢制御用サイドスラスターはどちらにも付いていますが、SM-3には重心付近に大型の軌道修正用サイドスラスターが付いています。アロー3にはこれが付いておらず、最後部に推力偏向ノズルが付いています。

アロー3は視野の広いシーカーで広範囲に目標を捜索可能で、推力偏向ノズルによって急激な方向転換が可能であるのに対し、SM-3は軌道修正用サイドスラスターによってスライド移動して、細かい微修正が得意という特性の違いになります。

敵弾道ミサイルが予想外のコースを飛んできても柔軟に対応できるアロー3と、細かい修正が得意で命中精度が高いSM-3。THAADの迎撃体もSM-3と同じく重心付近にサイドスラスターを持ちスライド移動します。アメリカは当初、イスラエルに対してSM-3またはTHAADを購入するように打診していましたが、イスラエルはこれを拒否してアロー3の新規開発を選びました。それは迎撃ミサイルの射程などの基本的な性能面での他に、この大気圏外迎撃体の特性の違いに拘った結果なのかもしれません。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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