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ライバルは同級生たち!社会人2年目を迎えた、もと阪神の穴田真規選手

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
和歌山箕島球友会2年目の穴田選手。試合後に行われたシートノックの様子です。

“球春”を満喫していらっしゃいますか?プロ野球だけでなく、昨年よく取り上げさせていただいた社会人野球も既に公式戦が始まっています。もと阪神タイガースの選手たち、昨年から社会人チームでプレーする野原将志選手(26歳、三菱重工長崎)、藤井宏政選手(24歳、カナフレックス)、穴田真規選手(22歳、和歌山箕島球友会)の3人は、もうおなじみさんですね。そこに、ことしは阪口哲也選手(22歳、パナソニック)も加わりました。今季もこの4選手の話題は何度かご紹介しますので、ご期待ください。

社会人野球には7月に東京ドームで行われる『都市対抗野球大会』、9月に西武プリンスドームで行われる『全日本クラブ野球選手権』、11月に京セラドームで開催される『社会人野球日本選手権』という、大きな3つの大会があります。都市対抗野球はもう各地で1次予選が始まっており、クラブチームが参加するクラブ選手権は6月が1次予選、そして優勝すれば日本選手権の出場資格を得られる“日本選手権対象大会”が、3月の『JABA東京スポニチ大会』を皮切りに11か所で開催中です。

昨年のもと小虎たちは、穴田選手の和歌山箕島球友会が全日本クラブ野球選手権の本大会に出場したものの連覇はならず、三菱重工長崎とカナフレックスは都市対抗や日本選手権の本大会に進めませんでした。ことしは東京ドーム、西武プリンスドーム、京セラドーム制覇!という野望を、我々も胸に抱いて応援していきたいものですね。

もと小虎たちの球春は

それぞれのスケジュールをご紹介しましょう。まず三菱重工長崎野原将志選手は昨年6月から副主将を務めていて、ことしは主将になったとか。ことしから、もと巨人の加治前竜一外野手(29歳)と巨人→ロッテの岸敬祐投手(28歳)が入団して、来年の創部100周年を前に本大会出場を目指しています。野原主将、オープン戦ではホームランも打っていましたよ。4月17日から倉敷で行われる『JABA岡山大会』でまず日本選手権の切符を!都市対抗は4月26日の長崎・佐賀1次予選からです。

滋賀県のカナフレックス所属の藤井宏政選手は3月に開催された『京都府春季大会』に出場し、京都城陽ファイヤーバーズに12対0でコールド勝ちしたものの、ニチダイ戦は13対5で敗れ決勝トーナメントに進めず。藤井選手は2試合とも二塁打を放っています。次は4月18日から甲賀市民スタジアムで始まる、都市対抗の滋賀1次予選。そして新規参入初年度だった昨年は出られなかった日本選手権対象大会ですが、ことしは5月2日から岐阜で開催の『JABAベーブルース杯』に出場。その前に4月9日、大阪ガスとのオープン戦で西宮に来ますね。

3月28日のオープン戦で打席に立つ、もと阪神の穴田選手。
3月28日のオープン戦で打席に立つ、もと阪神の穴田選手。

クラブチーム・和歌山箕島球友会穴田真規選手は4月11日から都市対抗の大阪・和歌山1次予選がスタート。ここで勝ち残ると、次は5月に行われる近畿2次予選へ。うまくいけば藤井選手、穴田選手、阪口選手のチームが近畿2次予選で激突って可能性もありますね。激突は困るかな。でも敗者復活も含め5チームが本大会に出られるので、みんなで東京ドームへ行きましょう!また6月にはクラブ選手権の予選も始まります。大阪・和歌山1次予選、西近畿予選突破は当然。本大会で優勝して日本選手権の切符も手に入れなくてはなりません。

そして、きのう新入団選手として発表されたパナソニック阪口哲也選手。新年早々から練習に参加していますが、きのう4月1日に晴れて正社員となりました。背番号は阪神タイガースの大先輩でもある梶原康司選手が昨年末に退団し、その『8番』を受け継いでいます。既に公式戦は3月の『大阪府春季大会』で優勝したパナソニック。次は野原選手と同じく4月17日からの『JABA岡山大会』に出場します。両方が決勝トーナメントに進めば顔合わせがあるかも。

その前に4月8日、阪口選手と穴田選手が直接対決します。これはもう鳴尾浜ファン、小虎ファンの皆さん必見!パナソニックvs和歌山箕島球友会のオープン戦は枚方市のパナソニックスタジアムで、4月8日13時からです。

「見違えるほど変わった!」と西川監督

それでは先週末に会った、和歌山箕島球友会・穴田真規選手の話をお伝えします。この日、マツゲン有田球場では関西国際大学とのオープン戦が行われました。ところが穴田選手はスタメンから外れ、ベンチで大きな声を出しています。観戦に訪れたご両親は「何かやらかしたに違いない…」と心配な様子だったのですが、どうやら仕事(スーパーのマツゲンでの勤務)が休めなくて、午前中は出勤だったとか。だから途中出場になったと、あとで聞きました。

風の強い日で、穴田選手の打席中にはこんな砂嵐みたいな状況も。
風の強い日で、穴田選手の打席中にはこんな砂嵐みたいな状況も。

途中でサードの守備から入り、1打席目は二ゴロ。2対1と1点差に詰め寄られたあとの2打席目(8回)はセンターへのフライ…と思ったらエラーで、貴重な追加点を挙げています。打点はありませんが。そこで代走を送られ、この日は終了。試合はそのまま3対1で箕島の勝ちです。

昨年11月で12選手が退部したこともあり、チームは相当若くなったと和歌山箕島球友会の西川忠宏監督。30人弱のチームの中で、ことし24歳になる年代から下が21人もいるとか。それはかなり若いですねえ!さらに穴田選手の同級生が、新入団選手も含めて全部で9人。「元気出して引っ張っていかないと。そう思っているでしょう」とグラウンドでノックを受ける穴田選手を見やって、おっしゃいます。

「もう年やから変顔はしない」と言いながら、ちょこっとサービス(笑)
「もう年やから変顔はしない」と言いながら、ちょこっとサービス(笑)

「変わりましたねえ!良くなりましたよ。体も見るからに大きくなったでしょう?ウエートトレーニングも一生懸命やっていますから。マツゲンさんに提供していただいたプロテインをしっかり飲んでね。気持ちも変わったんじゃないかな。本当に見違えるくらいです!4番を打たせようかというところまで来ていますよ。3番は山下という選手がいるので、4番か5番で」

3月7日に行われたNTT西日本とのオープン戦(千里が丘球場)は1対3で敗れたものの、二塁打を含む2安打だった穴田選手に「NTT西日本の前田監督が『穴田くん、いいねえ!』と絶賛だったんですよ。ぜひ(都市対抗野球の)補強で取ってやって、と言っておきました。まあNTTを倒して、うちが出るのが一番やけど(笑)。頑張っていれば、プロだけでなく社会人からも声がかかる可能性は広がりますからね」と西川監督。

同級生野手の加入が奏功

ベンチにいてもグラウンドでも、穴田選手の大きな声が聞こえます。
ベンチにいてもグラウンドでも、穴田選手の大きな声が聞こえます。

「10月くらいから年明けまで、ほぼ毎日ウエートトレーニングをしてたんですよ。今は自分で考えて自分がやりたいことをできる時間があるから、体を大きくしようかなと思って。それが…年明けすぐインフルエンザにかかって、しぼんでしもた!あはは」。笑っている場合じゃないですよ~インフルエンザなんて。「それより正月の1日から3日は仕事が休みで、4日から1週間が自宅静養。主任にメッチャ怒られた」。でしょうねえ。せっかくついた筋肉は「しぼんだけど、それからオープン戦の前までずっとやって」戻したようです。

昨年は1つ年下の甲斐大貴内野手と何度か撮らせてもらった2ショット写真ですが、ことし最初は一気に増えた同級生のうち新入団の岸翔太内野手にお願いしました。岸選手は京都明徳高校を出て大阪ガスに入社。4年間プレーしたのち昨秋に戦力外を告げられます。野球を辞めても、その企業の社員として働き続ける社会人野球OBは多いのですが…迷わず退社を決めた岸選手。

「安定は頭になかった。夢はプロなので。会社を辞めることしか考えていなかった」

大阪ガスは11月の日本選手権に出場したため、戦力外を言われたのも選手権終了後。「他のチームのテストも済んでいました。だから高校時代の監督が動いてくれて、箕島には同じ高校の後輩の山田がいることもあって、“練習に来てくれ”と言ってもらったんです」。セレクションが行われたのは昨年11月30日。退部する12選手のための引退試合前で、ちょうど見学に行っていた私は、穴田選手と同じサードの守備と2本もホームランを打ったところをしっかり見ました。

最初はこんな感じに澄ましていた穴田選手(左)と岸選手だったのですが…
最初はこんな感じに澄ましていた穴田選手(左)と岸選手だったのですが…

「ホームランはたまたまです」という岸選手に、穴田選手は「すごかった!」と言います。箕島に入って最初守っていたショートを西口選手に譲って後半はサードに回ったこともありますし、おまけに岸選手の長打力も見て危機感を覚えたりした?と聞いたら「足も速いっすよ。ゴロがみんな内野安打になる」と褒める穴田選手。なんだか嬉しそうですねえ。「同じ野手で同級生が入ってきたことは大きい。影響もでかいですね。どんな?おもろいし、いじれるし」…そこですか。

もう少しリラックスしてと言ったら、こんなことになっちゃいました!
もう少しリラックスしてと言ったら、こんなことになっちゃいました!

岸選手も「真規は明るいし、おもしろいし。チョーいじられます(笑)。真規はプロでしたけど、似たような道を歩んでるので。実力はある選手だと思います」と、ニコニコしながらライバルを語りました。「同級生やから一緒に出たいな」と言えば「いや、僕は蹴落としたい」と穴田選手。すると「僕も」と返し一緒に笑います。きのう4月1日、マツゲンに入社した岸選手ですが「ガスを辞めて後悔することは絶対ないです!野球があれば頑張れるから」と力を込めました。

それを聞き、穴田「見直した。そらモテるわ~」、岸「モテへんわ」というやり取り。何かメッセージをお願いしたら、穴田「これからは僕とコイツ、8対2の割合で応援してください」、岸「逆や!こっちが8でコイツが2」てな感じです。ちなみに西川監督いわく「守備は穴田の方が上ですね」ということで、この日も穴田選手が入ったあと岸選手はファーストを守っています。

虎の同級生たちにも刺激

穴田選手は「今いい感じです。ヒットになっていない打席でも内容はいいので」と言っていました。ことしはきっとドーム制覇に貢献してくれるでしょう。最後に、もとチームメイトの話になりました。「ご飯を食べるとこにスポーツ新聞が置いてあるからメッチャ読んでますよ。中谷も一二三も大人の顔になりましたねえ。新聞見ててそう思った。危機感ですかね?顔つきが変わった」。そういう穴田選手も変わりましたよ。

顔つきが変わったという同級生たちはプロ5年目。穴田選手の表情も変わっています。
顔つきが変わったという同級生たちはプロ5年目。穴田選手の表情も変わっています。

そして「島本、開幕1軍ってすごいなあ。支配下になった時は電話しました。お前、連絡せーや!って言うたら『気まずいやん…』って」と言います。同じ育成選手で入団した島本投手は、先に退団した穴田選手や阪口選手の気持ちを考えたら、嬉しいと報告はしにくかったのでしょうね。でもきっと、再び同じ場所に立つため必死で頑張っている穴田選手にとっては大きな励みになるはずです。特に同級生の5人は。きのう1日、神宮球場で3シーズンぶりの1軍白星を手にした岩本投手のことも、新聞でしっかり読んだかな。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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