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都市対抗野球 本大会出場を決めた!もと阪神の野原将志選手

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
三菱重工長崎の野原主将(右)と中道副主将。5月のJABA九州大会にて。

社会人野球3大大会の1つ、都市対抗野球は毎年7月に東京ドームで開催されています。ことしも各地区で4月から1次予選があり、さらに5月からの2次予選を経て代表チームが決定しました。最後は、順調にいけば13日に終わっているはずだった九州地区第2次予選。開催地の熊本はちょうど大雨で中止が相次ぎ、18日に最後の第3代表が決まったばかりです。

その前の17日に第2代表で本大会出場を決めたのが、もと阪神タイガース・野原将志選手(27)の所属する三菱重工長崎でした。

左手首骨折から気合いの復帰

社会人1年目だった昨年、野原選手が初めて臨んだ都市対抗は、1次予選を順当に突破。2次予選は2回戦でHonda熊本に負けたものの、敗者復活トーナメントに回り、第2代表決定4回戦(準決勝)まで勝ち進みました。しかし残念ながら西部ガスに延長10回サヨナラ負け。第3代表決定2回戦(準決勝)も沖縄電力に負けて、本大会の切符は逃しています。その時の話は、昨年8月6日に書いた記事でご覧ください。<三菱重工長崎を再び全国レベルへ!託された期待は大きい、もと阪神の野原将志選手>

昨シーズン途中から副キャプテンに、そして今年はキャプテンに指名された野原選手。ところが4月のJABA岡山大会で死球を受け左手首を骨折してしまったため、都市対抗の長崎・佐賀1次予選や他の大会は欠場することになり「ぶっつけ本番かも」と言っていました。復帰したのは5月末で「オープン戦に3試合くらい出て」6月6日からの九州地区第2次予選(熊本市、山鹿市)に臨んだわけです。

5月初旬のJABA九州大会で、他チームのスコアをつける野原選手。
5月初旬のJABA九州大会で、他チームのスコアをつける野原選手。

予選中は「試合に出られているから大丈夫なんでしょ」なんて返事だったので、本大会出場決定後にお祝いの連絡をした際も「間に合ってよかったね」と言ったら「いやいや~強行出場ですよ。痛くないとは言っていましたけど、痛いっすもん!試合はテーピングして、痛み止め飲んで…」と、明るい声とは裏腹の話。そりゃそうですね。折れてから2ヶ月経っていませんよね。なのに出たのは、やっぱりキャプテンとしての責任感かなあ。「それが仕事なんで」。さらっと返されました。

チーム6年ぶりの都市対抗本大会へ

では三菱重工長崎の九州地区第2次予選を振り返ってみましょう。まず6日の1回戦は、てるクリニック(那覇市)に19対2で8回コールド勝ち。今年から加入した、もと巨人の加治前竜一選手が満塁ホームランを打っています。7日の2回戦、といっても既に第1代表をかけた準々決勝ですが、昨年の第3代表決定準決勝で敗れた沖縄電力(浦添市)に10対3で勝ちました。野原選手が2ラン!ついで10日の準決勝ではJR九州(北九州市)と対戦。野原選手の二塁打など計18安打を放ったものの、延長11回サヨナラ負け…。第1代表の座は逃します。

12日は敗者復活トーナメントの第2代表決定3回戦で、宮崎梅田学園(宮崎市)に1対0で勝利。翌13日の第2代表決定準決勝は、昨年の第2代表決定準決勝で負けた相手の西部ガス(福岡市)と対戦、10対5で6回途中降雨コールドゲームとなり、勝利しました。早めに得点しておいてよかったですね。そのあと2日続けて雨天中止の影響を受け、第2代表決定戦が行われたのは17日。相手は昨年の2回戦で三菱重工長崎に勝ち第1代表となったHonda熊本(大津町)でしたが、ことしは奥村投手の完投もあり2対1で勝った三菱重工長崎が、九州地区第2代表に決まりました!

今季から主将に“昇格”した野原選手は、試合後の挨拶で監督(左)の隣に立ちます。
今季から主将に“昇格”した野原選手は、試合後の挨拶で監督(左)の隣に立ちます。

三菱重工長崎の本大会出場は6年ぶり17回目、第1代表のJR九州は6年連続18回目、そして18日にHonda熊本を破って第3代表となった西武ガスは、今大会32チーム中で唯一の初出場です。そうそう、JABA日本野球連盟の公式サイトに九州地区2次予選の写真が出ているんですけど、その中に野原選手がガッツポーズしている1枚を見つけました!とってもいい顔で写っていますよ。

打率4割超えでも目立たない?

強行出場の野原選手でしたが、しっかり打って勝利に貢献したようで何よりです。第2代表を決めたHonda熊本戦は3打数1安打で、この九州地区2次予選での通算成績は19打数8安打、ホームランは1本で、打率が.421。いい数字じゃないですか。でも「4割以上打ってるのに目立たないんですよ!みんながメチャクチャ打つんで、僕ひきますもん。(2次予選の6試合で)3試合が2ケタ得点でしたし、1ケタ安打だったのは2試合だけでしょう。チーム打率は3割いってるかも」と言います。

野原選手に抱っこされる長男の悠成くん。7月の東京ドームへも応援に行くそうです!
野原選手に抱っこされる長男の悠成くん。7月の東京ドームへも応援に行くそうです!

ヒット数と得点を見ると、16安打19点、13安打10点、18安打7点、5安打1点、14安打10点、6安打2点。確かにすごい数字です。「このまえ聞かれたんですよ。『野原さん、どれくらい打ってますか?』って。4割は打ってると答えたら『ええーっ?そんなに打ってるイメージないですねえ!』だって。いやいや…僕も4割いってますよ。ホームランも打ってますから(笑)」。打つチームというのは、相手として嫌なものなんでしょうね。本大会が楽しみです。

きのう19日に組み合わせ抽選会が行われ、三菱重工長崎の初戦は7月23日14時に決まりました。相手は浜松市のヤマハです。この抽選会の前に話をしたのですが「開幕試合だけは避けてほしい」と言っていたので、なるほど開会式直後の試合ってのは緊張するんだなと思ったら「選手宣誓をしなきゃいけないんで」と。あ、そうなの?「はい。その試合の両チームが宣誓するんですよ。いやですねえ」。もちろんキャプテンの役目ですから。でも無事に開幕試合は避け、大会6日目の1回戦最終日に決定しました。

余談ですが、7月18日の開幕試合は昨年優勝した西濃運輸(大垣市)とJFE西日本(福山市、倉敷市)の顔合わせで、その次が大阪ガス(大阪市)と東京ガス(東京都)。また、もと阪神の若竹竜士投手が所属する三菱重工神戸・高砂(神戸市、高砂市)は、3日目の7月20日にJR東日本(東京都)と対戦します。

感想はただ「ホッとした…」

創部100周年に向け、全国大会での活躍が期待されます。
創部100周年に向け、全国大会での活躍が期待されます。

最後に改めて、嬉しい?と聞くと「嬉しいっていうか。いや~もうホッとした、ってのが大きいですね」と野原選手。「いろいろあったんで、ほんと。決まってホッとしました。よかった…」。しみじみと繰り返します。“いろいろ”が具体的に何なのかはわかりませんが、その中にはキャプテンの責任感、プロ経験としての重圧、直前にケガをしてしまったことなども含まれているのだと、私は勝手に思い込んでいます。

三菱重工長崎の都市対抗出場は6年ぶりで、秋に開催されている社会人日本選手権も2010年を最後に本大会出場がありません。まもなく創部100周年の伝統あるチームを、もう一度全国の舞台へー。という願いもあって昨年、97年の歴史上初めてプロ経験者の野原選手が入部しました。それなのに2大会とも予選を突破できなかったことは野原選手にとっても相当悔しかったはず。だからこその「ホッとした」、自身も貢献できて「よかった」なのでしょう。

6年前、2009年の第80回大会に出場した時は2回戦で敗退したものの、過去には準優勝が2度。1991年の62回大会と1999年の70回大会(どちらも優勝は東芝)でした。勝ち上がっていけば準決勝で東芝と当たるけど、さすがに気が早すぎますね。まずは1勝、と言ったら「任せて!」と頼もしい返事が(笑)。はい、任せました!

藤井選手は京滋奈予選で…

写真は5月のベーブルース杯。藤井選手も副主将としてみんなを引っ張ります。
写真は5月のベーブルース杯。藤井選手も副主将としてみんなを引っ張ります。

近畿地区で都市対抗野球の予選に臨んだ、もと小虎たちの戦いもご紹介します。まず藤井宏政選手(25)が昨年入部した社会人企業チームカナフレックスは、4月18日と19日に行われた滋賀第1次予選に出場。1回戦でOBC高島を9対3で破り、準決勝は甲賀健康医療専門学校に9対1の7回コールド。決勝も9対1で近江八幡に7回コールド勝ちでした。なお滋賀の場合は、このあと近畿地区第2次予選ではなく『京滋奈予選』というのがあります。

5月8日に開催された京滋奈予選では出場3チーム中2チームが勝ち残れるので問題ないだろうと思われたのですが…初戦のミキハウスREDSに3対6で、続く大和高田クラブにも0対3で連敗してしまい、近畿第2次予選には進めませんでした。これはかなりのショックだったでしょうねえ。

穴田選手は近畿第2次予選で…

マツゲン有田球場での練習風景。「ノック来いっ!」と構える穴田選手です。
マツゲン有田球場での練習風景。「ノック来いっ!」と構える穴田選手です。

同じく昨年から穴田真規選手(22)が所属する社会人クラブチーム和歌山箕島球友会は、4月11日と18日の大阪・和歌山第1次予選を突破。1回戦は履正社ベースボールクラブに12対2の7回コールド(穴田選手は4番ファーストで先発出場、押し出しや犠飛やタイムリーで1打数1安打4打点)、準決勝は履正社学園に6対2で勝ち、決勝はNSBベースボールクラブを6対1で下しています。

5月17日からの近畿第2次予選は、1回戦で新日鐵住金広畑に7対0の完封勝ち!穴田選手もタイムリーを放って貢献しました。しかし準々決勝で日本生命に7対8の惜敗。穴田選手は3-0で、しかも3失策だったとか…。敗者復活の第3代表決定1回戦でも、1対11と日本新薬に8回コールド負け。ついで第4代表決定2回戦は、ミキハウスREDSに1対2で延長10回サヨナラ負けを喫し、ここで終了です。

阪口選手は最終日まで戦って…

おしまいに、ことし阪口哲也選手(22)が入ったパナソニック。近畿 第2次予選(舞洲など)からの出場で、いきなり準々決勝となった5月25日のニチダイ戦に7対1で勝ちましたが、同27日の準決勝で大阪ガスに3対5で敗れます。6月1日に京セラドームで行われた敗者復活の第2代表決定 準決勝で日本生命に2対0の完封勝ち。9番セカンドでフル出場した阪口選手は3打数2安打2打点で、彼の2本のタイムリーが試合を決めました!

5月のJABA九州大会で試合後の阪口選手。何故そんなにキョトンとしてるのかな?
5月のJABA九州大会で試合後の阪口選手。何故そんなにキョトンとしてるのかな?

しかし第2代表決定戦でNTT西日本に1対2で、第3代表決定戦は三菱重工神戸・高砂に3対4で、第4代表決定戦は2対6で日本生命に、最後の第5代表決定戦は2対3で日本新薬(タイガース榎田投手の弟・宏樹投手が完投勝利)にと、決定戦で4連敗…。昨年まで4年連続で49回もの出場を誇るパナソニックが、まさかの予選敗退です。

準決勝で敗れた大阪ガス(大阪市)が第1代表で3年連続22回目、そのあと決定戦で当たったNTT西日本(大阪市)が第2代表で2年ぶり26回目、第3代表の三菱重工神戸・高砂(神戸市、高砂市)は2年連続32回目、第4代表の日本生命(大阪市)は13年連続57回目、第5代表の日本新薬(京都市)は2年連続32回めと、ほぼ常連さんですね。この近畿で代表に残るのは大変ですが、カナフレックス、和歌山箕島球友会、そしてリベンジのパナソニックの来年夏を期待しましょう。

その前に10月末から京セラドームで開催の『第41回 社会人野球日本選手権』で、もと小虎たちが集結してくれることを楽しみにしています。昨年は叶わなかったので、ことしこそ!

パナソニックは対象試合で優勝し、既に出場を決めました。三菱重工長崎、カナフレックスは9月に、それぞれ九州と近畿の最終予選で勝ち残ることが条件。また和歌山箕島球友会は、9月に西武プリンスドームで行われる『第40回 全日本クラブ野球選手権大会』を制すれば、自動的に日本選手権出場が決まるわけです。穴田選手はそれを目指して、きょう20日から始まるクラブ選手権の大阪・和歌山第1次予選に臨みます。

※社会人野球で頑張っている、もと小虎たちの最近の記事は、こちらからもご覧いただけます。

<社会人野球の公式戦で実現した、もと阪神チームメイト対決!野原選手vs阪口選手《5/10》>

<もと阪神の藤井宏政選手が中日ファームと対戦!社会人ベーブルース杯《5/2》>

<阪神タイガースから社会人野球へ もと小虎たちが迎えた春>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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