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岩貞、ブランコに1発を浴びるも4勝目。オリックス戦3タテは阻止《8/13 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
今季唯一、ほっともっとフィールド神戸で行われたウエスタンのオリックス-阪神戦。

阪神甲子園球場で開催中の全国高校野球選手権大会は13日の、逆転されて、追いついて、勝ち越して、また追いつかれて…というシーソーゲームなど白熱した戦いが繰り広げられています。そして昨夜は、京セラドーム大阪で行われた1軍の阪神-中日戦がトドメでした。いやーもう息詰まる投手戦に、祈るような気持ちで見ていたのは私だけではないでしょう。

秋山投手が6回まで3安打無死点、大野投手と互角に投げ合う姿は今まで以上に大きく見えました。7回に四球から同点とされ、でも追い越されることなく耐えて投げ切ったのも成長の証。頼もしかったですねえ。直後に迎えた無死満塁のチャンスに打線が勝ち越せず…自身3年ぶりとなる白星は消えたのですが、8回に狩野選手の3ランが出た瞬間はベンチの中で飛び上がって大喜び。ルーキーイヤーと変わらない笑顔でした。

さすが狩野選手、よく投げた秋山投手、もちろん先制弾のゴメス選手も、ダメ押し点を挙げた今成選手も殊勲です。それだけじゃないですね。7回にバントヒットを決めた俊介選手、福原投手と呉投手、4安打のマートン選手など多くの顔が浮かぶ試合。でもやっぱり中谷選手の名前を挙げなくてはなりません。

7番センターで今季2度目の先発出場だった中谷選手。ヒットはなかったものの、6回に大嶋選手の打球をスーパーキャッチした“ダイブ”は最高でした。中村ファーム外野守備走塁コーチなら「あれは3打点の値する守りや!」と絶賛されますね、きっと。なお7回にもエルナンデス選手の打球で左中間へ飛びましたが、これは届かず同点の二塁打に…。きっと悔しがっていると思います。きょう秋山投手とともに一度登録を抹消されましたが、確かな爪痕を残してきた若トラ。夏のこの暑さが続いているうちに再び、あの場所へ戻っていくはずです。

4点取った直後に3ラン…でも逃げ切りました

さて一方、オリックス3連戦に連敗していた阪神ファーム。きのう13日は、前日までのあじさいスタジアム北神戸から、ほっともっとフィールド神戸へ移っての試合でした。先発の岩貞投手が3回まで無失点。4回に4連打などで4点を加え5対0とリードした直後、ブランコ選手の3ランを浴びますが追加点は許さず、9回に1点追加して6対3で勝っています。

この日は試合前から霧雨が降り、途中で上がって今度は晴れ、また曇って少し降り、止んだと思ったら日差しが出るという、めまぐるしく変わるお天気。スタンドのお客様も、お持ちの傘を“雨よけ“にしたり”日よけ”と駆使されていましたね。

《ウエスタン公式戦》8月13日

オリックス-阪神 24回戦 (ほっともっと)

阪神 010 400 001 = 6

オリ 000 300 000 = 3 

◆バッテリー

【阪神】○岩貞(4勝3敗1S)-鶴-小嶋-S石崎(3勝4敗8S) / 小宮山

【オリ】●バリントン(2敗)(3回)-坂寄(1回)-井川(2回)-戸田(1回)-塚原(1回)-大山(2/3回)-柴田(1/3回) / 若月

◆本塁打 ブランコ1号3ラン(岩貞)

◆三塁打 陽川

◆二塁打 ペレス

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中:柴田  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .343

〃打右:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .227

2]一:西田  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .216

〃打:岡崎  (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .304

〃走:一二三 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .171

〃一:黒瀬  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .193

3]指:伊藤隼 (5-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .245

4]左:ペレス (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .321

〃走左:田上 (1-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .276

5]遊:北條  (5-2-0 / 0-0 / 1 / 1) .261

6]二:森越  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .333

7]捕:小宮山 (3-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .303

8]三:陽川  (4-2-2 / 1-0 / 0 / 1) .210

9]右中:横田 (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .220

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)

岩貞 6.2回 122球 (7-6-3 / 3-2 / 2.74)

鶴  0.1回   5球 (0-1-0 / 0-0 / 3.13)

小嶋  9回 17球 (0-0-0 / 0-0 / 1.00)

石崎  9回 10球 (0-1-0 / 0-0 / 3.92)

試合経過

先取点は阪神に入りました。2回、先頭のペレスがショート内野安打で出て1死後に森越の右前打で一、三塁。続く小宮山の中犠飛でペレスが生還しています。4回には北條の中前打と森越の左前打で1死一、二塁として小宮山が左前タイムリー!この時、レフト・チャベスの捕球エラーで1死二、三塁となり、次の陽川が右中間を割る2点タイムリー三塁打!さらに横田の右犠飛で陽川も還って、4連打などで一挙4点を加えました。

1回に2安打、2回は1安打、3回は三者凡退でここまで無失点だった岩貞ですが、4対0とリードをもらった直後の4回裏、先頭の竹原をサード陽川のエラー(打球を弾き、捕りにいって両ひざを地面に着けたままスロー)で出したところから崩れます。続く4番・奥浪にストレートの四球を与え、5番・ブランコに1号ホームラン…。一気に3点を返されてしまいました。1死後に山本の左前打、岩月はショート北條のエラー(併殺、と思ったら握り直したか二塁にも投げられず)などで2死一、三塁とするも、ここは抑えて3失点のまま。

5回はヒットを許したあと併殺打で無失点、6回は三者凡退の岩貞。ここで102球となっていましたが、7回も続投で2死を取ります。しかし吉田雄をセカンド内野安打で出し、連続四球で満塁。ここで降板して、代わった鶴が奥浪を空振り三振!ピンチを切り抜けました。8回は小嶋が三者凡退です。

なお3回以降、オリックスの井川、戸田、塚原に対しヒットは出るものの追加点がなかった打線は9回、大山から横田が左前打(これで先発全員安打まで伊藤隼を残すのみ)、緒方が送って、代打・岡崎が中前打を放ち1死一、三塁。伊藤隼は遊飛に倒れ2死となったあと、田上が中前タイムリー!6対3となりました。

その裏は石崎が登板。代打・鉄平を左飛。明らかにレフトフライだったんですけど、捕球寸前でスタジアムDJ・ケチャップさんが「ファウル!」と。でも普通にキャッチしています。この件はのちほど。続くチャベスは遊ゴロ、これは北條、流れるような守備でした、最後は代打・田中を145キロの直球で空振り三振、試合終了です。

岩貞、4回のHRと7回の四球を猛省

岩貞投手は「何してるんだ…ですよね」と自分への腹立ちをあらわにしながら「1軍ならホームランを打たれたところで代えられていると思います。1軍と同じことやって3ラン食らって。打たれたのはカットボールです。あのカウント(2ボール1ストライク)にしてしまった時点でダメ。ホームランで一気に3点なのに。防ぐとしたら3球以内に追い込むことですね。次にこの反省を生かしていかないと」と反省の言葉が矢継ぎ早に出てきます。

ホームランのあとの追加点は阻止したのですが、7回に満塁のピンチを作って交代となったことは「もうちょっとテンポをあけ、ひと呼吸おいて投げないといけなかった。次に同じ場面になったら、そうやって投げられると思います。あそこは鶴さんが抑えてくれてよかった」と言い、続けて「同じことを繰り返さないようにします!以上です」と締めくくりました。

自分の癖と向き合って対処すること

そんな岩貞投手について「“なくて七癖”と言ってね」という言葉から始まった久保投手コーチの談話です。「4点もらったあとの3失点。1軍なら確実にあそこで交代でしょう。点を取ってもらって、何が何でも抑えるという気迫が感じられないと、すぐに代えられる。4回、下手すると4回途中で代えられたかも。食い止める術(すべ)を、そういう自分の癖を見抜いておかないとね、早く。もちろん我々の仕事ではありますが、自分で対処していう術を」

また、続投して6回を三者凡退に打ち取ってからの7回、四球連発したことを「一番得意なスライダーでストライクが取れないとか…そういうとこに陥っていかないようにしなきゃ。なかなか勝てないのはそこ。7回の踏ん張り、あと1つのアウトやね。7回投げ切ってしまえば、4回の失点の印象は消えたのに。そこに癖がある。偶然じゃないというところで。改善を促していきたい」と、あえて厳しく評した久保コーチ。期待の表れなのです。

この日は盤石の救援陣

そしてリリーフ陣のコメントと言いたいのですが、ほとんど1行ずつで…すみません。ピンチを救った鶴投手は、ナイスピッチング!という声に「あざーす!」とニコニコ。8回1イニングを三者凡退の小嶋投手は「何もないですよ」と苦笑い。復帰後は140キロ出ないと言っていたけど、この日は最速142キロ。「それだけです」と再び苦笑い。いやいや、久保コーチも「戻ってきたね」とうなずいていましたよ。

石崎投手も三者凡退締め。前回登板の11日は延長10回、奥浪選手にサヨナラ2ランを浴びていて、そのリベンジになった?と聞かれ「相手は違いますけどね。前回を含め、いろいろな反省点もあります」と答えています。この日は最速が145キロ。いい意味で力を抜いて投げていたような感じ?「確かに、全力で投げたのは2球くらいですね」。ちなみに11日にホームランを打ったオリックス・奥浪選手は「プロ初!高校までもなかったかも」というサヨナラアーチで、打ったのはスライダーですが「真っすぐ、メッチャ速い!」と言っていました。

野手陣のコメントあれこれ

陽川選手は4回無死一、三塁で放った2点タイムリー三塁打を含む2安打ですが、手放しで喜ぶというふうではありませんでした。これが8月8日の楽天戦(山形)以来4試合ぶりのヒット。“この調子で”と思ったら快音が聞けず、乗っていけそうでいけないというところでしょうか。「そうですね。それは自分でも感じています。真っすぐをファウルしてしまって」。思ったように捉えきれていないのかもしれません。でも真ん中から右方向の打球も多いし、ここから上がっていくのでは?「続けていきたいです!」。お願いします。

2安打2打点の小宮山選手は「久しぶりの試合だったので集中していました」。7回に右前打を放った西田選手は「やばかったです。よかったです」と、“蚊帳の外”にならずに済んでホッとした様子。北條選手はマルチヒットにも「8回は進塁打のサインで打ってヒットになっただけで。バッティングはまあまあですけど、守備が…」と笑顔はありません。エラーは握り直したせい?「はい」とションボリ帰っていきました。

緒方選手は、代打で出た7回は二ゴロに倒れたものの、9回はヒットの横田選手をきっちり初球で送る犠打。その横田選手が結果的に生還して1点を加えたわけです。本人は謙遜しますが、通りかかった八木打撃コーチは「いい仕事だったよ!書いといて」と言っていましたから。本当は自身も生きたかったくらいでしょうね。1軍でも決めて見せますよ。

アナウンス“口撃”にも負けず?

最後は田上選手です。途中出場ながら9回に貴重なタイムリー。ダメ押しになったでしょう。「あれはデカいですね」と言ったところで、スタジアムDJ・ケチャップさんを見つけた田上選手。他の選手も交え、笑いながらツッコミます。ケチャップさんはもう平謝りでした。なんせレフトフライを捕球する寸前で「ファウル」って場内アナウンス。お客様も、我々も、ベンチもビックリです。

そして何より、左に切れそうでも何でもなかったため普通に構えていた田上選手の、遠くで見てもわかる「えっ?」っていうリアクションが格別。すぐ後で「失礼しました!」というコメントが入ったものの、みんなバッチリ聞いていたんですよねえ。阪神ベンチでみんなが大いにウケていたことは言うまでもありません。ケチャップさんから「僕が間違えました。書かないでください~」と頼まれたのですが、田上選手は「いやー逆にリラックスできました!面白かったから」と感謝のコメントがあったので、あえて書かせていただきます。アナウンスが耳に届くほど余裕の打球だった、ということも付け加えて(笑)

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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