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阪神タイガース ファームの2015年を回顧《後期》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
金本監督も鳴尾浜に訪れた11月7日。練習が終わりかけても、まだこんな状態でした。

2015年の終わりに際して、小虎の今シーズンを振り返っています。きのうは2月の安芸キャンプから6月までの出来事をご紹介しました。きょうは7月から11月までの《後期》編です。なお《前期》の記事は、こちらからご覧いただけます。<ファームの2015年を回顧《前期》>

【7月は、あの「ガッシャーン」が…】

◆中谷が甲子園初アーチ

7月3日の中日戦(甲子園)で中谷選手が8回にダメ押しのホームラン。意外にも甲子園で打ったのは初めてだったんですね。またチームは4回、この日先発した中日・山本昌投手から4連打を含む5安打を集中させて4点を奪いました。

◆ペレス1号&陽川サヨナラ打

7月5日の中日戦(甲子園)では、6月に来日した新外国人・ペレス選手が1号ソロ。2対1で迎えた9回裏に中谷選手が同点のタイムリー二塁打、なおも1死一、二塁で陽川選手がサヨナラタイムリーを放ちました。なお先発の岩崎投手は5回、松井雅選手の頭部に死球。危険球により退場となっています。当たった瞬間から救急車が来るまでスタンドのお客様が固唾をのんで見守っていた静けさが忘れられません。松井選手は打撲とムチ打ちという診断結果で、大事に至らなかったことが幸いでした。

◆陽川のファウルが外灯とベンツを…

一番印象に残ったと言われる小虎ファンや記者の方々が多かった出来事です。7月10日のオリックス戦(鳴尾浜)の7回裏、陽川選手が打ったファウルボールが三塁側ベンチとブルペンの間に上がっていきました。陽川選手は自身の後ろ、三塁側によくファウルを飛ばすので気にせず見送ったのですが、一瞬ののち「ガッシャーン」という音がして、ちょうどカメラ席にいたので行ってみると、外灯の1つが粉々に。

それだけではなく、その外灯の下に停めてあったオリックス・小松投手の愛車が被害を受けたのです。試合後にわかったところでは、落ちた大きな破片でリアウインドウがひび割れたとか。その他にキズもついていて、試合後すぐ駆けつけた小松投手はショックを隠せません。陽川選手もお詫びにいったと言っていました。それにしても投げていたのが当の小松投手だったという偶然もあって、皆さんの印象に残ったのでしょう。

ファウルボールでは、数年前にライトの外灯が割れたこと(コーチや選手、スタッフも総出で芝生に落ちた破片を拾うため試合が中断)、そして2年前にオリックス・竹原選手が打った特大ファウルで寮の窓が割れたことに次いで、私にとって3度目の「ガッシャーン」でした。

◆岩崎が今季チーム初完投

危険球退場から1週間後、7月12日のオリックス戦(鳴尾浜)で先発した岩崎投手は1失点完投勝利を挙げました。これが今季チーム初の完投で、しかも無四球。もちろんプロ初完投です。

◆フレッシュ球宴が史上初の中止

7月16日に岡山県の倉敷マスカットスタジアムで予定されていたフレッシュオールスターゲームは、接近中する台風11号の影響で順延が決定。雨はほとんど降らず、夜9時頃から風が強まってきた程度でしたが、電車の運転を早めに切り上げることが決まったための措置です。そしてデーゲーム予定だった翌17日は雨のため朝8時に中止が発表された次第です。順延自体も記憶になかったくらいで、52年の歴史上初めての中止となりました。

地元・倉敷で大応援団が来場するはずだった守屋投手の落胆は言うまでもありません。「先発が横山だからですよ~。アイツめ」と、一緒に出場予定の同期にひと言。そうなんです。横山投手の雨男ぶりを今季の小虎重大ニュースに挙げる方も多かったくらい、本当によく雨を降らせていましたが、まさか台風まで呼んでしまうとは。

◆富田林の暑さはNo.1でした

東大阪に続いて、オリックス戦で富田林にも初ねていったタイガース。暑かった!奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムが過酷さでは一番だと思っていたのですが、それを超えました。途中で呼吸がスムーズにできなくなり医務室のお世話に。そのためリリーフ陣(二神投手、筒井投手)の好投を見られなくて…すみません。

最後に投げた石崎投手が、この日は自己最速の154キロをマークしています。そして翌26日、同じ富田林でのオリックス戦でも最後に投げて自己最速を更新する155キロを出したそうですね。とにかく7月に入ってから150キロ超えが続出で、スタンドを大いに沸かせてくれました。

◆ソフトバンク戦、10年ぶりの6連勝

7月28日のソフトバンク戦(甲子園)で勝ち、このカードは引き分けを挟んで6連勝。6月9日に4連勝したのが4年ぶりで、翌10日の5連勝は6年ぶりのことでした。6連勝となると、2005年4月21日から6月17日(引き分けなし)以来で実に10年ぶり!またこの日で貯金を今季最多の7として、これも2011年8月14日以来4年ぶりのことです。

◆ソフトバンク戦、8年ぶりの3カード連続勝ち越し

7月29日(甲子園)に連勝はストップしたものの、30日(鳴尾浜)も勝って、ソフトバンク戦では8年ぶりとなる3カード連続勝ち越し。本当に小鷹が苦手だったんですねえ。

【8月は全部で18本塁打】

◆5年ぶりの貯金9

8月2日の広島戦(丸亀)に4対3で勝利。これで2010年9月16日以来の貯金9となりました。ただし今季は最多が9のままで終了。なお石崎投手が7試合連続セーブを記録しています。

◆中谷16試合連続安打!翌日に1軍へ

とある天気予報で『きょうの名古屋は、いっさい遠慮のない暑さが続きます』と言っていた8月4日の中日戦(ナゴヤ)は、延長10回で4対4の引き分け。4番を打つ中谷選手が6号ソロを含む2安打で、16試合連続安打をマークしました。翌5日の中日戦で連続試合安打は止まってしまったのですが、6日に一軍昇格!

◆横山、山形でプロ初完封勝利

8月9日、地元の山形で行われたファーム交流試合・楽天戦に先発登板した横山投手が、2安打完封勝利を挙げました。自身プロ初完投、初完封でチームではもちろん初完封です。

◆一二三vs島袋が実現

8月19日のソフトバンク戦(鳴尾浜)で、ついに一二三選手と島袋投手の対決が実現。6月25日のソフトバンク3軍戦では持ち越しとなっていましたが、この日は9回に島袋投手が登板し、1死ランナーなしで打席に入った一二三選手。146キロの真っすぐを中前打しています。

◆ペレス、あっという間に10号

6月に来日したペレス選手は8月27日のオリックス戦(鳴尾浜)で、3回にバリントン投手から2ラン。7月5日の第1号に始まり7月は4本、8月には26日と27日の3発を含む6本、2ヶ月間で10本です。最終的にはチーム最多の14本でした。

◆柴田、人生初の満塁弾を含む5安打

8月28日の広島戦(鳴尾浜)に1番センターでフル出場した柴田選手。左前打、右翼線二塁打、右中間二塁打、左前打と4打席連続安打に続き、8回にはなんとライトへ満塁ホームランを放って5打席で5打数5安打4打点の大当たり!柴田選手は「満塁ホームランも、5打数5安打も人生初」と興奮気味でした。

この試合では緒方選手もが3ランなどで4打点、一二三選手の3安打や原口選手のソロもあって、計11点は今季最多得点です。

【9月、貯金4で公式戦終了】

◆西田、公式戦初のサヨナラ打

1日は雷雨により7回表でノーゲームとなった中日戦(鳴尾浜)。翌2日は3対2のサヨナラ勝ちしました。9回1死三塁で代打の西田選手が中前タイムリー!公式戦ではプロ初のサヨナラ打にも「一二三さんが送られへんかったら僕はなかった」と、前で犠打を決めた一二三選手に感謝のコメント。

◆ナゴヤでの長い試合

9月11日からは今季最後の遠征で中日3連戦(ナゴヤ)。12日は6対3とリードされて迎えた9回にペレス選手の2点タイムリー二塁打と北條選手の3ランで8対6と逆転!しかしその裏に追いつかれて延長戦へ。10回表に江越選手のタイムリー二塁打で勝ち越しましたが、4時間26分の今季最長試合。15年ぶりリーグ最長となった昨年の4時間48分には及ばずです。この3連戦は3時間34分、4時間26分、3時間40分とすべて長い試合だったんですね。

なお13日は7対7の9回裏に松田投手が福田選手に2ランを浴びてサヨナラ負けしています。でも阪神打線は6回に緒方選手が放った中越え二塁打で先発全員安打を達成。6月21日以来で今季4度目の先発全員安打でした。

◆鳴尾浜最終戦、4発で胴上げ阻止

9月19日のソフトバンク戦は鳴尾浜で行われる今季最後の公式戦。2回の森越選手、6回は江越選手とペレス選手が連続で、8回はペレス選手が2打席連続でホームランを放って勝利。昨年6月5日の広島戦で原口選手、黒瀬選手、陽川選手、中谷選手が2006年以来8年ぶりに打っていましたが、それに続く1試合4発です。

◆ソフトバンクが史上初の4連覇

鳴尾浜での胴上げは阻止したものの、翌20日の守山市民球場で負けてソフトバンクの優勝が決定。ウエスタン・リーグ史上初となる4連覇を達成し、胴上げと記念撮影が行われました。こちらの打線はわずか2安打で、ペレス選手のタイムリーのみ。でも滋賀県出身の植田選手が8回、中前打と盗塁で声援に応えています。腰痛から復帰したばかり、間に合ってよかったですね。

◆田面が公式戦で初先発

9月22日のオリックス戦(神戸2)で田面投手が今季初先発。公式戦では初めての先発で、前日に言われたとのこと。自身プロ最長となる4回途中まで投げ、4安打2失点でした。

◆今季最終戦で飛び込んできた訃報

9月23日の今季最終戦は奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムでのオリックス戦。屋根のないところでも耐えられたのは富田林を経験したおかげでしょうか。試合は序盤のリードを守り切って白星で終わったのですが、6回くらいに『阪神タイガースの中村GMが急逝』というニュースを伝え聞き、愕然としました。スタンドもスマートフォンを手にしたお客様はご覧になったのか、ざわざわとした空気が流れます。

試合後、監督やコーチ、スタッフ、選手みんなが驚きを隠せない様子で、こちらも試合内容についての話をしにくかったですね。詳しいことはわからないままでしたが、近しい方の、あまりにも突然の訃報に信じられない思いしかなかったですね。11月19日に甲子園球場で行われたお別れの会は、ファンの方々も参加され懐かしい映像に涙しておられました。ご冥福をお祈りします。これからもタイガースを、選手たちを見守ってください。

◆石崎10セーブでタイトル獲得

ウエスタン全日程を終え、10セーブを挙げたルーキーの石崎投手が最多セーブ。広島の飯田投手、ザガースキー投手と3人で分け合っています。阪神勢の受賞は石崎投手ただ1人でした。

◆予備日のない試合日程

ことしのウエスタン公式戦は、試合日程が大きく変わりました。まず雨で流れた試合をのちに振り替える“予備日”が組まれていないこと。なので最終戦も最初の発表通り、9月23日のオリックス戦になっています。今まで9月は中止分の振り替え試合がほとんどで、だから主催チームの本拠地で最後というパターンなのに、ことしは佐藤薬品スタジアム。珍しいですよね。

それと総試合数も久々に変更されました。ここ5年間は各チーム104試合+イースタンとのファーム交流試合で、多くても110試合前後だったのですが、今季はカード最大33試合に交流試合を足した数で、最多は阪神の137試合。これが予定試合数で、実際は上記のように中止になった試合は流れたままだから、阪神は117試合で終了しています。消化試合数は、ファーム交流試合が公式戦に組み込まれた2011年から既に違っていますので、そこは問題なかったでしょう。

◆1年ぶりに“帰ってきた”哲ちゃん

9月26日、社会人・パナソニックとの交流試合で、昨年まで阪神にいた阪口哲也選手がやってきました。鳴尾浜での最終公式戦でプロ1号ホームランを放ったのが、ちょうど1年前の同じ日。試合は8番セカンドでフル出場して2安打。本当に楽しそうに駆け回って、やっぱり泥んこになっていたのは言うまでもありません。

◆練習試合で一二三がバースデーアーチ

9月29日のオリックスとの練習試合(神戸2)で、6回に代打で出場した一二三選手は、井川投手のチェンジアップを打ってレフトへソロホームラン。試合後に話しかけようとしたら「バースデーアーチ!」と先に言って笑いました。

【戦力外通告、新監督フィーバー】

◆戦力外通告

10月1日には黒瀬選手、2日に加藤投手、19日に玉置投手と田上選手、そして29日に藤原投手が、来季の契約を結ばないと球団から告げられました。黒瀬選手は11月10日の合同トライアウトを受けずに古巣・西武でスコアラーとして再出発。加藤投手は選手兼任コーチとしてルートインBCリーグの福島に入団。玉置投手は社会人・新日鐵住金鹿島に入部。田上選手はまだ決まっていません。藤原投手は現役引退を決め、新たな道へ進むようです。

いろんな方が田上選手の戦力外は驚いた、信じられない、まさか…とおっしゃいました。そして、まだ進路が決まっていないことも予想外だと。先日の話では野球以外のことも考えると言っていたのですが、また様子を聞けたらお知らせします。どの選手にも思い入れはあり、年明けにその姿がみられないことは寂しいですけど、感謝の言葉とともにエールを送りたいと思います。

◆秋季キャンプの大騒ぎ

これも重大ニュースでしょう。金本監督、掛布ファーム監督が発表されて迎えた秋季キャンプ。安芸だけでなく、鳴尾浜も大騒ぎでした。背番号31番を見たい方もおられたし、その掛布監督がサイン会を実施したこともあって連日、多くの方がスタンドを埋めました。入りきれず、試合のない日に異例の“入場制限”まで。ありえませんよねえ。

金本監督も鳴尾浜を訪れ、新監督揃い踏みとなった11月7日は入場待ちの列が延々と続いて、90人近くの方が並ばれたとか。暑さや寒さがなくて何よりでした。この騒ぎ、シーズン中には収まっているでしょうか…。これまでも土日の試合で入場制限は結構あったので、それが心配ですね。安芸キャンプもにぎわいそうです。大勢の方に見ていただくのは選手にとって励みになるもの。ぜひ試合や練習で“選手を見に”いらしてください。

◆2年ぶりのウインターリーグ

11月28日から12月20日まで、台湾の『アジア・ウインター・ベースボール・リーグ』が2年ぶりに開催され、阪神からは岩貞投手、田面投手、陽川選手、横田選手が参加しました。最後に追いつかれてアマチュア台湾代表チームと同率首位でリーグ戦を終え、その台湾アマに決定戦で敗れ優勝は逃しています。それぞれに収穫を得て帰国した4人が、来年どんな活躍をするかに期待しましょう。

※番外編・もと小虎

社会人野球で頑張っている、もと小虎たちの今季は、9月に穴田真規選手が所属する和歌山箕島球友会が『全日本クラブ野球選手権大会』で2年ぶりの日本一になりました。その穴田選手と、三菱重工長崎の野原将志選手、カナフレックスの藤井宏政選手、パナソニックの阪口哲也選手が、10月末から行われた『社会人野球日本選手権大会』に揃って出場。残念ながら仲良く初戦敗退という結果でしたが、来年もまずは本大会で集合してほしいですね。

1年間ご愛読いただき、ありがとうございました。これからも小虎と、もと小虎の話題をたくさんご紹介できるよう頑張って取材してまいります。2016年もどうぞよろしくお願いします。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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