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支配下2年目「甘えは許されない」と、それ以上を誓う阪神・島本浩也投手

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
沖縄キャンプに向け、鳴尾浜で自主トレ中の島本投手。また少し大きくなりました。

2011年に育成選手として阪神タイガースに入団した島本浩也投手(22)。同期には榎田投手や荒木選手と、同い年の一二三選手、中谷選手、岩本投手、既に退団した育成の阪口選手と穴田選手がいます。2014年のオフに、高校出の育成選手として、また育成で入った投手として球団初の支配下選手となり、昨年は2ケタの番号を背負って開幕1軍メンバーにも名を連ねました。

1軍には開幕から5月10日まで、6月14日から7月3日まで、そして9月11日からシーズン終了までいて、18試合に投げています。すべてリリーフ登板で勝ち負けはなし。ホールドポイントが1つという結果です。島本投手には、支配下1年目を振り返り、ことしに賭ける意気込みを聞いてみました。まずは昨年の成績からご覧ください。

2015年の登板成績

◆1軍 公式戦

18試合 (当初0、完了6)

0勝 0敗 0S 1ホールド

18回1/3 被安打31 (本塁打6)

三振12 四球8 死球1 

失点19(自責18) 防御率 8.84

◆1軍 非公式戦(練習試合、オープン戦)

12試合(当初0、完了6)

8回2/3 被安打3(本塁打0)

三振4 四球3

失点0(自責0) 防御率 0.00

昨年の秋、江越選手(右)とジョギングをする島本投手。この2人も同い年ですね。
昨年の秋、江越選手(右)とジョギングをする島本投手。この2人も同い年ですね。

◆ファーム 公式戦

20試合(当初6、完了3)

3勝 2敗 0S

43回2/3 被安打51 (本塁打4)

三振46 四球11 死球1

失点26(自責24) 防御率 4.95

◆フェニックス・リーグ (第3クール~)

4試合(当初1、完了2)

7回 被安打6(本塁打0)

三振5 四球0 死球0

失点2(自責2) 防御率2.57

1軍は度胸と経験がものを言う

まず昨年、支配下選手として過ごした初めてのシーズンを振り返り「いい経験ができました。いろんな経験ができたと思います」という島本投手。「まず沖縄キャンプに行くことを目標にしていて、クリアできた。オープン戦で投げて開幕1軍というのも達成できてよかったです。シーズンに入って10試合くらいは抑えていたかな。7試合まで1失点くらいだったと思う。そこまではよかった。できすぎというくらい順調でしたが、打たれ出してからダメだったですねえ」と、ここは苦い表情です。

鳴尾浜でキャッチボール。相手の高宮投手が逸らしたのか、かなり笑っています。
鳴尾浜でキャッチボール。相手の高宮投手が逸らしたのか、かなり笑っています。

「1軍を経験してからファームで投げる時、いい意味で見下ろしていけると思うんですよ。だから自信はつきました。その前はファームの試合でもヒヤヒヤしてたから(笑)」。それまでは逆に“見下ろされて”打たれたこともありましたね。「ことしは1軍で、打たれたけど抑えたりもして自信ついた。ファームでは自分の思ったピッチングができやすい。自信を持って、いつも通りのピッチングが1軍でもできれば、もっと抑えられる。結局は度胸と経験ですね」

いい経験ができたとわかった上で「去年は中盤が全然でした。投げては打たれてしまう感じで。でも最後(クライマックス)まで、いさせてもらったのはありがたかった。そう思うと、もったいないなあと思います。あれだけチャンスがあったのに。ことし同じことやってたらアウトですね」と冷静に自己分析もしています。

印象に残った2試合

印象に残っている試合は?「まず、初ホールドの中日戦です」。あら、1軍デビューとなった4月2日のヤクルト戦(神宮)ではなく?6回裏に登板し、いきなり2イニングを投げて1安打無失点でしたよ。「違いますね。ナゴヤドームで、1点リードの6回か7回に投げた試合が一番、印象に残っています。初めて1点リードという場面で使ってもらいました」

2015年4月16日の中日6回戦(ナゴヤドーム)。チームが勝ち越した直後の6回裏に登板。8番・武山を145キロの真っすぐで遊ゴロ、9番・代打の松井佑を右飛、1番・大島はスラーだ―で遊ゴロの三者凡退。最速は147キロ。

1点リードという緊迫した状況での起用に「せっかくもらったチャンスなんで、その前に試合まで抑えていたし、点差を気にせず行った」と言いますが、プレッシャーもかなりのものだったでしょう。「いえ、プレッシャーはなくて、チャンスやと思った。そこで三者凡退に抑えて、すごく自信になりました」。この強心臓こそが島本投手の真骨頂ですからね。

昨年10月、CSを終えて合流したフェニックスリーグでの写真です。
昨年10月、CSを終えて合流したフェニックスリーグでの写真です。

もう1つ、印象に残っているのは初ホールドより前のこと「甲子園のDeNA戦で、梶谷さんと筒香さんから連続三振を取った時です。前の日、ロペスにホームランを打たれて初失点していたので。この次の日も投げて、初めての3連投でした」。その3連投を振り返りましょう。

2015年4月7日のDeNA1回戦(甲子園)。6対3とDeNAリードの7回に3人目で登板。3番・梶谷は中飛、4番・筒香は空振り三振で2死としながら、5番・ロペスにスライダーをレフトへ打たれホームラン。6番・バルディリスに左前打されるも7番・飛雄馬は遊ゴロで終了。5人に対して2安打1失点。

同4月8日の2回戦、4対1と3点ビハインドの7回に3人目として登板。3番・梶谷と4番・筒香から、ともにスライダーで空振り三振を奪い、9球で2死。ロペスを迎えるところで石崎と交代。

同4月9日の3回戦、2点を先制された直後の8回裏に1点を返して1点差と迫った9回、3人目で登板。1番・石川に中前打され2番・松本啓の犠打、3番・梶谷はスライダーで右飛、4番・筒香を低めの真っすぐで左飛に打ち取って無失点。その裏にサヨナラ勝ちとはいかず、このカード3連敗。

2戦目を一番よく覚えているのは、3番と4番の左2人から連続三振を奪っただけでなく、その次の左打者・ロペス選手のところで交代してしまったこともあるのでしょう。前日にホームランを打たれていたし。だから「次はロペスも」と固く誓っています。

ことしの夢は先発とCS登板

先発については、昨シーズンもチャンスがありそうだった?「はい。具体的にいつというのではないけど『先発させようと思っている』と言われました。いつだったかな。山本さんが投げた、あの頃ですかね。その前、僕はファームの広島遠征中に急きょ呼ばれて上がったんですけど、その時に中西コーチから『中継ぎで入るけど、先発させたいから中で結果を出しとけ』と言われて」

6月12日、13日がマツダスタジアムで、14日が三原でのウエスタン・広島3連戦でした。島本投手は14日に先発予定で12日に広島入り。ところが13日の1軍・オリックス戦で横山投手が4回持たず5失点、小嶋投手が2回7失点と大荒れで翌日の抹消が決定したのです。島本投手は歳内投手とともに13日夜に帰阪し、14日に昇格。14日の広島戦は山本投手が先発しています。

ちなみに山本投手は、この試合も含めて好投を続け、7月4日に昇格。同日のDeNA戦(横浜)でプロ初先発、初勝利を挙げたことは記憶に新しいですね。残念ながら島本投手は前日の3日に筒井投手と入れ替わって抹消され、昨年は先発チャンスが巡って来なかったっものの、その可能性はとても大きかったと言えるでしょう。

高校時代は毎日、遠投をしていた島本投手。それが肩を作ってくれたのかも。
高校時代は毎日、遠投をしていた島本投手。それが肩を作ってくれたのかも。

そこから約2ヶ月、9月11日に再昇格し、そのまま1軍に帯同。クライマックスシリーズもベンチ入りしています。「投げていませんけどね。1年前はまだ育成で、あの時は考えられなかった。でも…背番号2ケタならチャンスがあるのに、とは思っていた」。それそれ、その心意気は周りにも伝わったはず。「投げたかったです。投げたいです!いずれはそこで投げていかないと」。公式戦とはまた違った空気でしょうね。「マウンドに立ったら緊張しないと思います。そこまでは大変やけど(笑)、でもビビりはしないので」

環境が大きく変化した、島本投手にとっての“1年目”。「いいことも悪いことも、いっぱい経験できて、ことしにつながると思えた」。噛みしめるような言葉でした。

高宮さんみたいな場所で投げたい

今季については「中継ぎか先発どっちかはわかりませんが、ことしはまず中継ぎでしっかり結果を出してアピール。そこで信頼してもらえるようになってから先発のチャンスをもらえたらというイメージを持っています」と言ったあと「といっても、何でも、どこでも投げたい!」と笑いました。そうですね、ああ見えて(失礼)スタミナはかなりありますから。

「去年は支配下1年目で気持ち的にも、なんていうか“イケイケ”という感じで。打たれてもいいからってくらい開き直っていましたけど、ことしはしっかり結果を残していかないと。支配下2年目、入って6年目ですし、本当に結果を求められると思います。甘えられない。中継ぎのポジションでは高宮さんとか、上の人ばかり。去年の高宮さんみたいな場所で投げられたら。チームとしても、左は僕と言ってもらえる、早くそういう場所にいきたいです」

22日、島本投手とのキャッチボール後、初ブルペンで立ち投げをした高宮投手。
22日、島本投手とのキャッチボール後、初ブルペンで立ち投げをした高宮投手。

高宮投手にも聞いてみました。ことしも1月7日から18日まで一緒に京都市内で自主トレをしていたんですが、去年と違うなと感じたところはありますか?「去年は、沖縄キャンプに行かなあかん!という焦りがすごく見えたんですよ。競走馬でいうところの“かかっている”感じ」。よくわかる例えをしてもらいました。要するに、意気込みが空回りしていたということでしょう。

「ことしは、それがない」。つまりキャンプや開幕の、その先を見ていると?「そうですね。「僕らも同じです。もちろんキャンプとか、開幕とか目標にしていますが、1年通して働けないといけないので。その点、けっこう1軍にも長くいたし、シーズンのことがわかったんじゃないですか」

なるほど。ところで、高宮投手のように投げたいという島本投手が、その場所を狙ってくるかもと言ったら「いやいや、負けませんよ!」と軽く一蹴されました。そりゃそうです。後輩に譲るつもりはありませんよね。高宮投手も3年ぶりの1軍キャンプスタートとなっています。沖縄でまた島本投手をビシバシと可愛がってあげてください。

「また体重が増えました!」

島本投手も「沖縄キャンプに選ばれるように。って、選ばれんかったら話にならん」と言っていたんですが、2年連続で沖縄へ行くことになりました。「ガンガン、アピールしてきます。キャンプでも一番最初に投げられるくらい。肩もヒジも体も、まったく問題ないです!」と意気込みを語ってくれたあと「あ、また体重増えたんですよ」と嬉しそうな声。

島本投手の2016年版ニューグラブ。ことしは全部、新しくしたそうです。
島本投手の2016年版ニューグラブ。ことしは全部、新しくしたそうです。

ほほ~どれくらい?「72キロから、75.5キロ」。けっこう増えましたねえ。「はい。ガッツリ食べて、プロテイン飲んで、ウエートトレーニングして」。素晴らしい!沖縄でもそのルーティンで頑張ってきてくださいね。紅白戦、練習試合、オープン戦、1軍開幕と昨年のように、それ以上に躍動するであろう島本投手に期待がふくらみます。

※昨年の島本投手関連の記事はこちらです。

<日ハム・佑ちゃんから勝ち越し点!小虎も借金完済《6/7 阪神ファーム》>

<島本投手が今季初先発!カープ打線をシャットアウトした阪神ファーム《5/16》>

<開幕1軍メンバー発表 育成から飛躍の阪神・島本投手が夢舞台へ!>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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