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“遅れてきた”ルーキー ドラフト3位・竹安大知投手のプロ第一歩《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
穏やかに微笑む竹安投手。でもマウンドに上がると一転、無表情に徹します。

社会人の熊本ゴールデンラークス(ことしは『鮮ど市場ゴールデンラークス』に名称変更)から、ドラフト3位で阪神タイガースに入団した竹安大知投手(21)のルーキーイヤーは、ゆっくり、じっくりスタートとなりました。それは2014年12月に手術を受けた右ひじの状態を考慮してのこと。チームで唯一、まだ実戦出場はありませんが、その時はじわじわと近づいています。

8ヶ月ぶりだった打者への投球

先週末、本隊が淡路でソフトバンクと対戦していた22日、竹安投手は鳴尾浜の残留練習でフリーバッティングに登板しました。プロ入り後、初めて打者に向かっての投球を披露したわけです。この時は鶴岡選手や、バント練習の青柳投手と望月投手に計49球を投じました。登板後は「今までブルペンだったので、きょうは打者相手で目標があり、投げやすかった。課題は腕の振り。変化球の時に振りが緩んでしまうので、そこを意識したい」と竹安投手。

虎風荘の植え込みに、気づけばアジサイの花が咲いていました。
虎風荘の植え込みに、気づけばアジサイの花が咲いていました。
中にはもう、ほんのりと色づいている花びらもあります。
中にはもう、ほんのりと色づいている花びらもあります。
グラウンドの芝も青々として、目にまぶしい季節ですね。
グラウンドの芝も青々として、目にまぶしい季節ですね。

きのう26日、鳴尾浜で少し話ができました。「バッターに向かって投げたのは8ヶ月ぶりですね」。手術から9ヶ月経った昨年9月、社会人日本選手権の九州地区2次予選で1イニング投げて以来のこと。感覚はどうでしたか?「思った以上に、ある程度は投げられたと思います。真っすぐも変化球も投げたし、セットポジションやクイックもやれました」。なるほど。そのあたりもしっかり確認したわけですね。

近いうちに、もう一度フリーバッティングで登板するようで「この前は、どちらかというとストライクをどんどん取りにいった感じなので、次はもうちょっとコースを狙って投げたいです。変化球で腕が少し緩んだから、そこもしっかりと。あとは真っすぐで空振りやファウルを取れるように」とテーマを挙げました。フリーバッティングといえども?「はい。フリーバッティングでも」。ですよね(笑)。それが終わると次はシートバッティングで投げて、いよいよゲーム登板が見えてきます。

「もうケガをするわけにはいかない」

同期入団の選手たちは、野手3人がみんな1軍に登録され、高山選手と板山選手は試合に出てヒットも打ちました。また投手陣は青柳投手が1軍のオープン戦で投げ、望月投手はファームの公式戦登板と交流試合で先発も経験。そういうのを目の当たりにして焦りというか、寂しさというものはあったでしょう?「そうですね。でも最初からわかっていたことなので。一番はもうケガをしないということ。それだけは絶対にあってはいけないので。思ったより少し遅かったけど、許容範囲内です」とニッコリ。

ピッチングの際は、こんなふうにあえて無表情を心がけているという竹安投手。
ピッチングの際は、こんなふうにあえて無表情を心がけているという竹安投手。

焦るあまり、またケガをしてしまっては意味がないと。再発は何より怖かった?「はい。今度はもう待ってもらえるかどうか、わからないですからね」。なるほど。「でも…思ったより時間はかかりました」と再度言って苦笑いの竹安投手。大丈夫!巻き返すには十分ですよ。遅れてきたルーキーがヒーローになる、そんな筋書もありでしょう。

キャンプ以降の経過を聞いてみたところ「中2日くらいでピッチングは続けていました。4月に1~2週間ほど投げなかった時期があったけど、他はずっと同じペースでやっていた」と言います。投げなかったのは?「なかなか調子の上がらない時期があって、少し落としてからまた上げようと」。なるほど、ダイエットでいう停滞期みたいな?「そう、そんな感じです!」

ただ、そんな時期でも焦りがなかったのは「手術して1年の間で、ある程度のことはわかっていたから」だそうです。自分の気持ちをコントロールする術も、ですね。ようやく先が見えてきました。「今まで、対バッターじゃなくてブルペンでのピッチングだった。それがバッターに投げられたのは、大きな一歩だと思います」

熊本の元チームメイトたちは

そんな竹安投手の初登板を、昨年まで一緒に汗を流してきた『鮮ど市場ゴールデンラークス』の皆さんも心待ちにしています。先月の熊本地震で、ちょうどJABA岡山大会に出場中だったチームは途中棄権を余儀なくされ、地元に戻ってボランティア活動や会社の業務に専念していたそうです。今月7日開幕予定だったJABA九州大会は8月に延期、都市対抗の予選も少し遅らせての開催となりました。

2月のキャンプ、安芸のブルペンで投げているところです。
2月のキャンプ、安芸のブルペンで投げているところです。

チームとしての全体練習は今月9日に再開したばかりで、まだ昼間は仕事やボランティアがあるため夕方からの練習です。14日に行われた中九州1次予選を突破し、次は竹安投手が「28日からですよ!」と教えてくれた九州地区2次予選。鮮ど市場ゴールデンラークスは29日が初戦で、新日鐵住金大分とホンダ熊本の勝者と対戦します。

もとチームメイトのみんなとは、よく連絡を取っているとのこと。「練習を再開して2週間くらいしか経ってないけど、頑張ってほしいですね!」。東京ドームの都市対抗はシーズン中で難しいかもしれませんが、京セラドームの日本選手権は行けますよ。「はい、行きたいですね。応援します!」。ゴールデンラークスの皆さんも竹安投手が甲子園で投げるのを、きっと楽しみにされているでしょう。お互いの活躍が何よりの励みです。

「そろそろ小豆畑いきます!」

続いて、小豆畑選手とも久しぶりに会えたので話をご紹介します。4月28日の交流試合・関メディベースボール学院戦(鳴尾浜)の1回、三盗を阻止しようと送球した右手が打者の動かしたバットに当たり負傷。右手第5中手骨の骨折と診断されました。きのう26日にはもうテーピングのみで「ちょうど今週の月曜日に固定具が取れたとこ。思ったより早かったです!」とニコニコ嬉しそう。

バットには勝てないですよねえ。痛かったでしょう?「いや~もう、よく覚えてなくて。でも何とか三塁には投げて、手を見たら…こんな腫れてた。ああ、これは折れてるなと思いました」。そうなんですね。「まだ出られるかなと思ったけど、こーんなに腫れ上がってたんで」って、小豆畑くん。最初の“こんな”はソフトボールくらいというジェスチャーだったのに、次の“こーんなに”はバスケットボールくらいの大きさになっていましたよ(笑)。

でも本当に順調な回復ぶりで何よりです。「きょうは遠投を50メートルの距離でやりました。走るのはずっと前からだし、ウエイトもやっていて、ボール投げもブルペンに入っています。いや~早く守屋投手の球を受けたいですねえ!」。お分かりだと思いますが、最後の言葉は通りかかった守屋投手に向けたものです。

骨折から順調に回復している小豆畑選手。いい笑顔です。
骨折から順調に回復している小豆畑選手。いい笑顔です。

打撃練習は今、まだティーバッティングのみ。「ずっと固定していたので、折れた部分がというより手首が固まっている状態だから、動かすとまだ痛いですね。バッティングの衝撃に、どれだけ耐えられるかというところ。ティーでも少し痛い」という小豆畑選手。そこは無理せずに、しっかり打てるようになってからですね。

「でもほんと、思ったより早くここまで来られました。この3週間、土屋さんはじめトレーナーの方々が一緒にやってくれたおかげです」と感謝の言葉を述べました。「その間、体重が増え、筋肉量が増え、体脂肪が減るっていうね」。おお~いいこともあった?「はい。そろそろ小豆畑いきます!ゆっくりしている場合じゃない」。現在、ファームに小豆畑選手を含め6人の捕手がいるタイガース。まず、この競争を勝ち抜いていかなくてはなりません。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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