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BCリーグ・福井戦 伊藤隼太が“意地”のタイムリーで完全復帰へGO!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
富山、福井と遠征した伊藤隼選手。29日は完封を阻止する二塁打を放っています。

ルートインBCリーグとの交流試合で北陸に遠征していた阪神ファーム。28日に富山県高岡市で富山GRNサンダーバースと、29日は福井県福井市で福井ミラクルエレファンツと戦いました。福井とは17日にも鳴尾浜で対戦していて17対2で圧勝。この時は練習試合だったけれど、今回はBCリーグにとって公式戦の1つです。

さて、その結果は… 先発した3年目右腕・藤岡投手に前半はピシャリと抑え込まれ、何とか6回に2点を取ったものの結局は4安打止まり。こちらの投手陣は9安打に加え、(本人たちは何も言っていませんが) 厳しいストライクゾーンに苦しんで計8四球で8失点。鳴尾浜の借りをキッチリと返された格好ですね。

福井の先発・藤岡投手は5回まで1安打無失点。
福井の先発・藤岡投手は5回まで1安打無失点。

この勝利により、2位の福井は15勝11敗1分けとなって、29日の信濃戦に敗れた1位の石川と同率首位に浮上しました。前期を制するのは、一二三選手が派遣されている石川か、昨シーズン前期優勝の福井か。もう少なくなってきた残り試合に注目してください。

では、お待たせしました。29日の試合結果をご紹介します。

《交流試合》5月29日

福井- 阪神 (福井フェニスタ)

阪神 000 002 000 = 2

福井 012 002 30X = 8

◆バッテリー

【阪神】ドリス-歳内-岩本-山本-二神 / 坂本

【福井】藤岡(7回)-佐々木(1回)-戸田(1回) / 片山

◆三塁打 福井:浜崎

◆二塁打 阪神:伊藤隼、福井:大松、甲川、片山

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]左:伊藤隼 (4-2-2 / 0-0 / 0 / 0)

2]指:柴田  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃打指:森越 (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

3]右:江越  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃右:横田  (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

4]三:陽川  (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃三:荒木  (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)

5]一:中谷  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

6]中:緒方  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

7]二:西田  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 1)

8]捕:坂本  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

9]遊:植田  (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

ドリ  1回 10球 (0-1-0 / 0-0) 153

歳内  4回 77球 (5-2-2 / 3-3) 144

岩本 1.1回 45球 (2-1-4 / 5-5) 140

山本 0.2回 25球 (1-1-2 / 0-0) 139

二神  1回 19球 (1-2-0 / 0-0) 145

試合経過

1イニングを3人でピシャリ。10球投げて帰ったドリス投手。
1イニングを3人でピシャリ。10球投げて帰ったドリス投手。
ついで歳内投手。また体が大きくなったような。気のせいですかね?
ついで歳内投手。また体が大きくなったような。気のせいですかね?

まず“先発”・ドリスは1回限定の登板で、二ゴロ、空振り三振、遊ゴロの三者凡退。投げ終えたあと、みんなと握手をして一足先に帰阪しました。ついで、もともとはこの日が先発予定だった歳内が登板。先頭の4番・大松に左前打され、続く浜崎の右中間三塁打であっという間に先取点を与えます。

この回の残りは3人で片づけたものの、3回1死から1番・森に中前打と盗塁、2死後の四球で一、三塁となり、大松に左中間二塁打を許して2人を還しました。3点を失った歳内ですが、4回は三者凡退、5回もヒットや四球で走者を出しながら無失点と、本来の調子に戻ったようですね。

6回に右中間二塁打を放った伊藤隼選手。
6回に右中間二塁打を放った伊藤隼選手。
生還した西田選手と植田選手を迎える掛布監督。
生還した西田選手と植田選手を迎える掛布監督。

打線は藤岡に対し、1回に先頭・伊藤隼が初球を右前打しただけ、それも柴田の遊ゴロ併殺打と江越の遊飛により3人で終了。2回から5回までは見事に三者凡退で、つまり完璧に抑えられます。ピシャリと。ようやく6回、制球が怪しくなってきた藤岡から西田と植田が四球を選んで1死一、二塁とし、伊藤隼が9球目を打って右中間へのタイムリー二塁打!2人を還しました。

これで3対2と迫った阪神。しかし、その裏の岩本が同じように2四球などで2死一、二塁として、9番の代打・甲川に左越え二塁打を浴び2失点。7回も1死から四球、ヒット、四球で満塁となり、岩本は降板します。ここで大きな声援と拍手で迎えられた福井県出身の山本が登板。その代わりっぱな、7番・片山に中越えの2点タイムリー二塁打…。

続いて6回からは岩本投手。残した走者も還ってしまい5失点…。
続いて6回からは岩本投手。残した走者も還ってしまい5失点…。
最後は二神投手が8回を0点に抑えています。
最後は二神投手が8回を0点に抑えています。

さらに2死後、連続四球を与えてしまい、押し出しでもう1点。そのあと、2番・高柳を空振り三振に仕留めて終了です。この回9人の攻撃を受けて3点を失っています。8回は二神が1安打2奪三振などで無失点でした。

打線は2点を返したあと、7回に先頭の荒木が左前打するも後続を断たれ、8回は福井・2人目の佐々木の前に三者凡退。9回はオリックスから派遣中の戸田に対し、横田の中前打と荒木の四球、バッテリーエラー(捕逸と思われますが、BCLの記録は暴投)があって1死二、三塁とチャンスを作ったものの得点なし。8対2のまま試合終了です。

久々に4イニングを投げた歳内

歳内投手は試合後、もともと先発を言われていたため調整が難しかったのではないかとの問いに「ちょっと肩の作り方が難しかったというのはあります。でも、そこはできていかないといけない」と答えました。4イニングを投げ「久しぶりの長いイニングで、最初の2回(2回と3回)は、どこかでセーブしていたところがあった。あとの2回(4回と5回)はいつも通りにいけた」と振り返っています。

試合前練習での歳内投手。29日は2回からの4イニングを投げました。
試合前練習での歳内投手。29日は2回からの4イニングを投げました。

また「これから先発か中継ぎ起用かわからないけど、4回と5回のような感じを出していければ。先発に合わせてやっていけば、調整は大丈夫だと思う」とのことです。球自体はどうだった?「抑えていた部分があったから…。慎重になりすぎた。追い込んでからスリーボールになったりしたので、次はいいテンポで投げられるようにしたい」

なお高橋投手コーチによれば、歳内投手の先発は「長いイニングを投げさせようということ」だそうで、先発転向を踏まえてという意味ではないみたいです。そういえば歳内投手は昨年4月12日、おなじフェニックススタジアムで福井戦に先発して5回1安打無失点でした。そのあと投げたトラヴィス投手、伊藤和投手、山本投手で完封リレーだったんですよね。次はその山本投手の話。

地元で登板の山本、次は1軍での姿を!

山本投手は、代わってすぐの2点タイムリー二塁打を振り返り「インコースの真っすぐです。(野手が)前に来ていたので、低く投げられればよかったのに高くなった」と反省。このところ好投が続いていて、本人も「きょうは良くなかったけど…今のところファームでいい結果が出ているので継続して、1軍を目指してしっかりやっていきます」と決意表明しました。

山本投手は7回1死満塁という場面でのリリーフ登板でした。
山本投手は7回1死満塁という場面でのリリーフ登板でした。

昨年4月に“初凱旋”した際は、ご家族と先輩や後輩に友人、地元の知り合いなど合わせて約60人という大応援団が訪れた山本投手。8回からの2イニングを投げ無失点だったものの4安打されて、お父さんは「私が見ていたら打たれる」とぼやいておられました。そして今回は、ため息が…。それにしても連続四球で押し出しなんて、山本投手には珍しいことですね。

「自分にとってのベストボールだった」

ルートインBCリーグは、今季から試合時間短縮のため『ボール1個分外へ、かつボール1個分ひざ下へ』とストライクゾーンが広くなっています。効果は抜群で3時間以内の試合が増えたとか。ただし今回の阪神戦は28日が3時間7分、29日は3時間34分でした。特に29日は計12四球(阪神が8、福井が4)とかなり多め。客観的に見ても結構きびしかったように思います。隣でご覧になっていたBCリーグの方からも「あれはストライクだなあ」という言葉が何度かありました。

福井県武生市(現・越前市)出身の山本投手。29日も大勢の方が観戦されました。
福井県武生市(現・越前市)出身の山本投手。29日も大勢の方が観戦されました。

しかし山本投手は「それは関係ないです。言い訳をしたくないし、狙ったところには投げられたので。逆にいえば自分のベストボールより、審判やバッターのことを加味して投げればいいことですから」とキッパリ。でも「ベストボールはベストボールでした」と言います。確かに、その日の球審のクセなどを把握して投げると話していたピッチャーがいた気がしますね。

そして「福井に来てユニホーム姿を見せられるのはいいんですけど、1軍のマウンドで投げるところをテレビで応援してもらえる選手でありたい」と山本投手。お菓子やおにぎりなど、抱えきれないほどの差し入れを持って来られたご両親も、それが一番の楽しみでしょう。ま、根っからの阪神ファンであるお父さんは、テレビでなく現地観戦だと思いますけど。

NPBの意地を見せた伊藤隼

次は伊藤隼選手です。チーム4安打のうち2安打、しかも唯一の得点となる2点タイムリー二塁打を、6回1死一、二塁で放ちました。「真っすぐです。あの回はフォアボールも出ていたし、変化球も増えてきたけど、対応して仕留められたと思う」と話しています。藤岡投手に苦戦していた中、完封阻止のタイムリー。結果は完敗で「ああいう展開にはなりましたけど、やっぱりプロ(NPB)の意地があるので」と伊藤隼選手。

右中間を破る二塁打を放った伊藤隼選手!左は一塁から激走中の…
右中間を破る二塁打を放った伊藤隼選手!左は一塁から激走中の…
植田選手も余裕で生還しました。
植田選手も余裕で生還しました。

掛布監督は「いい形で打てている。キャンプ前にケガ(右肩関節唇損傷)があったけど、気持ちを切らずにやってきた。これからも今の形を続けられるようにしてほしい」と話しています。そして「まだトレーナー預かりの状態だったんだけど、この2試合を見たらいけると思う。GOサインだね!」という言葉でした。きょう31日のウエスタン・広島戦(鳴尾浜)から“完全復帰”でしょう。外野手争いがまた激化しますね。

途中出場だった横田選手は、9回に右前打。「追い込まれてからバッティングできたので、よかったです。でもそこまでに仕留めないと」とコメントしました。植田選手は3回、藤岡投手に対してファウルで粘ったものの8球目で見逃し三振を喫し「打てないっす…。フォークばっかりでしたよ。真っすぐは1球だけ」と悔しそう。でも6回は四球を選んで、伊藤隼選手の二塁打で一塁から生還。いい仕事です。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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