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社会人日本選手権地区最終予選 近畿では藤井、阪口の虎OBが代表決定戦で対決!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
気合いの入った2人!カナフレックス・藤井選手(左)とパナソニック・阪口選手。

7月の都市対抗野球、9月の全日本クラブ野球選手権が終わって、現在は『第42回 社会人野球日本選手権大会』(10月30日~ 京セラドーム大阪)を目指し、各地区で最終予選が行われています。昨年は、もと阪神タイガースの若竹投手、野原選手、藤井選手、阪口選手、穴田選手が京セラドームに集結しました。若竹投手以外は1回戦で負けてしまったけど、ことしも揃ってほしい!

…と願っていたのですが、残念ながら穴田真規選手の和歌山箕島球友会は、昨年優勝して出場を決めたクラブ選手権大会の予選で敗退してしまい、ことしは日本選手権に出られません。また若竹竜士投手の三菱重工神戸・高砂は近畿地区最終予選の敗者復活2回戦で負けて終了です。

近畿以外では、九州地区最終予選が7日から始まりました。野原将志選手の三菱重工長崎は、きょう8日に沖縄電力と対戦し、ご覧のスコアで圧勝!つい先ほど試合が終わっています。

9月8日 2回戦第1試合 (山鹿市民)

沖縄電力-三菱重工長崎

沖電 000 010 0 =1

三菱 222 301 4x=14

※7回コールド

三菱重工長崎は、あと2勝で第1代表決定です。九州は15チームが参加して代表2チームという熾烈な戦い。近畿は10チームのうち4チームですからね。野原選手はいつも「近畿地区がうらやましい」と言っています。

そして19日開幕の関東地区最終予選で18チーム中5つの枠を争うのは、ことし新日鐵住金鹿島に入った玉置隆投手。2つ勝てば代表決定の関東ゆえ敗者復活戦はないものの、強豪チームが分散しているのでチャンスは大きいかも。玉置隊長、京セラで待っていますよ!

1点を争ったパナvsカナ

藤井選手は第2打席で中前打。
藤井選手は第2打席で中前打。
大西投手は7回途中から登板しました。
大西投手は7回途中から登板しました。

さて1日から始まった近畿地区最終予選は、トーナメントのやまがたが4つあって、右2つは第3代表と第4代表を争う敗者復活戦。左2つのやまがたで、まず代表2チームが決まるわけです。その1つ目のブロックには藤井宏政選手のカナフレックスと、阪口哲也選手のパナソニックが入っています。どちらも初戦(2回戦)で勝ち、顔を合わせたの5日。わかさスタジアム京都で行われた第1試合でした。

ともに9安打ずつ放ちながら1対0という、接戦をものにしたのはパナソニックです。完封勝利の藤井聖投手も、またカナフレックスの3投手も、甲乙つけがたいほど粘りに粘ったピッチング。どちらに転んでもおかしくない試合だっただけに、カナフレックスの悔しさは相当なものでしょう。

では、パナソニックが22大会連続37回目の出場を決めた、5日の試合を振り返ります。カナフレックスの藤井選手は5番ショートで先発出場、パナソニックの坂口選手は8回の守備から出て打席は回っていません。

1点を追う9回裏、藤井選手は先頭で左前打!
1点を追う9回裏、藤井選手は先頭で左前打!
代走を送られ、ベンチへ戻って歓待を受けます。
代走を送られ、ベンチへ戻って歓待を受けます。
結局、パナソニックの藤井聖投手が完封勝ち。
結局、パナソニックの藤井聖投手が完封勝ち。

9月5日 代表決定戦 (わかさ)

パナソニック-カナフレックス

パナ 000 100 000 =1

カナ 000 000 000 =0

<試合経過>

両チームとも3回まで2安打ずつで0対0。試合が動いたのは4回です。パナソニックは2死から5番・田中が右翼線に二塁打を放ち、続く福原が中前タイムリー!1点を先取します。その裏のカナフレックスは先頭の3番・山内がショート内野安打で出て、4番・北條は1ボールから送りバントを試みますがファウルになり、次の球を打って二ゴロ併殺打。ランナーがなくなってから5番・藤井と6番・稲森が連打で2死一、二塁と攻めたものの、得点には至りませんでした。

そのあとのパナソニックは5回に2四死球で2死一、三塁としますが追加点なし。6回は田中が右前打、犠打と7番・井上貴の左前打で1死一、三塁となったところで、カナフレックスが先発の岩崎から高崎へ交代して後続を断たれます。7回は2番・横田の左翼線二塁打と四球で1死一、二塁。ここでカナフレックス3人目、エースの大西が登板。2死一、三塁としながら抑えられ、8回も2安打で作った1死一、三塁(4イニング連続で一、三塁!)のチャンスを生かせず、9回は三者凡退で1点止まり。

一方のカナフレックスは5回に9番・前出の二塁打と死球で1死一、二塁となるも0点。7回は1安打のみ。8回は三者凡退と、パナソニックの藤井聖を打ち崩せません。1対0のまま迎えた9回裏、カナフレックスの攻撃は先頭の藤井が左前打を放ち、代走の武田が稲森の犠打で二塁へ。続く7番・安田が左前打!1死三塁となってベンチは最高潮の盛り上がりでした。しかし…後続が連続三振で試合終了。131球を投げた藤井聖の完封勝利です。

誰よりも大きな声が出ていた哲ちゃん

代表を決めて笑顔のパナソニック・梶原監督。
代表を決めて笑顔のパナソニック・梶原監督。
終盤までベンチで力いっぱい声出し中の坂口選手。
終盤までベンチで力いっぱい声出し中の坂口選手。
9回、バントの打球を処理して一塁へ投げるところ。
9回、バントの打球を処理して一塁へ投げるところ。
ベンチの声援に応えて、こんな顔に!
ベンチの声援に応えて、こんな顔に!

本大会出場を決めたパナソニックですが、梶原康司監督は最後まで油断できない僅差の試合に「なんとか…」と苦笑でした。昨年は早々に4月のJABA岡山大会で優勝して出場権を得ていますからね。

でも監督初年度に2年ぶりの都市対抗と、22年連続の日本選手権の両方が決まってホッとされているはず。選手時代よりもっとプレッシャーがあるでしょう。

試合後は取材も多かったようで、なかなかバスのところへ来なかったパナソニックですが、梶原監督は私の顔を見るなり「哲くん、出たねえ」とニヤニヤ。はい、久々に試合出場を見ました(笑)。その前のベンチでも、また守備についてからも大きな声だったのは、監督が「しっかり声を出せ!と言ってありますから」とのこと。それも気合いの1つですね。

そんな哲くんこと、阪口哲也選手は1日の三菱重工神戸・高砂戦に出場せず、5日もベンチスタートでした。しかし8回、9番の渕上真選手に代打が送られ、その裏からサードを守っています。すぐゴロが飛んできて処理。ベンチから声が飛んで、ちょっとドヤ顔もあったような? また9回裏はバントの打球を捕って、しっかり送球しました。

やっぱり試合に出ると嬉しそうですね、哲ちゃん。次は京セラドームで!
やっぱり試合に出ると嬉しそうですね、哲ちゃん。次は京セラドームで!

初戦で敗れた都市対抗のあと、夏場の練習は相当きつかったパナソニック。真っ黒に日焼けした阪口選手は「負けたらどうしようと思ってました。きょう勝ってよかった~」という第一声です。そして「カナフレックス、強いですね」と。昨年も対戦していますが、その時より手強い印象だったということでしょう。それはカナフレックスが、昨年の日本選手権に出てから実戦の数も大幅に増えたことも大きいと思われます。

そして「藤井さん、さすがですね!普通にヒット打ちますね」と目をくるくるさせました。感心している場合じゃないですよ、哲ちゃん。初めて経験した都市対抗で出番のないまま終わり、悔し涙を見せたのは記憶に新しいところ。今度こそですね。「京セラはスタメンで出られるよう頑張ります!」。昨年の大会では先発出場ながら3打数ノーヒット。ことしは打ってアピールしてください。

ことしは実力で出場権を取りたい!

一、三塁のピンチをしのいで戻る大西投手と福田捕手。
一、三塁のピンチをしのいで戻る大西投手と福田捕手。
9回1死二塁で左前打を放ち、チャンスを広げた安田選手。
9回1死二塁で左前打を放ち、チャンスを広げた安田選手。
主将・北條選手が打者に「時の流れに身を任せろよ~!」と声をかけ…
主将・北條選手が打者に「時の流れに身を任せろよ~!」と声をかけ…
副主将・藤井選手(右)ら、みんなが大笑い!逆転を願ってベンチは大盛り上がりです。
副主将・藤井選手(右)ら、みんなが大笑い!逆転を願ってベンチは大盛り上がりです。

一方、カナフレックスの河埜敬幸監督は、互角の戦いだったと話を振ると「勝負事は勝たなあかんでしょう」と悔しさの滲む表情でした。「押せ押せの1本、ここ1本がずっと出なくて。向こうはチャンスでつながったのに、うちはチャンスで打てなかった。痛いですねえ。いい勉強にはなったけど…」

1点先制された直後に計3安打を放った4回の攻撃について「バント(のサイン)を、ちょっと迷ったんですよ。ずっと失敗していたから。練習の時も失敗ばかりで」と、無死一塁で4番・北條選手への指示を振り返ります。2球目でバントを試みるも失敗して、結局は併殺。そのあとヒットが続いただけに悔やまれるかもしれません。

また9回1死一、三塁で「スクイズで同点にするという手もあったが、送りバントがファウルになっていたので…」と河埜監督。「私の迷いがこういう結果になった。負けたのは監督の責任です」と言われました。計9安打されながら1失点で踏ん張った3投手には「大西はちょっと(前の試合で)疲れているので岩崎を先発にしたけど、ゲームを作ってくれた。大西もよく頑張ってくれて」と評価の言葉です。

「ただ、ここで負けたら2日後に敗者復活戦がある。きょう勝つことしか考えてなかった」というように、何が何でも勝つんだとの気迫を感じました。「去年の本大会出場はラッキーだと言われて(笑)。ことしは実力で出たいと思っていたんです。ここ2試合、いい戦いをしている。次につながるのを信じるしかない」

昨年は、日本生命が出場権獲得の対象大会で2度優勝したうえに都市対抗も優勝で、近畿地区の出場枠が計2つ増えたのは確かにラッキーでした。また最終予選のクジ運のよさもあり、カナフレックスは創部2年目にして社会人野球日本選手権初出場となったわけです。もちろん運だけでなく、そこで勝ち抜いたのも実力。とはいえ、ことし連続出場して本大会で勝って証明したいですね!

「勝ちたかった…」と藤井選手

ことし新しくなったカナフレックスのホーム用ユニホームを着た藤井選手。
ことし新しくなったカナフレックスのホーム用ユニホームを着た藤井選手。

藤井宏政選手は、2回が空振り三振、4回は中前打、6回は一飛、9回に左前打の4打数2安打。「ヒットはたまたまです。バッティングは水物なんで」。でも同じ9安打だし。「つながりは向こうの方があったということでしょう」。間違いなく、勝機はありましたよね。だからこそ「勝ちたかった!」と、珍しく悔しさをあらわにしていた藤井選手です。

「ピッチャーがゲームを作ってくれていたのに、もったいない。勝ちたかったですねえ!」と繰り返しました。それから「最後に整列した時、阪口がこっちを見て頭を下げたんですよ。『お先に』って感じで」と苦笑い。もちろん阪口選手が実際に言ったわけではありませんけど、「そんな目をしてた」そうです。帰りのバスに乗る直前、ニコニコ笑う阪口選手を見て「いいなあ」と藤井選手。心の底から出た言葉でしたね。その差は紙一重だっただけに切ない。

9回、藤井選手の代走で出て三塁まで進んだ武田選手。右はサードの阪口選手です。
9回、藤井選手の代走で出て三塁まで進んだ武田選手。右はサードの阪口選手です。

ところで、藤井選手が「この子も加古北ですよ」と紹介してくれたのは、ことし天理大学から入団した武田勇樹選手です。兵庫県立加古川北高校が2011年センバツでベスト8まで進んだ時の3年生、遊撃手でした。藤井選手は甲子園初出場で話題になった2008年夏だったので重なってはいませんが、時を経て同じチームでプレーするのも何かの縁でしょう。「きょうは加古北リレー」と武田選手。9回の先頭でヒットを放った藤井選手の代走で出たということですね。

試合後、大西投手のアイシング準備をする浦木トレーナー。
試合後、大西投手のアイシング準備をする浦木トレーナー。

そんな話をしている時、ピッチャーの肩をアイシング中だったのが浦木トレーナーで、藤井選手いわく「ピッチャーの調子がいいのはトレーナーのおかげ。しっかり準備してくれています」とのこと。浦木トレーナーも高校球児で、藤井選手と同い年だそうです。ちょうどアイシングをしてもらっていたエース・大西健太投手は「いつでも投げますよ」と、連投は社会人の宿命と言わんばかりの涼しい顔でした。

あす、最後の1枠を賭けて―

なお敗者復活戦に回ったカナフレックスは、7日の第1試合(第3代表決定・3回戦)で新日鐵住金広畑と対戦。6回まで0対0という展開だったのですが、7回に2点、8回に3点を失い、5対0で負けています。

9月7日 敗者復活3回戦 (わかさ)

カナフレックス-新日鐵住金広畑

カナ 000 000 000 =0

広畑 000 000 23X =5

これは試合中の写真。オフショットは「勝った時に」と藤井選手。約束です!
これは試合中の写真。オフショットは「勝った時に」と藤井選手。約束です!

7日はずっと大雨の予報だったのが、朝起きたら大きく変わっていてビックリ。ピッチャーを休められるかなという目論見は外れ、大西投手と高崎投手がまた投げていますね。まあ、どのチームも同じことですけど。この敗戦によりカナフレックスは第4代表を目指します。7日に続いて8日、そして9日と連投やむなし…と思っていたら、きょう8日の試合は中止になりました。恵みの雨と言えるかも。

よって1日延び、あす9日の第1試合でニチダイと対戦するカナフレックス。これに勝てば翌10日の第4代表決定戦へ!同じく順延された9日の第3代表決定戦(新日鐵住金広畑vs大阪ガス)の敗者と、最後の出場枠をかけて戦います。ただし9日のニチダイ戦を落とすと…そこで終わりです。

これが噂の?整列写真。「お先に」って顔…していますかね(笑)
これが噂の?整列写真。「お先に」って顔…していますかね(笑)

カナフレックスの梁川マネージャーは「相手がどこであろうと勝つしかない」と宣言していました。そして「お先に、なんて言っていませんよ~」と必死で弁明していた阪口選手も「絶対に決めてほしい!」と祈っています。一緒に京セラドームへ行きたいと。小虎ファンの皆さまも同じ気持ちですよね。頑張れ、宏政!カナフレックス!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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