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人生初の5打数5安打、とどめがサヨナラ弾!陽川選手《9/9 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
今季2本目のサヨナラHRを放った陽川尚将選手。鳴尾浜恒例の“水浸し”です。

まず最初に、もと阪神タイガースの選手が所属する社会人野球チームの件です。『第42回社会人野球日本選手権大会』の地区最終予選、きのう9日は近畿で藤井宏政選手のカナフレックスが敗者復活4回戦でニチダイと対戦。初回に4点を取られるも、1点ずつ返して追いついた直後に…2点を失って負けてしまいました。

昨年に続く本大会出場はならなかったカナフレックスですが、今月14日に鳴尾浜で阪神ファームとの対戦があるので、そこで悔しさをぶつけてもらいましょう。

また九州では野原将志選手のいる三菱重工長崎が、準決勝第1試合で宮崎梅田学園に4対2の勝利。きょう10日、Honda熊本と決勝を行い、勝てば第1代表に決定します。負けても第2代表があるとはいえ、ここは一気に決めてほしいですね。

今季5度目のサヨナラ勝ち!

では現役の小虎たちの戦いです。きのう9日から全チームと3試合ずつやって公式戦が終わる阪神ファーム。最後のひと回りは、まず5年ぶりの優勝に向けてソフトバンクとデッドヒートを展開中の中日戦で、きのう9日はサヨナラ勝ち。もうおなじみというか、またというか…土壇場で追いつかれた上でのサヨナラアーチ、予感ありましたよねえ!今季5度目のサヨナラ勝ちのうち4戦がホームランで決着。陽川選手は2度目です。

《ウエスタン公式戦》9月9日

阪神-中日 28回戦 (鳴尾浜)

中日 000 000 002 = 2

阪神 100 100 001x = 3

◆バッテリー

【阪神】秋山-○岩崎(4勝2敗) / 梅野

【中日】八木(5回)-金子(1回)-セプティモ(1/3回)-武藤(2/3)-岩田(1回)-●福谷(1勝1敗4S)(1/3回) / 松井雅-加藤(5回~)-藤吉(9回裏)

◆本塁打 陽川13号ソロ(福谷)

◆二塁打 井領2、江越、松井佑、多村

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]右:伊藤隼 (5-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .306

2]遊:植田  (3-0-0 / 1-2 / 0 / 0) .158

3]三一:陽川 (5-5-1 / 0-0 / 0 / 0) .298

4]中:横田  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .278

5]一:新井  (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .303

〃打:ペレス (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .314

〃二:坂   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .176

6]左:江越  (3-2-0 / 1-1 / 0 / 0) .216

7]二三:今成 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .304

8]捕:梅野  (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .228

9]指:緒方  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .271

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

秋山 5回 66球 (5-3-0 / 0-0 / 2.05) 145

岩崎 4回 72球 (4-3-2 / 2-2 / 3.14) 142

<試合経過>

3回1死一塁で荒木選手の打席を迎えた秋山投手。後ろで亀澤選手がスタート。
3回1死一塁で荒木選手の打席を迎えた秋山投手。後ろで亀澤選手がスタート。
4回に伊藤隼選手の右前打でホームへ滑り込んだ緒方選手。惜しくもアウトでした。
4回に伊藤隼選手の右前打でホームへ滑り込んだ緒方選手。惜しくもアウトでした。

1軍の先発枠をかけて秋山、岩崎の2人が投げた阪神。まず先発・秋山は1回が三者凡退、2回と3回は2安打ずつ許しますが要所を締めて無失点。4回は三者凡退。5回は先頭にヒットされるも併殺など3人で片づけ、予定の5イニングを66球で投げ終えました。5安打無失点、無四球です。

その間に打線が先制。1回2死から陽川、横田の連打で一、三塁として新井の中前タイムリー!2回、3回は1安打ずつで追加点なし。4回に先頭の江越が右翼線二塁打を放ち、2死後に緒方の右前タイムリーで2点目が入ります。ライトのエラーで二塁へ進んだ緒方が、続く伊藤隼の右前打でホームを狙うもここはタッチアウト。

岩崎投手が9回、渡辺選手に同点タイムリーを浴びる瞬間…。一塁走者は石川選手。
岩崎投手が9回、渡辺選手に同点タイムリーを浴びる瞬間…。一塁走者は石川選手。
その裏、陽川選手がレフトへ!本人も中日ベンチも打球の行方を見ています。
その裏、陽川選手がレフトへ!本人も中日ベンチも打球の行方を見ています。
コーチ陣からバシバシと手荒い祝福。今岡打撃コーチ(左)の笑顔が印象的ですね。
コーチ陣からバシバシと手荒い祝福。今岡打撃コーチ(左)の笑顔が印象的ですね。

ついで岩崎が6回、7回と1人ずつ走者を出しながら0点に抑え、8回は三者凡退。このままいけば秋山が2位に2差をつける10勝目、岩崎はプロ初セーブ!という話をしていた9回に先頭の松井佑の二塁打、代打・多村の左中間二塁打で1点差。1死後に代打・石川を四球で出し、続く渡辺が右前タイムリー。後続は断ったものの2対2と追いつかれます。

後半も毎回走者を出しましたが追加点なく、同点とされた打線。でも9回裏は2番からの攻撃で、8月には3試合もサヨナラホームランが出ている阪神ですから、スタンドはもう準備万端。登板した福谷の初球150キロを打った植田が二ゴロで1死。続く陽川には4球続けて152キロの真っすぐでした。カウント1-2からの5球目は143キロ、これを捉えてレフトへホームラン!

阪神打線は1回から9回まで、毎回安打を記録。ただ13安打で3得点は少ないかも。11残塁ですからね。さお、このところ恒例となった祝福の水かけ。しっかり確認はできていませんが、人垣の解けた時にウォーターサーバーを持っていたのは背番号『33』です。

掛布vs江川がよみがえるような場面

掛布監督は陽川選手の話からでした。「最後にいい勝負を見せてくれた。(福谷投手)があそこまで真っすぐで来て。152キロ出てた?まさにピッチャーとクリーンアップの勝負ですよ。きょうはホームランだったけど、次は打ち取られることもあるという。ちょっと、江川と僕が勝負しているような気がした。互いに意地がある。そこで打った陽川を褒めなきゃいけないね」

掛布監督(右)に迎えられる陽川選手。
掛布監督(右)に迎えられる陽川選手。
続いてハグ。どちらも嬉しそうです。
続いてハグ。どちらも嬉しそうです。

そして「もっと(カウント的に)早く打ってよ」と、さらに「1軍で打ってくれって!」と笑いながら続けました。「あす、あさってで1本ずつくらいヒットを打たないと。そうしたら7安打でしょ?3連戦でそれくらいにしてほしいね」と監督。きのう5の5と爆発したけれど、あと2試合も3の1ずつ打って11打数7安打になります。そうすれば、自信を持って金本監督に推薦電話ができるということでしょう。

投手陣には「左打者に対してあれだけ攻め込めた秋山、立派だよな。ことしの秋山を感じるピッチングだった。岩崎もボール自体そんなに悪くなかった。球持ちもいいし。まあ(9回は)1軍でもよくあること。この2人、あとは上の判断でしょう。相手チームとのことも考えてね」というのが掛布監督の評価でした。

久保投手コーチの談話

ことしの秋山投手は力感の伝わるフォームに思えます。もう一度1軍で!
ことしの秋山投手は力感の伝わるフォームに思えます。もう一度1軍で!
9回表を終えてベンチへ戻る岩崎(左)投手と梅野選手のバッテリー。
9回表を終えてベンチへ戻る岩崎(左)投手と梅野選手のバッテリー。

久保コーチは、まず「秋山はけっこう状態がいいですね。いいから1軍に行ったわけで。そのあとも引き続きずっといいですよ。きょうは、こちらとしてもいい勉強になった。あれだけ左バッターをたくさん並べて、いろいろパターンもやれるし」と話しています。

また岩崎投手については「悪くはないけど、手詰まりですね。1軍で勝ち数が伸びないのは。生きた球がいかなくて、球威が落ちた時、ああいう格好になってしまう。何か変化球を増やせばいいけど急にはできないのでゲームの中で、大きく変えるんじゃなく、間合いとか注意して変えることを伝えています」と久保コーチ。

「投球の技術ではなくて、牽制を入れるとか、何か攻めるところはないかな、これは打って来ないな、バントをしてくるな、そういう周りの状況を見ながらってことですね。きょうの9回みたいになると、ガーっていってしまうから」。場数も踏んでいるし、客観的には落ち着いたポーカーフェイスと思える岩崎投手なので、少し意外な気もしますね。

秋山vs岩崎 次の1軍はどちらに

では投手2人のコメントです。試合を振り返り「ボールでいいところはボールにしながら、カウントを早く作りすぎることなくいけたかなと思います」と秋山投手。この前の1軍での登板を経ての対処?「そうですね。自分有利とか余裕がある時に、ヒットを打たれるのはもったいないので。(1軍投手コーチの)香田さんにも言われていたし、時間をかけてでも徹底することを、きょうの課題にしていました。真っすぐでどんどんいくところはいけたと思う」

味方の攻撃中、ベンチ横でキャッチボールをする秋山投手。
味方の攻撃中、ベンチ横でキャッチボールをする秋山投手。

1軍の残り試合も少なくなってきた中で、“競争”登板となった今回に「結果のいい方を使うと言われていたので結果を求めながら、1軍で感じたことを出していこうと考えていました。2対0という展開で、あとから投げる岩崎の方がしんどかったかなと思います」と冷静に分析。

1軍で感じたこと?「ファームだと見逃しとか打ち損じとか、簡単にカウントを作れてピッチャー有利でいけることが多かった。上ではストライクゾーンに集めていたら自分が痛い目に遭うので、ボールを投げたり球数を使うところは使わないと。楽をしたら痛い目に遭うと感じました」。それを、この日のマウンドで出せたわけですね。

続いて岩崎投手です。8回までの3イニングは1安打無失点だっただけに、9回は悔やまれるのでは?と聞かれ「数字的にいえば、ですね。9回は独特の雰囲気がある。先発だとわからないことも」と答えています。そして「打たれたのは真っすぐが少しスライダー回転して中に入ったのがあった。そこだけかなと思います」というのが反省点。

同じく、キャッチボール中の岩崎投手です。
同じく、キャッチボール中の岩崎投手です。

それ以外はよかった?「前回同様というか、状態は悪くなかったです」。前回が2日の広島戦(由宇)で、8回を投げて4安打1失点といい内容でした。今回は6回から、しかも秋山投手が「しんどかったかも」と言っていた2対0での登板。やはり「先発と同じように入ろうとは思いましたが、少し違った」そうです。次に向けて「しっかり準備します」と締めくくりました。

「4の4でいいかな」からのサヨナラ弾!

最後は陽川選手です。ホームランの球が真っすぐだったかどうか中日側に確認したところ「こちらも真っすぐだと思いましたが、抜けたフォークだと本人は言っています」とのこと。陽川選手も「わからなかったです。フォークにしては速いかなとは思ったけど」という答えでした。確かに143キロですからね。落ちなかったフォークにうまくバットが届いたということでしょうか。

最後の整列でようやく、この日の“水かけ担当”が判明。西田選手ですね。
最後の整列でようやく、この日の“水かけ担当”が判明。西田選手ですね。
してやったり!の顔。一緒に水をかぶってしまった秋山選手(右)も災難。
してやったり!の顔。一緒に水をかぶってしまった秋山選手(右)も災難。

「1アウトでランナーもいなかったので、追い込まれるまでは自分のスイングをして、追い込まれてからはコンパクトにと。真っすぐだけじゃないんで。そういうことを考えながら打席に立っていました」。そこまでの打席は、1回2死から中前打を放って先制のホームを踏み、3回と5回は左前打、7回には左中間へのヒットとレフトのエラーで二塁へ。そして、2対0のまま逃げ切れば回ってこなかった第5打席がサヨナラホームランという、人生初の5打数5安打でした。

ただし振り返ってみると「結果としてはいいと思いますが、追い込まれるまでの打ち損じとか、真っすぐに遅れたりしていた。そういうのをしっかりやらないと1軍では結果がついてこないので、そこらへんも考えながら」と反省。掛布監督が話していた、3連戦トータルでの結果を大事にという点も「毎日毎日すごく結果が大事だと思います。それは毎試合変わらない。結果を求めてやっているから。きょうこうやって出たので、あす以降もしっかりやっていきたい」と言っています。

なお9回のサヨナラホームランが今季13号で、リーグトップのソフトバンク・カニザレス選手に並びました。でも「気にしすぎると自分が崩れてしまうので試合に集中します」と陽川選手。59打点は単独トップなので、現在2冠。ホームランと打点なら、どちらのタイトルがいいかと聞かれて少し考え「ホームランですかね、やっぱり。打点もですけど、求められているのが長打なので確率を上げていきたいです」と回答。

二塁を回って三塁へ向かう、この姿もすっかりおなじみ。次は甲子園での1発を!
二塁を回って三塁へ向かう、この姿もすっかりおなじみ。次は甲子園での1発を!

.286から一気に.298へ上がった打率も「気にしている」そうですよ。最後に聞いてみました。同点になった。また来た。きょうもいっとくか~って思ったでしょ?「いえ。思ってないです」。じゃあ打ったら5打数5安打だ!とか。「いえ、4の4でいいかな…って(笑)」。胸のうちはわかりませんが、そう言いながら打ってしまうのが奥ゆかしくて頼もしい大砲です。きのうでウエスタンの最終規定打席をもうクリアしたので、3割に載せておいて1軍へ行きましょう。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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