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もと阪神・玉置隆投手 無四球完封で決めた新日鐵住金鹿島の日本選手権出場!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
7月、都市対抗野球(東京ドーム)の1回戦で先発した時の玉置投手です。

社会人野球のシーズンを締めくくる『第42回 社会人野球日本選手権大会』は、10月29日から11月8日まで京セラドーム大阪で行われます。9月初旬にほとんどの地区で最終予選が終わっているのですが、関東と北海道は下旬の開催。さらに関東は台風の影響を受けて延期が続いていました。先に北海道代表が決まり、関東は予備に設けられた26日に2代表が決定。残る3試合が最終予備日だった27日に行われたわけです。

これで、都市対抗優勝のトヨタ自動車、全日本クラブ選手権優勝のビッグ開発ベースボールクラブ、対象JABA大会を制した10チーム、そして最終予選を勝ち抜いた9地区の21代表を合わせた全33チームが出揃いました。

昨年の社会人日本選手権大会。京セラドームにて。
昨年の社会人日本選手権大会。京セラドームにて。

阪神OBでは、野原将志選手の三菱重工長崎が2大会連続で九州地区の第1代表、また阪口哲也選手のパナソニックは22大会連続37回目の出場です。組み合わせ抽選は10月6日に行われます。

雨に振り回された関東最終予選

9月19日から5日間の予定で始まった関東地区最終予選(東京・大田スタジアム)。もと阪神タイガースの玉置隆投手(30)が所属する新日鐵住金鹿島の初戦は、雨で順延となって21日に行われました。深谷組を11対3の8回コールドで制して、次は23日に代表決定戦の予定だったのが22日の雨天中止で26日に延び、また23日も一部の試合が中止となったため、結局きのう27日に行われています。

27日の第1試合で、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)横浜に2対0で勝って、4大会ぶり6回目の日本選手権出場決定!玉置投手は先発し、10安打されながら無四球完封勝利!すごいですねえ。ちなみに奪三振は5つで、本人に確認したところ「投げたのは131球で、最速が144キロ」だったそうです。大会前に「ぜったい決める!」と断言した通り、自身の腕で本大会切符をつかみ取りましたね。

【関東地区最終予選】

9月27日 大田スタジアム

MHPS横浜-新日鐵住金鹿島

横浜 000 010 000 = 0

鹿島 110 000 00X = 2

<試合経過>

新日鐵住金鹿島は1回、1死から2番・渡部が左前打し、続く藤本の右中間三塁打で先制。2回は2死後に片葺が四球を選んで、9番・江藤の左前打で一、二塁として1番・堀越が右前タイムリー。早々に2点を先取したものの、その後ヒットは4回2死からの連打のみ。走者も8回に1四球あっただけで0行進でした。

しかし、玉置が踏ん張ります。1回は連打で1死一、二塁とされるながら4番を見逃し三振に切って取るなど無死点。2回は2死を取ったあとに二塁打を浴びながらも抑え、3回は三者凡退。4回は打撃妨害による走者のみ。5回に2安打で2死一、二塁とした場面をしのぎ、ここまで三塁を踏ませていません。

6回は初めて先頭から連打を許して犠打で1死二、三塁としますが後続を断ち、7回も先頭の中前打と犠打で1死三塁を抑え、8回は2安打と味方のエラーなどで1死一、三塁のピンチで三振と遊ゴロ。そして9回は三者凡退で締めて試合終了です。

悲願の“ダブル出場”に感激

試合が始まって少し経った頃に「弟、また先発で頑張っています!」と玉置投手のお兄さんから連絡があり、その2時間後には「無四球完封で決めました!」と。ええっ完封?無四球?と驚いていたら、今度は吉田浩さんからも喜びのメッセージが届きました。「新日鉄住金鹿島野球部の、同一年度での都市対抗、日本選手権、ダブル出場です!本当によかった。歴史を刻んでくれた玉置にありがとう!です」と。

7月の都市対抗(東京ドーム)の初戦。この日も先発でした。
7月の都市対抗(東京ドーム)の初戦。この日も先発でした。

高岡第一高校から1989年のドラフト6位で阪神に入団した吉田浩さん、というか“アゴヨシ選手”の方がおなじみですかね。2002年に阪神を退団して住友金属鹿島に入社、4番を打ち都市対抗にも出場しました。2006年に専任コーチとなったあと退部。以降は同社(現・新日鐵住金株式会社)の大阪支社に勤務して10年目、新日鐵住金鹿島のスカウト部担当です。

昨年までしばらく都市対抗も日本選手権も出場がなく、野球部の存続も危ぶまれていた中、ことしは両大会とも出場権獲得となったわけで、吉田さんは「玉置が鹿島野球部を立て直してくれて、感謝の気持ちでいっぱい」と繰り返しました。同一年度のダブル出場が初とのことで調べてみたら、確かに2011年までの住友金属鹿島の時代にもありませんね。昨年まで都市対抗に15回、日本選手権に5回出ていますが、同じ年に両方はチーム史上初でした。

それはもう、まさに悲願でしょうね。きのう鳴尾浜で結果を知った新日鐵住金鹿島OBの横山雄哉投手は、大興奮で「玉置さん、すごい!」と「ダブルドーム!」のフレーズを繰り返していたそうです。なるほど、東京ドームと京セラドームでダブルドームなんですね。それは社会人野球選手の誰もが目指す場所と言えるでしょう。

同じく石崎剛投手も「結果は横山から聞きました。僕らの時は都市対抗も含めて、どっちも行けなかった。すごいことですし、素直におめでとうと言いたいです」と話していたとのこと。2人とも都市対抗に補強選手で出場していますが、自チームでは経験なしだったんですよね。

完封で勝つ!と決めていた

都市対抗は初戦で敗れたのですが、玉置投手の表情は晴れやかに見えました。
都市対抗は初戦で敗れたのですが、玉置投手の表情は晴れやかに見えました。

お待たせしました。玉置隆投手本人のコメントをご紹介します。新日鐵住金鹿島に入部した時、玉置投手は「まず都市対抗と日本選手権に出ること」と話していたので、ノルマは達成できたかな?と言ったら「そうですね。まずはノルマを達成して、僕が鹿島に来た意味を伝えることができて本当によかったです!」と喜びの言葉でした。“鹿島に来た意味”、という表現も玉置投手らしい。

代表決定戦である2試合目の先発は前から決まっていたはずで、登板日がずれ込んでいったのは大変だった?「先発が延びて延びて、調整は難かしいと思いましたが、それは相手も一緒ですし、この延びた期間はすべて自分にとって良い方向にむいているとプラス思考で毎日を過ごしていたので、特に難しさは感じませんでした」。さすがです。

10安打は許したものの、5三振で無四球の完封勝利は素晴らしい!ところで完封は、自身で想定内だったかと尋ねてみたら「今回の完封は、結果が出たあとに言うのもあれですけど。正直、想定内です。というのも、完封できるかできないかではなく、自分の中で完封で勝つ!と決めていましたし、完封しか考えていなかったです」という答えが返ってきました。これまた、“らしい”なあ。

「気持ちって大事ですね」

「当然、相手もすごく打つ良いチームだし、野球なので打たれることもあります。だから簡単ではないですが、1点取られたら負ける、くらいの強い気持ちでマウンドに上がりましたね。1点オッケーの考えは、まずなかったです」と言い、そのあと「気持ちって大事ですね!」と続けています。そう、そんな気持ちの強さと熱さ、温かさ。玉置投手が誰からも愛され、信頼される証です。

ちょうど1年前、鳴尾浜でのラスト登板した玉置投手。“気持ち”が表れています。
ちょうど1年前、鳴尾浜でのラスト登板した玉置投手。“気持ち”が表れています。

10月29日から始まる『第42回 社会人野球日本選手権大会』は、久しぶりの“里帰り”になりますね。「今はゆっくり休んで、また日本選手権に向け、楽しく頑張りたいと思います!」。秋季キャンプで阪神の選手たちが観に行けないのは残念ですけど、みんな隊長の活躍を祈っているでしょう。楽しんで、そして勝ってください!

そうそう、組み合わせが決まるのは10月6日ですけど、阪神OB同士が初戦で潰し合うのは避けたいなあと言ったら「それもありですね(笑)」という返事が…。スマホの画面に、玉ちゃんの“ニヤリ”って顔が浮かんだようでした。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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