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10年ぶりの安芸スタートで、スイッチに「挑む」大和選手!《阪神キャンプ開幕・後編》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
スイッチ挑戦中の大和選手。左右両方に耳あてのついたヘルメットが新鮮ですね!

春季キャンプ3日目を迎えた阪神タイガース。沖縄・宜野座はテレビで見る限り、きょう3日はいいお天気でした。安芸も快晴だったそうですよ。ことしは曜日の関係で第1クールが5日もあるので、まだ残りは2日も…。今夜あたり、結構みんな疲れが来ているんじゃないでしょうか。ケガなく乗り切ってほしいですね。

それでは、きょうも安芸キャンプ初日に聞いた話の続きをご紹介します。初日は昨年同様、シートバッティングで幕を開けた阪神ファーム。その内容などはこちらでご覧ください。→<安芸組も「挑む!」阪神タイガースの春季キャンプがスタート《前篇》>

1日の練習後、掛布監督は「みんな状態がいい。緒方も伊藤隼もいいですよ。小豆畑も、ひと回り体が大きくなってスイングが変わっていますね。大人になって戻ってきた。きょうの練習を見ると全員、状態がかなりいいんじゃないかな。野手は」とコメントしました。西岡選手(13年目)は別メニューですが、それ以外にも狩野選手(17年目)や新井選手(12年目)、大和選手(12年目)、また安藤投手(16年目)、高宮投手(12年目)、桑原投手(10年目)、柳瀬投手(12年目)といった10年超えの選手が安芸に来ています。

そういうベテラン勢について「“チームが勝つ準備”をしなくていい。自分たちの準備をしてもらえばいいので、じっくりと、できる準備をしてほしい。練習試合はあるけど。1軍は開幕に向けてふるいにかけられるけど、ここはそういう場じゃないから」と掛布監督。各自やるべきことはわかっている選手ばかりですもんね。

捨て身の大和に監督は期待

中でも、大和選手は2008年以来ずっと沖縄の1軍キャンプメンバーです。あ、その2008年が“いわくつき”。3年目の大和選手(当時20歳)は、2年目の野原将志選手(当時19歳)とともに初めての沖縄へ行きました。しかし大抜擢した岡田監督から「元気がない」と指摘され、第4クールから安芸へ移った、あのキャンプですね。その後、安芸で2人ともしっかりとアピールしたことは付け加えておきます。

鹿児島で自主トレをした森越選手(左)と一緒にいることが多いですね。
鹿児島で自主トレをした森越選手(左)と一緒にいることが多いですね。

その前の2007年以来、ことしは実に10年ぶりの安芸スタートとなった大和選手。まあ安芸には2次キャンプやオープン戦など行っていますが、ファーム宿舎であるホテルはきっと10年ぶりなわけで、なかなか新鮮なのでは?次に行ったら聞いてみましょう。

昨年11月に右わき腹を痛めたことや、現在スイッチヒッター挑戦中の大和選手にとって安芸でじっくり取り組めるのはいいかもしれませんね。初日の練習でバント練習は両方でしたが、ティーバッティングやフリーバッティングは徹底して左打ち。でも「バッティングもちょこちょこ右で打ったりしていますよ」とは本人の弁です。

掛布監督は「初めて左を見たけど、こんなバランスよく打てると思わなかったですね。大和という、守れる、走れる選手が左打ちで何かをつかめば大きな武器になる。取り組もうという気持ちを感じるので、ゲームでいいものが出せるようにしてほしい。この1ヶ月、気になる選手です」と話しました。

個別練習で大和選手を指導する掛布監督(左)。
個別練習で大和選手を指導する掛布監督(左)。

そして「1ヶ月で(習得するのは)そう簡単じゃないけど、練習で打っているのは違和感がない。きれいなスイングをしていましたね。やっぱり恐怖心はあるんですよ。なのでバントさせるのは意味があって、左で普通にバントできたら、ものすごく大きい。今の2割6分くらいの打率が、2割7分や8分になる。大和みたいな選手にとって武器だから」とのこと。

全体練習終了後、個別に特打をする伊藤隼選手と緒方選手に混じって、大和選手もティー打撃のみ行いました。もちろん左打ちで、掛布監督がアドバイス。「逆に振っているわけだから、まだ体がぶれるので、目の高さとか軸とかをね。悩むことは多いと思います。でも楽しいんじゃないかな」。そして「大和は捨て身なんでしょう。今のままじゃダメだと、ここでやらなきゃいけないと、追い詰められたと思うよ。年齢的に大変だけど、強い気持ちを持って取り組むだろう」と、うなずく掛布監督です。

10年ぶりに安芸で迎えた2.1

初日の夕方、すべてのメニューを終えた大和選手(29)が、口を少しとがらせてウロウロしています。何か考えている顔ですね。10年前と同じだなあ。全部終わったの?「はい」。帰らないの?「どうしようかなと思って。まだ4時半?早いなあ」。沖縄ではまだ練習時間なんでしょうね。

シート打撃ではすべて左で3打席。中前打が1本ありました。
シート打撃ではすべて左で3打席。中前打が1本ありました。

ところで左で打つのは人生初?「中学の時に1ヶ月だけ。でも遠くに飛ばなくて、面白くないのでやめちゃったんです。まさか、この年になってやるとは…」と最後は少し苦笑いでした。鹿児島の自主トレでも練習していたそうですが「ピッチャーの球を打つのは初めて」とのこと。感想を聞いてみると

「とりあえず当たったんで、よかったです。当たらなかったらどうしようかと思った」

ホッとしたような顔です。いい感じだった?「最初にしては。シートバッティングでも当たりましたし、そういう意味ではいい方向だと思います」。掛布監督からどんなアドバイスを?「バントで、打つポイントを前にして、しっかり前でさばくということです。ゲームのバントではなく『ポイントをつかむバント』の練習をしなさいと。いい練習方法だなと思いました」

また監督からは“捨て身”という言葉も。「確かに、この年で…と言われるかもしれませんね。でも、できれば試合に出られるし、チャンスも広がるという意味では、ものにしたいと思います」。左で打つことによって右も変わる?「なんか、いい感覚はありますね、右でも。なぜかは自分でよくわからないですけど」

反対側でカメラを構えてしまい、慌てて移動しました。これまでとは逆ですね。
反対側でカメラを構えてしまい、慌てて移動しました。これまでとは逆ですね。

そうそう、掛布監督が「西岡、大和、植田で3枚のスイッチになるわけだね。おもしろいよな!なかなかないよ。3人はすごい。それが9人の中に並んでいたらすごいでしょ!」と、すごいを連発していたことを告げたら「スイッチ3人って、昔のカープみたいですね」と、わりに淡々と感想を述べた当事者・大和選手でした。

自主トレと増量が奏功!

シートバッティングでも左前打やセンターオーバーの三塁打を放った緒方凌介選手(26)。最初でご紹介したように、掛布監督から「足の使い方、体重移動がうまくなった。レベルに振れて、いいスピンがかかっている。今すごく状態がいいね。緒方は悔しい思いをしていると思うし、陽川もしかり。同世代がみんな向こうにいるわけで」との話がありました。

緒方選手も「いい状態でキャンプインできました」と笑顔です。初日からバットでもアピールできたのは、やはり投手陣と一緒に自主トレをした成果?「そうですね。能見さんや岩貞に、最初は近いところから、最終クールにはマウンドから投げてもらったんで。何の違和感もなく、きょうバッティングできたのは、そのおかげだと思います」

シート打撃での緒方選手。三塁打を打つ直前です…。
シート打撃での緒方選手。三塁打を打つ直前です…。

飛ばしていましたねえ。「キャンプインして、みんな飛ぶから勘違いせず、あす以降が勝負だと思います。まあ飛ぶのは体重が5キロくらい増えて、体が大きくなったのもありますけど。シーズン中は71キロくらいで、今は77キロです。筋肉量が増えて体脂肪は減りました」。いい増え方です。見習わなくては…。

監督から話は?「きょうに関しては、ポイントを前にしっかり置くようにというだけですね。きょうはすごくいいと言ってもらいました。維持するのが大変なので、上げていけるようにやっていきます」。安芸から開幕1軍へ!巻き返しですね。「ケガさえしなければ可能性はゼロじゃないので。しっかりアピールして、いつ呼ばれてもいいように頑張ります」

自分との戦い 覚悟の2017年

シート打撃で右翼線二塁打の小豆畑選手。
シート打撃で右翼線二塁打の小豆畑選手。

体が大きくなったといえば、監督から話が出た小豆畑眞也選手(28)もしかり。「去年の10月末は80キロで、このオフに最大の時が89キロまでいきました。少し落として88キロになって、今は87キロくらいですかね」。もちろん体脂肪は減っています。筋肉アップは食べて、鍛えてという感じ?「食べて、サプリ摂って、ウエートして」。サプリメントを増やしたの?「今まであまり摂っていなかったんですけど、買い漁りました(笑)。7種類くらいかな」。それはすごい…。

食事の量も増やしたらしく「今までで一番つらかったかも。無理して食べていたので」と小豆畑選手。作る奥様も大変だったでしょう。炭水化物ばっかり出すわけにはいきませんからね。何がそこまで小豆畑選手を追い立てたのか?答えは「ことしやらなきゃ終わりなので。いつも言っていることではありますけど、ことしは本当にそう思っています」というものでした。

ナイスバッティング!西田選手。
ナイスバッティング!西田選手。
お、もしかして?入ったか?
お、もしかして?入ったか?
「普通のライトフライ」で苦笑いです。
「普通のライトフライ」で苦笑いです。

また、育成契約となった西田直斗選手(23)も同じ思いです。背番号133のユニホームで“挑む”のは支配下復帰、ただそれだけ。初日のシート打撃では、いい当たりの打球を飛ばして「お、いったかな?」と我々も思ったくらいだったのですが、結果は右飛。でも打った瞬間や、振り切って打球を見送る顔など、シャッターを押していてサクは越えたと思ったんですよね。おそらく西田選手も。

一塁横にいた山田バッテリーコーチは、一塁を回った西田選手が打球を捕られてガックリするのを見ながら「ガハハハ!」と大笑い。しかも悔しがる西田選手を何度も指差して笑うもんで、それがおかしくて周囲も爆笑です。あとで聞くと「あそこは山田コーチに『ホームラン打て』と言われていたんですよ。だからスリーボールのつもりで狙いました。そやけど…普通のライトフライやん!(笑)。あしたは打ちますよ」と宣言。

西田選手も相当な覚悟で臨んでいる安芸キャンプだと思いますが、表情は明るいですね。大きな声も出ています。失うものはない―。そんな真っすぐな目をしていました。

初日から打って守ってのルーキー捕手

最後はドラフト7位・長坂拳弥選手(22)のコメントをご紹介しましょう。安芸にいるルーキーズは5人ですが、他がみんなピッチャーなので野手は1人。ブルペンでは福永投手の球を少し受けたものの、練習の流れなどを気軽に確認できる同期がいないので緊張したのでは?という心配をよそに「思ったより緊張もせずやれた」という回答です。

球を受ける高宮投手に挨拶する長坂選手。
球を受ける高宮投手に挨拶する長坂選手。

シートバッティングでもヒットが出ましたね。「ストライクが来たら全部振ろうと思っていました」。同じくシートでマスクもかぶり「いい送球はできたかなと思います」と回顧。初めて現役選手と練習をしたわけで「プロの世界で長く活躍されている方々なので、すごい意識が高いと感じました。特に、それぞれやるべきことがわかっているんだなあと」

バッテリーコーチに捕球指導を受けていましたね?「いろんなことを教えていただいています。構えたラインより前で捕らないように、と。これは初めてだったので新鮮でした。きょう教わったこと全部、書いておきます。走塁でも教えてもらったので」。ノートに書く?「メモして、帰ってノートにきれいに書きます」。なるほど、清書しておくんですね。いつまでも保存して役立つように。「はい!長坂ノートです(笑)」

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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