阪神タイガースの安芸キャンプ ベテランと若手の相乗効果を保って後半へ

14日のブルペン。ピッチングを終えた安藤投手が浜地投手を見ていました。

高知県安芸市で行われている阪神タイガースの安芸キャンプは、既に折り返し地点を過ぎました。もちろん沖縄県宜野座村での1軍キャンプも同じ日程で、どちらも後半に突入です。短い2月とはいえ1ヶ月まるまるの阪神キャンプは珍しく、もっと長く感じるかと思っていましたが始まってみると早いものですね。

キャンプが終わって宜野座の選手と顔を合わせる3月が、本当の勝負のとき――。安芸組メンバーの顔には、そんな決意が表れています。

前半のMVPは安芸キャンプの両主将

第3クールを締めくくる14日の練習後、掛布監督に話を聞いたところ「いい状態できていると思いますよ。ケガ人もいないし、みんないい練習をしていますから。キャンプが終わる頃には準備ができているんじゃないかな」と、前半を振り返りました。その中でMVPというか、目立った選手を挙げるなら?「ピッチャーは榎田、野手では陽川かな。榎田はフィールディングとか、すべてにおいて丁寧にやっている。1球1球を大切にね。いい結果に出てくると思うよ。ことしの榎田は、それをすごく感じます。陽川も、あれだけの形を作ってきたからね」

キャンプイン前、掛布監督が安芸の投手キャプテンに指名した榎田投手、同じく野手キャプテンの陽川選手が、監督の期待に応えて頑張りましたね。昨年は“頑張ったで賞”として原口選手、高山選手、板山選手、田面投手、守屋投手、青柳投手らの名前を挙げた監督。打ち上げの頃にはどんな顔ぶれが出てくるか、まだまだ目が離せません。

掛布監督から安芸キャンプ前半のMVPと評された榎田投手キャプテン。
掛布監督から安芸キャンプ前半のMVPと評された榎田投手キャプテン。

それから、14日に行われたシートバッティングで、ともに2安打した小宮山選手と小豆畑選手について「DHとか、考えながらバランスよく(これからの練習試合で)使っていく。3月に入って彼らにも1軍へ行くチャンスがあるわけだからね。それをつかんでほしい。小宮山も、いいものを出してくれていると思うよ」と話しています。また例年通り、じっくりと仕上げていく安藤投手のことは「毎年のことだからわかっているよね。いい準備ができているし。シートとかゲームとか、本人次第」とのことでした。

その安藤投手は14日のブルペンでピッチングをした際、他の投手たちがなかなか来ないので「貸し切り状態」と笑い、受けていたブルペン捕手の本田さんに「きょうは何球?」と聞かれて「200球くらい(笑)」と。20球投げたところでブルペンを訪れた掛布監督は、真っすぐ、スライダー、カーブ、ツーシーム、フォークと精度の高いピッチングに何度も「おお~」と感嘆の声が上げます。やがて80球に達し、ことし最多の82球となった頃に他の投手陣がブルペンへ。

「敵は天候だけ」と周囲に言わしめる仕上がりの安藤投手です。
「敵は天候だけ」と周囲に言わしめる仕上がりの安藤投手です。

本田さんから「200球まで、あと三分の二!」と言われて苦笑いの安藤投手。86球を投じて終了です。ただ、そのあとも望月投手や浜地投手の投げる姿を後ろから熱心に見て、ブルペンを後にしました。望月投手には何か言葉をかけていたような気もしますが、この日が初めて捕手を座らせて投げたルーキー・浜地投手は「ちょっと話を聞いてみたかったですね」と残念そう。でも見られて緊張はしなかったと言うので、なかなか大物かも?

高宮投手も投手リーダーに

安藤投手の件に続き、ベテラン選手 (ではなく、星野仙一さんが阪神監督時代に言われていた“働き盛り”の選手ですね) の話をご紹介します。14日に行われたシートバッティングで、高宮投手と柳瀬投手が打者11人ずつに投げました。高宮投手は35球で安打4という内容です。「打者に投げるのが初めて (フリー打撃登板はなし) だったんで、変化球もブルペンであまり投げてないから真っすぐ中心でしたね。きょうはバッターに対してコースより低めに集めていこうというテーマで、低めにはいったけど強さがもう少しほしかったですね。でも“垂れる”ことはなかったんで、そのへんは収穫かな」

掛布監督が、13日に行った投内連係でリーダー的な役割をしてくれたと。「若い頃のように機敏には動けないから、必死にやっていますよ(笑)。ルーキーも多いし、サインプレーの動きなどをまだ把握していないので気づいたら教えてあげたりはしてる。プレーで見せて、引っ張っていけるようにね」。そして再度「僕がダラダラしていたらダメなんで、必死にやっています!」と言って笑いました。

14日に初めてシート打撃で登板した高宮投手。
14日に初めてシート打撃で登板した高宮投手。

キャッチャーの長坂選手にもアドバイスをしていた高宮投手。「ああ。あれは(長坂選手が)ざっくり構えたりするからね。ゲームに入っていくにあたり、体やミットで『ここへ!』って、しっかり伝えてくれと。寄るところは、しっかりコースに寄ってくれと言いました。放ってほしい球を(ピッチャーに)伝えていかないと。ボール球を振らせるのが理想なのに、ざっくり構えられると真ん中へ投げてしまうからね」

そうそう、同じくシートバッティング中にサードを守っていた新井選手が、マスクをかぶる長坂選手に「もっとピッチャーに声かけて」とアドバイス。先輩だらけで気おくれしがちなルーキーに、“守りの要”としての役割を伝えたかったのでしょう。長坂選手から少しずつ大きな声が出ると「そうそう!」「そうやって引っ張って」と新井選手。安芸キャンプは、とてもいいバランスと雰囲気です。

タテジマでタテジマに投げる違和感?

変わって柳瀬投手は、高宮投手と同じくフリーバッティングでの登板はなく、シートバッティングが今季初めて打者への投球。39球で安打5でした。「ヒットとか結果はあんまり見る時期ではないし、しっかりバッターに対戦させてもらえたので、一歩前進っていうとこですかね。ブルペンでずっと投げていても限界があるというか、見えないところも出てくるので、バッターと対戦してどういう反応をするか、ああいう雰囲気の中で投げて自分としては一歩進めたなと思います」

柳瀬投手もシート初登板。一歩前進と笑顔でした。
柳瀬投手もシート初登板。一歩前進と笑顔でした。

投げたのは、真っすぐ、スライダー、フォークですか?「そうですね。もともと真っすぐ主体でストライクを取るのが目的で、キャッチャーともそう話していた。納得のいく球がいかなかったものもあるけど、まあこんなとこかなと思います」。進み具合は例年と変わりないか聞くと「去年まではBPをしながらだったのが、今回はシートからという形で、自分の感覚と体のズレはまだありましたが、あすからブルペンに入って調整していければ」という答えでした。

そのあと「このユニホームを着て、この場所で、タイガースの選手と対戦する。それがちょっと違和感でしたね。今まではタイガースのユニホームを見たら、絶対に抑えなくちゃと思っていたので」と少し笑った柳瀬投手。そういえば小豆畑選手が、ソフトバンク時代に柳瀬さんからはフォークで三振を取られた印象しかないと言っていました。「そうなんですか(笑)。確かに、みんなファームでよく対戦したから」。ことしは古巣・ソフトバンクの1軍相手に、いっぱい三振を取ってください!

浜地投手、初の“本格投球”

浜地投手のピッチング中はご覧のように多くのギャラリー。
浜地投手のピッチング中はご覧のように多くのギャラリー。

今度はぐっと若く、ルーキー・浜地投手についての話です。先ほどチラッと書いた通り、浜地投手は14日にキャッチャーを座らせてのピッチングを初めて行いました。これまた遅くなって申し訳ないのですが…投げたあとのコメントをご紹介します。この日に座らせることは前から決まっていたそうで「最初からそのつもりで投げていました」と言います。

「座らせて投げるのが久しぶり(昨年11月に自主練習で投げて以来)なので感覚のズレはあったけど、思った通りに投げられた球は多かったと思います」という感想で「球自体はまだまだですけど、投げている感じは悪くなかった。回数を重ねて練習していけば、イメージ通りの球がいくかなという感じです」と振り返りました。

特に緊張はなかったと、堂々とした投げっぷり。
特に緊張はなかったと、堂々とした投げっぷり。
視察した掛布監督も、この笑顔です。
視察した掛布監督も、この笑顔です。

早くバッターに投げたい?「早く投げて、プロの方のバッティングを見てみたい気もするけど、焦っても仕方がないので、いい状態を作ってそれをキープするのに努めていきたいです」。なかなか冷静に自分や環境を分析できていますね。

プルペンで視察した掛布監督が「スピンがきいている」と話していましたよ。「僕は真っすぐのスピードタイプじゃないので、たとえば140キロでも150キロに感じるのはスピンのきいた球をと。僕自身、そっちを目指してやっています」。なるほど。これまた冷静。ちなみに、スピンをきかせるには?「いろいろポイントがあって、投げるのはここ(と自分の腕を指差しました)ではなく、ここ(と今度は手首から先を差す)だと思うんですよ」

つまり、腕の力ではないと?「フォームで使える力が100で、リリースが40ではダメなんです。フォーム自体に力を入れるんじゃなくて、リリースに力を入れる意識でやっています。僕がバッターだとすると、ピッチャーがめっちゃ力んで投げてきたら予測できるなと。力感のないフォームから、思ったより伸びてくれば、多少甘く入っても打てないんじゃないかと思ったので」

本を読んで学んだこと

それは何かを見て?または誰かにアドバイスされて?「力の入れ具合ってのは、中学1年か2年の時に(気づいた)。そのころ力一杯投げていたんです。速いボールを投げようとして。でも打たれた。じゃあどうしたらいいかと考えて、自分で本などを読んでヒントを得ました。誰か一人の意見に頼るってことはないですね。いろんな本を読んで、自分に合う、合わないを見て参考にします」

投げ終わってコーチ陣から声をかけられ微笑む浜地投手。
投げ終わってコーチ陣から声をかけられ微笑む浜地投手。

たとえば、どんな本?「野村克也さんとか桑田真澄さんとか。野球だけじゃなく他のスポーツやトレーニング理論なども、です。家にたくさん本があったので読んでいましたね。父が結構、本を読むので本棚にいろいろあります」。子どもの頃から身近に本がある環境だと、割にすんなり読書へ入っていけるんですよね。それが習慣になれば続けてもいける。

プルペンで投球を見た掛布監督は、浜地投手にちて「まだまだこれから」と言いながらも「いいスピンのかかったボールを投げている。質のいいボール投げる。楽しみですよね。ほんと、きれいなストレートを投げるね」と期待値はアップした様子。久保投手コーチも「まだ半信半疑ですね。バランスが。でも理解できて、体で表現できるようになれば、おもしろい」とも話していました。なお浜地投手は、きょう17日もキャッチャーを座らせて50球投げたそうです。

ルーキー2投手も少しずつ前進!

最後に、まだピッチングを始めていないルーキー2人の近況も書いておきましょう。

ラケットを振る才木投手。17日からキャッチボールがメニューに入りました。
ラケットを振る才木投手。17日からキャッチボールがメニューに入りました。

まず浜地投手と同い年の才木投手。私が行っていた第3クールは、サブグラウンドで傾斜を使いながらテニスラケットの短いものを振ったり、ブルペンでネットピッチングをしたりでした。こういう反復練習で、体の使い方も「すごくよくなってきたと思います」と明るい表情だったのですが、きょう17日からは距離15メートルでのキャッチボール(30球)を始めたとのこと。ネットピッチングは並行して行っています。

また藤谷投手も第3クールまではネットピッチングと、キャッチボールの距離を少しずつ伸ばしているところでしたが、もうネットピッチングは卒業できたみたいですよ。キャッチボールを60メートルで20球、30メートルで15球、15メートルで10球という段階と聞きました。2人とも少しずつ前進していますね。第4クールにまた安芸へ行って、進み具合やコメントを聞いてきます。お待ちください。