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“災害時の健康”―野菜摂取が決め手― 野菜不足解消法の極意を提案します!

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

阪神・淡路大震災、東日本大震災、直近の熊本地震の教訓は、食料不足の中での「野菜の大切さ」です。被災時の健康のキーポイントは「野菜」が握っています。

大災害は消費者だけでなく、食料の供給者も困らせます。農業生産者は田畑が崩壊し出荷不可能。生産加工業者は工場や倉庫が破損し、交通網の寸断により原材料や包材不足などで商品の製造、供給に混乱が生じます。

そんなとき、行政や病院、高齢者施設などがわれ先に商品の供給を要請しますが、製造、供給も不可能で混乱状態に拍車がかかります。

食料が不足し、水道・電気・ガス等のインフラもストップ、そんな「普段の食事」が実現しにくい状況のとき消費者はどうすればよいのでしょうか。

大災害時の野菜の必要性と効用

大災害では、生命の危険という極限状態に陥り、恐怖とストレスに悩まされます。被災者が高齢者、病弱者ならなおさら食欲は失われ、救援物資はのどを通りません。飲まず食わずとなり、必要な栄養量が不足し、たちまち健康に異変をきたすことになります。また、被災食は主食に偏り、圧倒的に野菜不足に陥るために、健康維持が難しくなります。

阪神・淡路大震災の発生後、一番食べたかった食材名を一つ答えてもらったところ(1995年4月避難生活者9カ所270人)最も多かったのは「野菜類」でした(図1)。

図1 阪神・淡路大震災の避難所で被災者が最も食べたかった食品群

奥田和子著『震災下の食』NHK出版 1995.4.

図1
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避難生活者は、野菜不足のため体調を崩し風邪をひきやすくなり、40%が便秘になりました。そこで神戸市は配給食に野菜ジュース、カット野菜を付け加えました。

東日本大震災時、岩手県野田村役場の栄養士による調査では、避難所で便秘を訴えた人にサプリメントや野菜ジュースなどを配って対応した結果、便秘率が減少しました。

野菜ジュースをだしや水の代わりとして活用する極意とは

災害時には野菜が摂りにくい環境に陥りますが、今や仕方がないなどとのんきなことをいっている場合ではない事態です。事前の準備を“自力”で心掛けましょう。野菜の缶詰・ジュース・レトルト食品などを備蓄することをお薦めします。

今回は電子レンジ、カセットコンロなどを使って身近な食材と野菜ジュース缶を組み合わせて作った料理をご提案します。

ポイントは野菜ジュースが飲み物から「だし」「調味料の代役」に生まれ変わる点です。大災害時に備え、日常生活の中で是非お試しください。普段食としてもおいしく召し上がれます!(表1、写真1)

表1 野菜ジュースを使ったおいしさと栄養補給を工夫した献立

-野菜ジュース(使用量g)と調味料の出会い

表1
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写真1
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甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

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