「出会い系アプリ」が「出会い系サイト規制法」で規制されない理由

報道によれば、児童・青少年に対する性犯罪・福祉犯は、「出会い系サイト」ではなく「非出会い系サイト(コミュニティサイト)」や「出会い系アプリ」で発生する比率が多くなっているという。

警察庁によると、掲示板への投稿をきっかけに児童買春などの被害に遭った18歳未満の少年少女は2013年上半期だけで117人に上り、前年1年間の36人から3倍以上に急増した。下半期も相当数に上る可能性がある。

出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140128-00000053-mai-soci

出会い系サイトについては、児童・青少年に対する性犯罪・福祉犯の増加を理由としてインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(通称「出会い系サイト規制法」)が設けられて、事業者の届出制・児童の排除・児童への誘引行為の禁止が定められている。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一  児童 十八歳に満たない者をいう。 二  インターネット異性紹介事業 異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。

出典:インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律

お気づきだろうか、「異性紹介事業」という法律名からして、はなから、同性紹介事業は対象外としている。

さらに、ただの掲示板で異性が誘い合っていても1対1の通信でないので出会い系サイトには該当しない。

「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン 「相互に連絡することができるようにする」とは、サイト開設者が提供する、他人が書き込んだ「異性交際に関する情報」を閲覧した異性交際希望者(閲覧者)が当該情報を書き込んだ異性交際希望者(書込者)に返信することをきっかけとして閲覧者と書込者が相互に連絡することができるようになる 機能を利用することにより、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間で相互に一対一の連絡(サイト開設者が介在する場合を含みます。)ができるようにすることをいいます。 ○ したがって、「異性交際希望者」同士が電子メールや2ショット・チャット等の電気通信を利用して相互に連絡することができるようにする機能を備えていないサイトは「インターネット異性紹介事業」に該当しません。 ○ また、チャット等のうち公然性を有するものは、一対一の連絡ではないことから、「相互に連絡」には該当しません。

出典:「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン

また、「出会い系アプリ」については、アプリ上で電話番号やメールアドレスやIDを掲載しても、事業者が通信役務を提供しているとは言えないので、「出会い系サイト」に該当しないとされる。

(3)「相互に連絡することができること」の該当性(1の二の要件) 問 サイト開設者がいわゆる返信機能を提供しなくても、利用者が書き込みの中にメールアドレスを記載すれば、「相互に連絡することができる」ことになるのか。 (答) 利用者が書き込みの中に勝手にメールアドレスを記載しても、サイト開設者が「相互に連絡することができるようにする」役務を提供しているとは言えないことから、このようなサイトは「インターネット異性紹介事業」には該当しません。 問 サイト開設者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなければ書き込みそのものをできないようにしている掲示板等のサイトは、「相互に連絡することができる」ことになるのか。 (答) サイト開設者において、書込者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなければ書き込みそのものをできないようにし、書込者の連絡先を閲覧者が知ることができ、1対1で連絡することが可能であるものについては、「相互に連絡することができるようにする」役務を提供していることになります。ただし、書込者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなくとも書き込みが可能であり、「相互に連絡することができるようにする」役務を提供していない場合は「インターネット異性紹介事業」には該当しません。

出典:「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン

このように「出会い系サイト」を厳格に限定して、そこだけに限定したのは、制定当時、そういうサイトで、専ら女子児童が、男性から性犯罪・福祉犯・強盗などの被害に遭うことが多発したので、ピンポイント的に悪質な行為だけ規制したものだ。

国会会議録 第156国会衆議院青少年問題に関する特別委員会- 4号 平成15年05月07日 瀬川政府参考人   まず、専ら面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を扱うサイトについての規制ということを考えるべきじゃないかという御趣旨のお話があったかと思いますけれども、これは、実際に発生しました、例えば出会い系サイトを利用した児童買春事件のうち、実際に使ったサイトの構造が判明したものを分析した結果、児童買春事件の半数以上、五二%がこういった性的要素を特に強調していないサイトで発生をしているという事実がございます。一時の性的好奇心を満たすための交際を扱うサイトというふうに対象のサイトを限定した場合には、児童買春事件の被害から児童を保護するということすら十分にはできないのではないかというふうに考えているところでございます。

出典:国会会議録

そうであれば、被害が発生している場を次々と規制に加えていけば良さそうなものだが、出会い系サイト→掲示板・アプリと対象を拡大すると、結局はネット全体に対して警察が監視することになるので、反対が強く、現行法の出会い系サイトのみに限定された経緯がある。

性犯罪・福祉犯に接する弁護士からみれば、元々ザル法だった出会い系サイト規制法から、コミュニティサイト・出会い系アプリへと利用者が完全にシフトしてしまっていて、もはや出会い系サイトだけを規制する意味はないのではないかと考えている。