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「ナビスコカップ」を盛り上げるための私的改革案

小野寺俊明スポーツPRコンサルタント/スポーツ企画工房 代表取締役
ヤマザキナビスコカップ決勝の会場、国立競技場

「J1年間優勝」「天皇杯」と並んで日本国内の3大タイトルの一つ「Jリーグヤマザキナビスコカップ」。正式には「リーグカップ戦」で、商品名や会社名を使わないNHKでは「Jリーグカップ」と呼ばれるが、サポーターの間では「ナビスコカップ」の名称が定着している(ちなみに、同一企業の協賛で最も長く開催されたプロサッカーリーグの大会としてギネス世界記録に認定されている)。サッカーの母国・イングランドでも、「プレミアリーグ」「FAカップ」そして、リーグカップの「キャピタル・ワン・カップ」(キャピタル・ワンは金融会社、11-12シーズンまではカーリングカップ)と、日本同様に3つの国内タイトルがある。

ナビスコカップは1992年、Jリーグ開幕の1年前にJリーグのプレ大会として開催され、今年で21回目を迎える(1995年は未開催)が、この大会、「J1年間優勝」「天皇杯」に比べると少し影の薄いタイトルなのも事実である。まず、開催日が水曜日中心なこと。平日夜のゲームでは観客動員も期待できないし、アウェイのサポーターも見込めない。日程も日本代表の試合などで、J1が開催できないときに行われることが多い。そして優勝クラブは翌年の「スルガ銀行チャンピオンシップ」で、コパ・スダメリカーナ(南米サッカー連盟のカップ戦)優勝クラブと対戦。J1の1~3位と、天皇杯優勝クラブが出場するACL(AFCチャンピオンズリーグ)に比べると、注目度は低い。

そして、大会フォーマット。国際大会の影響を受け、頻繁に変更されているが、2009年からはACL出場の4クラブを除いたJ1・14クラブを2つのグループに分け、総当り1回戦のリーグ戦。各グループ上位2クラブの計4クラブと、ACL出場4クラブでホーム&アウェイのトーナメントを行い、決勝は国立競技場での一発勝負となっている。だが、リーグ戦で対戦した相手とすぐにナビスコカップで対戦することも多く、見る側の興味を削ぐことも多い。

そこで改革案(というほどのものでもないが)として提示したいのはJ2クラブの参加である。実はJ2ができた1999年から2001年までの3年間は、J1・J2のJリーグ全クラブが参加し、ホーム&アウェイのトーナメントで行われていた。これは真の意味でJリーグのカップ戦王者を決めるにふさわしい大会だった。現在では天皇杯でしか対戦がないJ1とJ2のクラブの対戦があり、目新しい対戦カードを見ることができた。1999年は当時J2のFC東京が神戸、市原(現・千葉)、横浜FMのJ1勢を撃破しベスト4に進出している。

しかし、日韓ワールドカップが開催された2002年から、ヤマザキナビスコカップはJ1だけの大会になってしまった。当時、J2は12クラブの4回戦総当たりで44試合と、「世界最多リーグ」と呼ばれるほど試合数が多く、カップ戦をスケジュールに組み込めなかったと聞くが、2009年には18クラブ3回戦総当たりで年間51試合も行われている(ちなみに1年は52週間)。それを考えれば、現在は22クラブ2回戦総当たりで42試合なので、ナビスコカップを組み込めなくはない。

改革案はカップ戦の王者を決める大会として、準決勝までホーム&アウェイのトーナメント。組み合わせは、ACL出場クラブはベスト16(3回戦)からの出場、残りのJ1・14クラブ、J2・22クラブを振り分ける。1・2回戦では最低12カードがJ1vs.J2となるように配置した。3~8月の各月1回の水曜日を当てて、1~3回戦を消化、9・10月で準々決勝、準決勝を行い、決勝は従来通り、11月に国立での一発勝負。

ナビスコカップトーナメント案
ナビスコカップトーナメント案

J2の22クラブが参加することで、大会に興味を持つ人の数も増えるし、露出する地方メディアも増える。ジャイアントキリングでJ2クラブが勝ち進めば、中央メディアが取り上げる機会も増えるだろう。また、来季からできる「J3」も将来的に組み込めば、さらに広がりが期待できる。そして、ナビスコ製品をサンプリングする会場も日本全国に広がるので、スポンサーにも喜ばれると思われる…。もちろん、会場を押さえる都合だったり、日程に関しては検討の余地はあるが、今よりは良い大会になると思うだが、いかがだろうか。

★Jリーグヤマザキナビスコカップ特集(J's GOAL)

★2013Jリーグヤマザキナビスコカップ 大会概要

スポーツPRコンサルタント/スポーツ企画工房 代表取締役

「スポーツPRコンサルタント」「スポーツWebサイトプロデュース」「スポーツライティング」を行う株式会社スポーツ企画工房代表取締役。スポーツ団体や選手、テレビ局のスポーツサイトを数多く立ち上げたほか、スポーツ団体やチームの運営・広報、SNSやWeb戦略のアドバイザーを務める。また、プロバスケットボール「bjリーグ」や卓球「Tリーグ」の設立に関わった。2006年から11年までは中央大学商学部客員講師としてスポーツビジネスを教えた。

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