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PTAは働く親の負担? なぜ、なかなか「任意」にならないのか

大塚玲子ライター
小学校に入ると「アレ」が……と心配している人も多いのでは?(写真:アフロ)

*負担になる3つの理由

この春、タレントの菊池桃子さんが、働く母親たちにとってPTA活動への参加が負担になっていることや、PTAが本来「任意」の活動であることを指摘して話題になりました。この件については、筆者もテレビ・新聞等で何度かコメントしていますが、ここに考えをまとめてみたいと思います。

まず、なぜ働く母親にとってPTA活動が負担になるのでしょうか?

主な要因は、以下の3つでしょう。

<1・集まるのが「平日日中」ばかりだから>

一番はこれでしょう。これは言うまでもなく、平日日中にお勤めの人にとって大きな負担です。「PTA活動のために有給休暇を使いきった」「パートを休んで収入が減った」などの嘆きの声は、実際よく聞かれます。

先生の都合(勤務時間内にPTA活動を終えてほしい)もあるので変えづらい場合もあるかもしれませんが、このままではPTAがお勤めの人から敬遠されるのは当然です。

なお、地方は都市部に比べ、すでにだいぶ共稼ぎ世帯の比率が高いため、「土曜や平日夜」を中心に活動するところが増えています。

<2・手間がかかるから>

仕事量が多いことや、手間がかかるわりに成果が小さい活動が多いことも、働く親にとって負担と感じられます(例・ベルマーク活動)。

昔は時間のある保護者が今よりも多かったので、PTA活動は「交流目的」という側面が強く、「費用対効果」はあまり重視されてこなかったのですが、時間がない昨今の保護者にとって、そのような活動は避けたいものです。

さらに、PTAの仕事量は昔と比べて増えています。世間では子どものことに手をかけるほど良い親とされるので、「子どものため」の活動であるPTA活動は、どうしても仕事がふくらんでいってしまうのです。一方で児童数・保護者数はどんどん減っていますから、保護者ひとり当たりの負担は昔よりだいぶ増しています。

<3・強制力がつよく働くから>

菊池桃子さんが指摘したのは、この部分でしょう。

ご本人の発言のとおり、PTAは本来「任意の活動」ですが(加入や活動を強制できる法的根拠は何もありません)、現状では「すべての者が参加するような雰囲気作りがなされて」います。つまり「全員、必ずやってね!」という強制力が大きく働いているのです(なお、この全員というのは保護者全員ではなく「母親」に限定されています)。

そのため、時間のない親はどうしても追い詰められてしまいます。

つい最近も、こんな話を聞きました。

「教育委員会の研修会に行かされたんですが、手術後すぐで自転車に乗れない人が、遠かったのにヨロヨロ歩いて来ました

「友人(保護者)が親善バレーボール大会に駆り出され、友達の結婚式に出席できず、披露宴から出席したと言っていました」

「本部役員の推薦状が配られたのですが、『自分で立候補しない人は、必ず他の人を推薦してください』と書いてありました。『そんなの無理です』と書いて提出しました」

「フルタイムで働いているのに、土曜日を丸一日拘束されて、しかも活動成果がほとんどなかったので、本当に腹が立ちました」

PTA活動が、できない人はできないといえる、またやりたくない人はやりたくないといえる「任意」のものになれば、じつはほとんどの問題は解決されます。

活動が平日日中だろうが、いくら仕事量が多かろうが、やりたい人がやる形なら、問題ないからです。

*「任意」でやるには、仕事量を絞る必要も

しかし「PTAは任意」ということを言うと、反発の声が上がることもあります。

多くの人は菊池桃子さんの発言を歓迎しましたが、ネットの一部では「PTA活動を任意にしたら、やる人がいなくなって大変だ!」という意見も見られました。

でも、それはどうでしょう。自主性に任せたら、本当に誰もやらないでしょうか?

そもそも、PTAがこんなに嫌われるのは、強制的にやらせているからです。

強制的にやらせている限り、みんな「自主的にやろう」という気持ちにはなりませんから、消極的になって、それでまた強制的にやらせる……という悪循環から抜け出すことができません

確かに、いまのPTA活動のまま「任意」を徹底したら、「人が足りなくなる」可能性はあると思います。これまでPTAは「強制」を前提にしてきたこともあり、仕事量がかなりふくらんでいるからです。ですからまず、これを絞り込んでいくことは必要でしょう。

いまのPTAのやり方や仕事量を前提にしていたら、いつまでたっても強制をやめられません。任意でやっていけるようなPTA活動に変えていく必要があります。

*負担に感じているのは専業主婦も同じ

なお、PTA活動を負担に感じているのは働く母親だけではありません

専業のお母さんたちは「外で働いていないから、活動をするのは当然」と見られ、PTAの仕事をしょいこみがちです。でもいまは、介護や病気など事情を抱えた人や、「本当は仕事を始めたい」と思っている人も多いのです。

そういう人たちも、PTAの仕事を押し付けられて、辛い思いをしていることが多々あります。

他方では、お父さんたちからも、よく「PTA会長を頼まれて軽い気持ちで引き受けたら、ものすごい仕事量で困っている」という声を耳にします。

PTAの仕事量を減らし、且つ「任意」性を確保すれば、働く母親ばかりでなく、父親、専業主婦・主夫などなど、みんな参加しやすいものになっていくでしょう。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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