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ひとり親世帯を支える「児童扶養手当」30年以上にわたる減額の歴史は変わったのか?

大塚玲子ライター
(写真:アフロ)

*2子目以降は今年度から増額に

8月。ひとり親の多くは、毎年この月になると「児童扶養手当」の受給継続手続きを行うために、役所を訪れます。

「児童扶養手当」とは、ひとり親世帯(母子家庭や父子家庭等)に支給される手当てのことです。金額は前年度の所得に応じ、10円単位でスライドします(所得制限を超える場合は0円、支給されません)。

近年知られつつあるとおり、この国におけるひとり親世帯の相対的貧困率は約55%と、先進国のなかで最悪レベルの状況にあります。児童扶養手当は、そんなひとり親世帯にとって、大変重要な生活の支えのひとつとなっています。

このような状況を受け、昨年秋、複数のNPOが多子のひとり親世帯に支給される児童扶養手当の増額を求めるキャンペーンを呼びかけました。結果、それまで一律5000円だった第2子の手当て月額が最大で10000円に、一律3000円だった第3子以降の手当が最大で6000円にアップしました。

まだ十分とは言いがたい金額ですが、過去30年以上にわたる減額の歴史から見れば、画期的なことではあるでしょう。

*第1子も微増?に見えるが…

一方で、第1子の手当て額も、この2年で微増しています。平成28年度現在、第1子の児童扶養手当の月額は9990~42330円です(所得に応じてスライド、制限額を超える場合は0円)。

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こちらは、ここ約10年の児童扶養手当支給額(第1子分)の推移をまとめた表です。

平成23~26年度は減額が続きましたが、平成27~28年度は増額に転じており、この10年をトータルで見ると、一部支給は計140円、全支給は計610円増えています。

ただし、この間に消費税率も上がっています。2014年、消費税が5→8%となり、3%上昇。この分を考えると、一部支給は約290円、全支給は1230円増えている必要があるのですが、実際の増額は、この半分程度。残念ながら、実質的には、増額しているとは言いがたいでしょう。

今後、ひとり親世帯の状況を改善するためには、離れて暮らす親が子どものために支払う「養育費」の支払い率を改善させるなどとともに、児童扶養手当についても、引き続きしっかりと守っていく必要があります。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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