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グアムの次は米本土―「ムスダン」から「KN-08」へ

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
パレードに登場した「KN-08]の改良型

北朝鮮は昨日の中距離弾道ミサイル「ムスダン」について「成功した」と発表した。

今朝の朝鮮中央放送によると、発射したミサイルは「中長距離戦略弾道ロケット火星―10号」であった。また、金正恩党委員長が発射を「参観した」ことも明らかとなった。

北朝鮮が西側のコードネームである「ムスダン」を「火星―10号」と明らかにしたのは今回が初めて。ちなみに北朝鮮はノドンを含めミサイルはすべて「火星」と呼称している。テポドンだけは「人工衛星」と称していることもあって「光明星」あるいは「銀河」との別称を用いている。

「弾道ロケットの最大距離を模擬し、高角発射体制で行われた」とされる「ムスダン」は「予定飛行軌道に沿って最大頂点高度1,413kmまで上昇し、400km前方の目標水域に正確に落弾した」と北朝鮮は主張している。北朝鮮が一連のミサイル発射で「高角発射」や「最頂点高度」まで具体的に明らかにしたのはこれも今回が初めてである。

防衛庁は「高度1千km」と昨日発表したが、北朝鮮の発表ではそれよりも400kmも上昇したことになる。地上から大気圏までは600km前後なので、どちらにせよ、ミサイルは大気圏外に突入し、再度大気圏に再突入したことになる。大気圏外からの弾頭の再突入には7千度前後の高熱に耐える技術が必要だが、北朝鮮はその技術を取得したことになる。

ミサイル発射を参観した金委員長は「太平洋作戦地帯の米国の奴らを全面的に、現実的に攻撃できる確実な能力を手にした」と述べたうえで「先制核能力攻撃を持続的に拡大強化し、多様な戦略攻撃兵器を引き続き研究開発しなければならない」と現場に立ち会った関係者らに直接指示していた。金委員長は5月の第7回党大会で核保有を宣言した際に核を先に使用しないことを宣言していた。

金委員長はまた今回「敵対勢力の常日頃の脅威から我が祖国と人民の安全を確固として担保しようとするなら我々も敵を常日頃脅かすことのできる強力な攻撃手段を持つことだ」と今後もミサイル開発及び発射を継続するよう指示した。

北朝鮮は2月23日の最高司令部の重大声明で朝鮮半島有事の際の第一次攻撃対象は韓国の青瓦台(大統領府)と韓国内の基地及び施設、第二次攻撃対象として「太平洋上の米軍基地と米本土である」と公言していた。そして、3月から韓国を標準に定めた500kmの弾道ミサイル、太平洋上の基地である在日米軍基地を標的にした射程1300kmの「ノドン」ミサイルの発射実験を行い、今回もう一つの太平洋上の米軍基地であるグアムを照準に定めた最大射程4000kmのムスダンの発射を行った。最高司令部の重大声明に基づけば、次は米本土を狙った長距離弾道ミサイル「KN-08」の番になる。「KN-08」も「ムスダン」と同様にNATOが付けたコードネームである。

金委員長が3月15日に「早い時期に核弾頭装着が可能なあらゆる種類の弾道ロケット(ミサイル)試験発射を断行せよ」と指示し、今回「ムスダン」の発射実験が成功したことで「KN-08」及び改良型の「KN-14」に取り掛かるのは時間の問題のようだ。

全長約18m、重量約60トン、弾頭重量約700kgの三段式長距離ミサイルで射程距離は「ムスダン」よりも若干長い。また、「ムスダン」同様に固定の発射台からではなく、16輪の中国製特殊車両(WS51200)を改造した自走式発射台から発射されるので、発射直前まで探知が難しいと言われている。

「KN-08」は2012年4月15日、平壌で開催された金日成主席の生誕100周年の軍事パレードでその存在が明らかとなったが、「ムスダン」同様にこれまで一度も北朝鮮は発射実験をしたことがない。

米本土を標的にした長距離弾道ミサイル「KN-08」の発射のXデーはいつか?発射は果たして成功するのか?それに米国はどう対応するのか?「5度目の核実験」同様に目が離せない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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