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過去最強の国連制裁の最中に平壌国際商品展覧会に参加する外国のリスト

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
今年5月に開催された北朝鮮の国際商品展覧会

国際社会から経済制裁を受けている真っただ中、北朝鮮は昨日、来月5日から8日まで国際見本市にあたる「秋季国際商品展覧会を平壌で開く」と発表していた。

「平壌国際商品展覧会」は年に2回行われる恒例行事で、春は5月に、秋は9月に開催される。スタート当初は春の1回だけだったが、2005年から秋も開催されることになった。秋季は今年で12回目だが、春はすでに19回も開いている。

北朝鮮の発表では、今年の秋季展覧会には外国からマレーシア、モンゴル、シンガポール、ベトナム、タイ、インドネシア、イラン、台湾、中国、ニュージランド、オーストラリア、ドイツ、イタリア、ロシア、キューバなど15か国からの参加が見込まれ、主催国の北朝鮮の企業を含めて「280余の企業が電子、機械、金属、運輸、医学、農業、軽工業などで生産された製品が展示される」とのことだ。

国連安保理は度重なる中止勧告を無視し、4度目の核実験(1月)と「衛星」と称する長距離弾道ミサイル「テポドン」の発射(2月)を強行した北朝鮮に対して今年3月に「過去20年で最強の経済制裁」(「国連決議2270」)を掛けている。国連加盟国に対して北朝鮮との経済交流は核とミサイルの開発資金に転用される恐れがあるとして、貿易の自粛を求める一方で、金融取引しないよう釘を刺し、国連制裁委員会が目を光らせている。

こうした事情から今年は開催不可能とみられていたが、何と参加国が昨年よりも3か国も増えているから意外だ。

昨年は、マレーシア、モンゴル、シンガポール、ベトナム、インドネシア、台湾、中国、ドイツ、スイス、ポーランド、イタリア、ルーマニアの12か国で、今年よりも3か国も少なかった。スイス、ポーランド、ルーマニアが抜けた分、イラン、ニュージランド、オーストラリア、ロシア、キューバの5か国が新たに加わっている。

ちなみに今年5月に開催された春の展覧会にはマレーシア、モンゴル、シンガポール、ベトナム、カンボジア、タイ、インドネシア、イラン、台湾、中国、ニュージランド、オーストラリア、ドイツ、ロシア、ルーマニア、イタリア、キューバの計17か国も参加していた。

調べてみると、3度目の核実験(2月)への懲罰として国連が3月に制裁決議(「2094」)を採択した2013年にもマレーシア、シンガポール、モンゴル、台湾、中国、ドイツ、ロシア、イタリア、キューバ、トルコの10か国が参加して国際商品展覧会が開催されていた。

この年は直前の8月にも日本海に面した経済特区の羅先で国際商品展示会が開かれたが、中国、ロシア、ドイツ、米国、台湾の5か国に加え、拉致問題絡みの制裁で北朝鮮にはモノを持ち込めない筈の日本の企業もどういう訳か参加していた。

また、金日成主席生誕100周年の4月に「テポドン」を発射した2012年にもマレーシア、台湾、中国、オーストラリア、ドイツ、ロシア、スイス、イタリア、英国、ポーランド、フランス、オランダの12か国が参加して展覧会が開かれている。

「テポドン」(4月)発射と2度目の核実験(5月)を行った2009年はどうか。

国連が4月に北朝鮮を非難する安保理議長声明を、6月に制裁決議(「1874号」)を採択したこの年も9月21日から24日まで開催され、中国、オランダ、ドイツ、イタリア、スウェーデン、フィンランド、英国、フランス、オーストリア、ポーランド、豪州、インドネシア、ベトナム、香港など14か国が参加していた。前年の2008年はシンガポール、インドネシア、中国、ロシア、英国、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、ポーランドの9か国と一ケタだったのに逆に増えているのだ。

米国や韓国は核とミサイル開発を断念させ、放棄させるには、北朝鮮を国際的に孤立させ、経済で干し挙げるのが近道であるとして各国に対して協調を求めている。

北朝鮮の商品展覧会への外国の参加が商談や投資を目的としたものか、あるいは平壌駐在の大使館が外交儀礼上、お付き合いしているだけのことか、定かではないが、どちらにしても「孤立していない」との北朝鮮の内外向けのPRに使われているのは間違いないようだ。

国連の制裁は北朝鮮に効いているのか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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