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新たな追加制裁で北朝鮮の核実験、ミサイル発射は止まるか!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金正恩委員長と習近平主席

北朝鮮問題を担当しているダニエル・ラッセル国務省東アジア太平洋担当次官補は28日、米上院外交委員会東アジア太平洋小委員会の聴聞会で1月6日の北朝鮮の核実験への制裁として国連安保理が3月に採択した制裁決議「2270号」の結果、この半年間で以下のような「成果」があったと報告した。

外交成果としては、国連加盟国193か国のうち現在までに75か国が北朝鮮を非難する声明を出し、そのうち数か国は予定されていた北朝鮮高官らの訪問や会談を取り消し、キャンセル、あるいは格下げなどを行った。バングラデシュとミャンマーの両国は(問題を起こした)北朝鮮外交官を追放した。

中国で開かれたG20でオバマ大統領が習近平主席と会談した際、制裁効果を高めるため中朝国境貿易と中国国内の金融機関の取り締まり及び高麗空港の運送手段の遮断、北朝鮮のハッカーが中国の領土を利用しないような措置を取るよう求めた。

この他に、米国は韓国と共に北朝鮮の地盤であるアフリカ諸国に対して外交攻勢を掛け、北朝鮮と距離を置くよう働きかけると同時に北朝鮮の伝統的友好国であるイランやキューバと国交を回復することで国際的包囲網を徐々に狭めている。

経済的成果としては▲北朝鮮の高麗航空の外国就航縮小▲韓国政府による開城工業団地の閉鎖▲台湾の北朝鮮産石炭輸入の禁止▲マルタ政府の北朝鮮労働者らへのビザ延長中断などの実例を挙げ、「成果」を誇示した。

米国は今後、北朝鮮が制裁決議「2270号」を無視し、9月9日に今年2度目の核実験を強行したことから更なる圧力、制裁手段として、全世界の米公館に対して駐在国の政府が北朝鮮の核実験を糾弾し、外交的、経済的関係の格下げを働きかけることにしている。現在、安保理が北朝鮮に制裁として適応している国連憲章第7章「第41条」には兵力の使用を伴わない制裁措置、即ち、経済制裁のほか、外交関係の断絶も含まれている。

追加の経済制裁措置としては、北朝鮮の出稼ぎ労働者が得る収入が大量破壊兵器の資金に転用されるのを防ぐため、北朝鮮労働者を受け入れている国々に対してビザを発給しないよう働きかける方針だ。

(参考資料:不気味な北朝鮮外相の「新たな攻撃」発言

特に、米国が全力を挙げているのが、庶民生活を目的とした石炭や鉄、鉄鉱石の輸出の許可を取り消し、全面的に遮断することだ。

北朝鮮の輸出品の多くは対中向けで、中でも石炭輸出は対中輸出の3分の1を占め、年間10億ドルの収入を上げている。核やミサイル開発資金用でなく、民生目的ならば許可されている。

実際に、今年8月、中国は北朝鮮から246万5千トン、金額にして1億1300万ドルの石炭を輸入している。昨年の同期よりも35%の増で、制裁が科された今年4月からは60%も増えている。鉄鉱石も同様で、4月の11万500トンから8月は19万7000トンと大幅に増加している。これが「抜け穴」となっていることから米国は中国を説得し、新たな決議に盛り込む考えだ。

経済制裁を徹底させるには、中国の協力が不可欠であることからオバマ政権は中国が同調せざるを得ないようプレッシャーを掛けることにしている。すでに丹東鴻祥実業発展と同グループの代表や社員など4人を制裁対象に指定し、米国内の資産を凍結したことからも明らかだ。

(参考資料:中国が北朝鮮を突き放せない5つの理由

同じ聴聞会の証言に立った国務省のダニエル・フリード制裁担当調整官は「中国企業に対して追加的調査を行う」とすでに中国企業への追加措置を予告している。「国家が企業を制裁することに制限はない。証拠が上がれば、制裁を科す」と、躊躇わない考えだ。

米国の狙いは中国が自ら進んで北朝鮮と取引する自国の企業への取り締まりを強化することにある。また、中国企業が自ら危険を感じ、自主的に取引を中止することにある。

中国が米国及び日韓に足並みを揃え、北朝鮮に対する圧力と制裁を強化すれば、北朝鮮は白旗を挙げて、核とミサイル開発を断念、放棄し、交渉の場に出て来るとの米国の抑止、圧力、対話の3段階対北政策が功を奏すかどうかは、中国がカギを握っているようだ。

国連安保理がどのような追加制裁決議を採択するのか、その日は近づいている。

(参考資料: 国連安保理が追加制裁すれば、初のICBM発射か、6度目の核実験か

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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