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朴槿恵大統領の命運を決するか? 注目される12日のデモ!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
追い込まれた朴槿恵大統領

韓国の世論調査期間「韓国ギャラップ」が11日、発表した調査(8―10日)結果によると、朴槿恵大統領の支持率は、11月4日の会見で謝罪したにもかかわらず、1%も上昇せず、前回同様に過去最低の5%のままだった。

(参考資料:朴大統領の運命はどうなる!悲惨な末路を辿った韓国の歴代大統領

朴大統領は先の謝罪会見で「崔順実スキャンダル」の「全責任が自分にある」こと、「必要ならば検察の捜査を受ける」用意があることを表明する一方で、内閣と大統領府の人事を一新し、総理には革新系の盧武鉉政権当時の副総理を、大統領秘書室長にも同じく革新系の金大中政権の元秘書室長を起用するなど事態の収拾を図ったが、どうやら国民には受け入れられなかったようだ。

衝撃的なのは、前回1%あった若い層(20代)の支持率がついにゼロとなったことだ。また、野党系の地盤である全羅道では0%と衝撃的な結果が出た。さらに、最低でも30%はあった支持基盤の高年層(60代以上)の支持率も13%とほとんど回復していないこともわかった。

大統領就任時の42%から50%を超え、一時は67%まで上昇したこともある支持率の一桁台への急落は朴大統領が国民から完全に見放され、レームダック(死に体)に陥っていることを端的に表している。

(参考資料:下降線をたどる朴槿恵大統領の支持率 依然浮上せず

朴大統領が今後、持ちこたえられるかどうかは、二度目の記者会見後の支持率が回復するかどうか、週末の土曜(12日)に予定されているデモの動員数が前回(5日)の20万人を下回るかにかかっているが、支持率が回復しなかったことで、朴大統領はますます苦しい立場に追い込まれたようだ。支持率の低迷に加え、朴大統領の退陣を要求する角界各層の動きがさらに活発になっていることも朴大統領にとっては頭痛の種だ。

市民団体から社会団体、大学、文化・芸術界、そして宗教界にいたるまで幅広い層が朴大統領に下野(辞任)を求めて時局宣言(声明)を次々と発表している。日本の東大にあたるソウル大では700人以上教授が連名で朴大統領に特別検察官による調査と救国中立内閣の受け入れを要求する声明を出した。また、教授らの動きに触発されたのか、崔順実容疑者の娘の不正入学で問題になった梨花女子大学などをはじめ全国の大学で学生会が声明文を出し、小規模ながら退陣集会を開いている。

宗教界ではキリスト教、仏教、天道教など5つの教団が「朴槿恵退陣5大宗教団体運営本部」を発足させ、信者らに12日のデモへの参加を呼び掛けている。

注目すべきは、市民団体や労働団体が中心となって行われる12日の集会や蝋燭デモには前回は見送った野党3党がそろって参加を決めたことだ。当初主催者側は前回の倍以上の50万人の参加を見込んでいたが、野党がこぞって参加を決めたことで最高で100万人近くに膨れ上がるものと予測されている。

過去10年間では2008年に米国からの狂牛病輸入をめぐって70万人規模のデモがあったが、今回はそれを上回ることになるかもしれない。こうしたことから一部には全斗煥軍事政権に抵抗して発生した1987年の民主化デモが再現されるのではとの見方すら出ている。

さらに、先週土曜(5日)のデモはソウルの光化門通りを20万人(主催者発表)の一般市民で埋め尽くされたが、今回はこれに労働組合「民主労組」に属する20万人の労働者と野党の党員、サポーターらが加わることから前回よりもはるかに強力なデモになるとの見方が強い。

過去2回のデモはいずれも、大統領官邸(青瓦台)に向けての行進を自粛し、平和デモに徹したが、今回はすでに民主労組は「朴大統領の退陣を求めるデモなので、青瓦台に向かわなくては意味がない」として警察に大統領官邸(青瓦台)への行進の許可を求めている。

許可されれば、大統領官邸の200メートルまでの行進が可能となるが。警察は主要道路上での集会や行進は許可しても、デモ隊の青瓦台への行進は許可しない方針で、散水車を待機させ、青瓦台への接近を阻止する構えだ。デモ隊と警察の対応次第によって衝突、流血という不測の事態も予想される。

朴槿恵大統領を「植物大統領」と揶揄している第二野党「国民の党」の前代表で、次期大統領候補一人である安哲秀議員はソウル市長と会談した後、いち早く12日のデモへの合流を表明する一方で、朴大統領に退陣を求める署名運動も展開している。朴大統領が退陣するまで署名運動を止めないと強硬姿勢を崩していない。

一方、朴大統領の弾劾や退陣には慎重な姿勢を貫いていた野党第一党の「共に民主党」も朴大統領が三つの提案(特別検察官による調査と挙国中立内閣の樹立、それに国会での合意で任命された総理への権限譲渡)を飲まないことからデモに合流することになったが、それでも朴大統領が翻意しない場合、国会の場でも弾劾、下野を求める方針を固めている。

野党は今のところ、労働組合主催の集会には出席せず、その後の蝋燭デモだけに参加するようだが、国会で多数の議席を占める野党陣営の合流により朴大統領は一層窮地に追い込まれることになりそうだ。

任期途中で退陣(辞任)すれば、汚名を残すだけでなく、今回のスキャンダル絡みで逮捕される恐れがあるだけに朴大統領としては踏ん張りたいところだが、それもこれも12日のデモの行方にかかっているようだ。

(参考資料:「死に体」の朴大統領 弾劾か?下野か?居座りか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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