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韓国特殊部隊の「金正恩暗殺作戦」に米特殊部隊も合流

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国特殊部隊の水中からの潜入訓練

米韓連合軍は朝鮮半島有事が差し迫れば、先制攻撃を掛け、北朝鮮を全滅させる「5015作戦」を遂行することにしている。この「5015作戦」の核心の一つが、「斬首作戦」である。

「斬首作戦」とは特殊部隊が平壌に潜入し、北朝鮮権力指導部を襲撃し、排除することが目的だ。ずばり、北朝鮮で統帥権を握っている最高司令官である金正恩委員長を抹殺することにある。

(参考資料:韓国映画「実尾島事件」は再現されるか 「金正恩暗殺部隊」派遣の可能性

この「斬首作戦」の存在について韓国軍は否定してない。韓国国防研究院のプ・ヒョンウク国防戦略室長は「北朝鮮指導部は都市が核兵器で攻撃を受けるよりも、そうした報復(斬首作戦)を脅威と考えている」(2015年8月27日)と述べていた。そして、この作戦を遂行するため韓国軍は陸軍特殊戦司令部(特戦司)を中心に年内、早ければ上半期にも特殊部隊が創設することにしている。

本来は、2年後の2019年の創設を予定していたが、北朝鮮が核・ミサイル能力を向上させていること、それに伴い朝鮮半島有事が切迫しつつあること、さらに北朝鮮が昨年、人民武力部作戦総局(第525部隊)傘下に特殊作戦大隊を編成し、金委員長の視察の下、11月に韓国大統領府(青瓦台)への奇襲攻撃訓練を実施したことから創設を早めたようだ。

(参考資料:仁義なき「金正恩斬首作戦」VS「朴槿恵除去作戦」

新たに創設される特殊任務旅団は当初は5千人規模とみられていたが、実際には1千から2千人規模となる見込みだ。少数先鋭となったことと関係があるのか定かではないが、新たに創設される韓国特殊部隊の「金正恩除去」任務に米特殊部隊も合流することになったとの情報が駆け巡っている。韓国経済紙「毎日経済」が本日(1月8日付)、「金正恩除去任務に米特殊戦部隊も参加する」と報じたことによる。

同紙がその根拠として挙げたのが米軍将校教育用の「戦略ダイジェスト」と題する資料でそこには「駐韓米特殊戦司令部は新たな指揮権及び合意を確保し、朝鮮半島での米特殊戦部隊の態勢、任務、指揮を改善し、韓国とのパートナー関係を確立した」と書かれてあった。また資料には「朝鮮半島で固有の連合特殊戦能力を使用できるという点で米軍及び国家指導者に北朝鮮の非対称脅威を抑止、撃破できる戦略的選択権を提供できる」と記されているとのことである。

韓国の特殊部隊、特殊任務旅団は既存の特戦団1個旅団を軸に編成されるが、そのモデルとなるのが米特殊部隊であることは言うまでもない。当然、指導、訓練から、実戦段階でも行動を共にするのは十分に予測されていたことだが、作戦遂行の際の指揮は韓国特戦団司令官が執り、米特殊部隊は韓国軍の指揮下に入るとのことだ。

昨年の米韓合同軍事演習には米陸軍第(デルタフォース)、第19特殊戦団、米陸軍第75レンジャー連隊、第353空軍特殊作戦団、第1特戦団(ネイビーシールズ、1,3,5,7チーム)など1千人前後の特殊部隊が送り込まれていた。米空軍のMC-130J支援機が投入され、最精鋭の空挺部隊をパラシュートで降下させ「敵地」深く侵入させる訓練などが行われていた。

米特殊部隊は空挺降下による強襲や敵の後方攪乱、爆破工作などを主な任務とし、敵後方での任務にあたるための縦深偵察小隊や特殊訓練を施された水中工作員も有している。敵地、敵部隊の偵察・斥候、正規部隊の先導といった突入任務の他に空挺部隊の降下地点の選定誘導、爆撃機や攻撃機の爆撃誘導などの任務も担う。1990年のパナマ侵攻の際にノリエガ政権を短期間で崩壊させ、パナマ全土を掌握するなどその威力をまざまざと見せつけた。

陸軍第75レンジャー連隊など米特殊部隊はゲリラ戦を得意とする世界最高レベルの精鋭部隊である。特にネイビーシールズは「人狩りマシン」.で知られ、テロ組織の幹部を追跡し空から急襲する。2011年にイスラマバード郊外のアボタバードにある邸宅でビン・ラーディンを殺害したことでその名を世界に知らしめている。 米陸軍1特殊戦団のデルタフォースはイラクでイスラム国(ISIS)に対する掃討作戦を行っている部隊として知られている。

創設される韓国の特殊任務旅団はレンジャー部隊、デルタフォース、ネイビーシールズ、グリーンベレーなどと訓練回数を増やし、特殊戦能力を高めることにしているが、それだけに今春の米韓合同軍事演習が注目される。

(参考資料:韓国特殊部隊による「金正恩暗殺」は可能か

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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