韓国大統領候補全員が日韓合意見直し、少女像撤去には反対

ソウルの日本大使館前に設置されている少女像(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

釜山の日本領事館前に置かれた少女像問題への対応をめぐって日韓に外交摩擦が起きているが、国会で弾劾され、死に体となった朴槿恵政権にはもはや収拾、解決する余力はない。

(参考資料:朴槿恵大統領VS特別検察官 大統領の犯罪を立証できるか

朴大統領の弾劾の正否を審議している憲法裁判所の判決が早ければ3月には出ると予想されているが、仮に罷免されれば、5月中に大統領選挙が行われる。そうなれば、この問題は次の大統領、「ポスト朴」の政権に委ねられる。

では、大統領選挙への出馬が取り沙汰されている与野党の有力候補らは慰安婦問題に関する日韓合意をどうみているのか?

現在、大統領候補として名前が挙がっているのは、与党・保守系では潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長を筆頭に呉世勲(オ・セフン)前ソウル市長、元喜龍(ウォン・ヒリョン)済州道知事、南景弼(ナム・ギョンピル)京畿道知事、それに与党「セヌリ党」を離脱し、改革保守新党「正しい政党」をつくった劉承敏(ユ・スンミン)議員の5人。

世論調査機関「リアルメーター」が9日に発表した最新調査での支持率の低い順(大統領になる可能性が低い順)からみると;

元喜龍・済州道知事(0.4%)は「真の謝罪と追加協議が必要」、南景弼・京畿度知事(1.1%)も「真の謝罪が先行されるべきで、再交渉すべき」と、二人とも再交渉の前に正式な謝罪を要求するとの立場だ。また、与党系候補では3番手に付けている呉世勲・前ソウル市長(2.2%)も「再交渉すべき」との立場だが、2番手の劉承敏・議員(3.4%)に至っては「(日韓合意は)間違った合意で、売国行為である」と最も辛辣で、与党・保守系では最も強硬な立場を貫いている。

野党候補への対抗馬として本命視されている潘基文前国連事務総長(21.5%)は朴槿恵大統領への昨年の新年メッセージでは「(日韓合意)という(大統領の)正しい英断に対しては歴史が評価するだろう」と称えていた。ところが、韓国世論からの反発に直面するや国連本部を訪れた慰安婦との面会(3月11日)の席で一転「日韓両国の問題解決に向けた努力を評価したわけで、合意内容そのものを歓迎したわけではない」と前言を翻してしまった。

「釜山少女像撤去騒動」後の世論調査の結果、「日韓合意反対」が6割に上っていることから潘基文候補も「再交渉派」に転じたと言われているが、明日(12日)帰国すれば、遅かれ早かれ、日韓合意や少女像の撤去問題をめぐる考えがわかるだろう。

一方、野党側も、最有力候補の文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」前代表を先頭に朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長、安熙正(アン・フィジョン)忠清南道知事、李在明(イ・ジェミョン)京畿道城南市長、そして、第二野党「国民の党」を率いる安哲秀(アン・チョルス)前代表の5人が大統領の座を競っている。これまた支持率の低い順から見ると;

朴槿恵大統領弾劾運動の先頭に立った朴元淳・ソウル市長(4.3%)は「(日韓合意は)国民から弾劾された政策で、再交渉すべき」と主張し、安熙正・忠清南道知事(5.0%)も「日本はちゃんと謝罪していない」として、原点に戻って再交渉すべきとコメントしている。

一時は最有力候補の一人として人気を集めていた安哲秀・「国民の党」前代表(6.5%)は「破棄」を主張しており、大統領選挙のダークホースとみられている「韓国のトランプ」こと李在明・城南知事(12.0%)も同じく「破棄、再度交渉」の立場だ。

(参考資料:次期大統領候補「韓国のトランプ」の支持率がソウルではトップ!

現状では大統領の座に一番近いと言われている本命の文在寅・「共に民主党」前代表(26.8%)は自身のフェイスブックで「日本は大使や総領事を召喚し、通貨スワップ協定再交渉を中断するなど強硬な措置を取っている、一体全体、我が政府は何の合意を交わしたのか」と怒りを露わにし、合意見直しと新たな交渉を求めていた。

与野党のどの候補も少女像の撤去には一致して反対しているが、「共に民主党」の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表や「国民の党」の黄柱洪議員らが賛同した「10億円返却」については今のところ何の反応も見せてない。

禹相虎・院内代表は「安倍総理は10億円払ったので、韓国は誠意を見せろと言っている。振込詐欺にあったようなものだと言っているのもいる。それなのに韓国外相は何一つ反論もできない。これほどの屈辱はない。10億円を日本に返そう。10億円のため国民は辱めを受けるのか。一刻も早く返そう」と呼びかけ、これに黄柱洪議員が「屈辱的だ。10億円を直ちに返却して、合意の無効化を宣言し、再交渉しよう」と同調していた。

ちなみに朴槿恵政権が決めた高高度ミサイル防御システム(THAAD)については与党候補が全員賛成。一方、野党では文在寅候補と安哲秀候補が「次の政権に委ね、検討すべき」、安熙正候補も「国益を優先して対応すべき」と必ずしも反対の立場ではないが、李在明候補と朴元淳候補は配備に反対している。

「米韓の合意」と「日韓の合意」への対応の違いが浮き彫りとなった。

(参考資料:韓国大統領選挙は世論調査では「文在寅」と「潘基文」の一騎打ちの様相

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~2015年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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