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今度の北朝鮮の核実験は連発! これが最後!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米国が1953年4月にネバタ実験場で行った核実験(23kt)

北朝鮮が近々、核実験を強行するようだ。

米FOXニュースが3月23日に複数の米政府当局者の話として、北朝鮮が北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場で「数日以内に新たな核実験を実施する可能性がある」と伝えたのに続き、米CNNテレビも翌日(24日)、複数の米政府当局者から「北朝鮮が6回目の核実験の準備を終えたことを示す具体的な情報を得た」と伝えた。

核実験の根拠は 豊渓里の核実験場で数週間続いていた車両や人、装置の活発な動きや坑道2本の入り口での掘削作業などが止まったことにある。3月7日に撮影された商業用衛星写真では坑道の掘削がまだ行われていた。米当局者らは新たな衛星画像の分析の結果、これは過去の核実験の直前に見られた活動パターンの変化と同様で、最終段階の準備が完了したことを示唆していると分析している。また、金正恩委員長が3月10日に飛行便で核実験場を視察していたことも偵察衛星で確認されている。

韓国国防部もまた24日、「北朝鮮は金正恩氏の命令が下されれば、数時間内に核実験を実施できる状況」として、「韓米合同で核関連施設を監視している」ことを認めていた。韓民求国防長官に至ってはすでに16日の国会答弁で「金正恩の決心さえあれば、いつでも北朝鮮は核実験を行える状態を維持している」と発言していた。

FOXによると、米国は北朝鮮の核実験に備え、偵察機「WC―135」を沖縄の嘉手納基地に急派したようだ。この核探知偵察機は昨年1月と9月の2度にわたる核実験の際にも嘉手納基地から発進し、日本海近海で大気中の放射性物質の採取を試みていた。

米韓軍当局は豊渓里の核実験場の2番(西側)と3番(南側)坑道の2か所のどちらかで核実験が行われるものと分析しているが、1回目の核実験(2006年)が1番(東側)坑道で行われた以外は、2回(2009年)から5回目(2016年)はいずれも2番坑道で実施されていた。南側の3番坑道は一度も使われたことがない。

米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は地下800メートルの場所で実施された前回(5回目)の爆発力を過去最大の17.8キロトン(1キロトン=TNT爆薬1千トンの威力)と推定していたが、今回は地形からして10倍以上の威力を持つ核実験が可能との分析を発表している。最大で282ktの爆発力にも耐えられるとみている。これが事実ならば、北朝鮮は二つの坑道を利用して、連続的に核爆弾を行う可能性も考えられる。

北朝鮮外務省傘下の米研究所のリ・ヨンピル局長は昨年10月、米NBCテレビとのインタビューで「我々は6回、7回、8回と核実験をできる」と豪語していた。もしかすると、パキスタンやインドのように今回は連続して行うこともあり得なくもない。

パキスタンは1998年5月28日、30日と2日にかけて計6回核実験を行っていた。インドに至っては1998年5月11日に3回、1日置いて、13日に2回同時に複数の実験を行ったが、11日の3回の実験の一つが水爆実験だったとされている。

北朝鮮は1回目と2回目はプルトニウムを使った実験だった。3回目(2013年)はウラン型爆弾の核実験が行われたとみられているが、この3度目の核実験が何の実験だったのか今もって不明のままだ。

昨年1月の4度目の核実験は「水爆実験を行った」と発表している。これに対して米韓軍当局は水爆にしては爆発規模が6キロトンと小さかったことから水爆の前段階であるブースト型分裂弾(強化原爆)の実験とみなしている。

(参考資料:北朝鮮の「水爆実験」をめぐる5つの謎)

4度目の核実験は北朝鮮が自ら認めているように「試験的用水素爆弾の実験」であった。試験的ならば、まだ完成しておらず、未完のままである。従って、再度の水爆実験もあり得る。成功すれば、威力は100キロトンとみられる。

過去に水爆を実験した国は米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドの6か国だが、米国は原爆から7年後、ロシアは6年後、英国は5年後、フランスは6年後、そして中国も1964年の初の原爆実験から3年後の67年に水爆実験を行っている。北朝鮮は最初の原爆実験からすでに11年目になる。他の原爆実験国ができて北朝鮮だけが例外ということにはならない。

また、昨年9月の5度目の核実験については「核弾頭の爆発実験を行った」と北朝鮮は発表していた。

(参考資料:韓国情報当局がシミュレーションした「朝鮮人民軍EMP(電磁波)攻撃シナリオ」)

核実験を5回以上行った国は、米国、ロシア、英国、フランス、中国などですべて5回の核実験で核兵器の小型化を成功させている。ちなみに米国は1948年4月30日の5度目の核実験で高濃縮ウランによる小型化(49キロトン)を実現させている。

北朝鮮が連続して核実験を行うならば、その狙いの一つは、米国を標的にした長距離弾道核ミサイルの完成を急いでいること、もう一つは、「これで核実験は終わった。今後はやらない」と終結宣言をして米国を交渉の場に誘い込むことにあるようだ。

米朝協議や6か国協議の場で「これ以上増やさない。これ以上改良しない、絶対に外に搬出しない」との3つの条件をカードに交渉に持ち込み、核保有を認知させるのが北朝鮮の狙いのようだが、北朝鮮の思惑通り、事が運ぶ保障はない。逆に、米国の先制攻撃を誘発するリスクが一段と高まることになるだろう。

(参考資料:北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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