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「政治感情」と受け皿としての野党

西田亮介社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

最近、内閣支持率の急落と、賛否の逆転が話題になっている。

ここに来て野党が活況づいているように見える。ようやく、自分たちの出番が来たかのように。

筆者の認識は、政治に内外の競争に基づく「緊張感」があったほうがよい、もっとも強力な緊張感は、実際に政権担当能力があると「有権者が感じられる」オルタナティブの存在によってもたらされるというものである。

ここで重要なのは、野党自身が「政権担当能力がある」と主張することではなく、有権者が政権担当能力があると認識できる、ということである。そこには信頼や実績、政策提言などの合理的な側面と、必ずしも合理的とは限らない情緒的側面が同居している。

果たして、有権者は、どのように政府与党と、オルタナティブとしての野党を認識しているのだろうか。数ある世論調査の結果でも、毎日新聞社の政治感情に関する質問項目を導入した世論調査が興味深い。

毎日新聞世論調査:内閣支持率急落、政治感情の変化鮮明に ポジティブ層が「反安倍」シフト- 毎日新聞

http://mainichi.jp/feature/news/20150722mog00m010003000c.html

この政治感情に関する項目は、2014年の衆院選における毎日新聞社と筆者によるネット選挙の共同研究・報道の際にも導入した。

2014 衆院選:イメージ政治の時代――毎日新聞×立命館大「インターネットと政治」共同研究(その1)- 毎日新聞

http://senkyo.mainichi.jp/47shu/analyze/01.html

このときは、有権者の傾向は、「現在の政治に対してネガティブな感情を持つものの、現内閣支持」という一見、捻れたものであった。政局に対していら立ちを感じるものの、それでも野党が受け皿になりうる存在とは多くの有権者はみなしていないと見ることができた。

ところが、今回は有権者の趨勢が「現在の政治に対してネガティブな感情を持ち、現内閣不支持」という分かりやすい状態に舵を切りつつある。筆者は合理的な解が見えにくく、また生活主題とも縁遠い安保法制はサイレントマジョリティにとっては、態度表明しにくい主題なのではないかと述べたが、もしかしたらそうでもないのかもしれない。

安保法制に態度表明する難しさ(西田亮介)- Y!ニュース

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150717-00047607/

ただし、現状では野党に対する感情の調査は見当たらないように見える。そのため、果たしてこの状況を有権者がどのように認識しているのかは明確には分からない。

同様の政治感情について、野党についても尋ねてみればなお面白いと思うのだが、どうか。

社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

博士(政策・メディア)。専門は社会学。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授、東京工業大学准教授等を経て2024年日本大学に着任。『メディアと自民党』『情報武装する政治』『コロナ危機の社会学』『ネット選挙』『無業社会』(工藤啓氏と共著)など著書多数。省庁、地方自治体、業界団体等で広報関係の有識者会議等を構成。偽情報対策や放送政策も詳しい。10年以上各種コメンテーターを務める。

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