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お正月休みも部活動? 教員の負担感 保護者には伝わっていない

内田良名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教授

■元旦から部活動 「悲しい」

2015年が始まった。始まったとはいっても、いまはお正月「休み」である。それにもかかわらず、ツイッター上では、元旦から部活動があるとの、生徒たちのつぶやきが、多数みられる。なかには、「悲しい」「まじふざけてる」といった文句までも・・・

2日前の記事「部活動 先生も生徒も 本音は『休みたい』」では、教員も生徒も、運動部の「現実」の活動日数が「理想」よりも多くなっていることを指摘した。SNS上でさまざまな反応をもらうなかに、「保護者」はこの事態をどう受けとめているのだろうかという声が多くあった。

保護者と教員の間の認識のズレについては、いまや一躍有名になったブログ「公立中学校 部活動の顧問制度は絶対に違法だ!!」でも、たびたび紹介されている【注1】。

今回この記事では、そうしたズレの実態を、一つの調査結果から照らし出してみたい。

■伝わらない負担感の大きさ

神奈川県で中学校と高校の運動部活動に関して実施された調査で【注2】、運動部活動指導のあり方について、教員と保護者に同一の質問がされている。

その質問の中で、教員と保護者の間の大きなズレとして目立つのが、「顧問教員の負担が大きすぎる」かについての認識である。

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「そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そう思わない」の選択肢で、教員の回答は「そう思う」だけでも、65.0%に達する。他方で、保護者の方は、中学生保護者が15.0%、高校生保護者が16.9%である。教員とのギャップの大きさに驚かされる。

保護者が思っているよりはるかに、教員は運動部活動指導を大きな負担と感じている。言い方を換えれば、教員の負担感は、保護者にはぜんぜん伝わっていないのである。

■教員と保護者の間の溝

スポーツジャーナリストの谷口輝世子氏は、アメリカでは子どものスポーツ活動のために、保護者が指導者とともにいかに合意をとっていくかが重要な課題(ガイドラインの作成等)になっているという(詳細はこちら)。

調査から見えてくるのは、教員と保護者の間の深い溝である。その溝を埋めることが、「悲しい」とつぶやく子どもの現在に切り込む手がかりとなるのではないだろうか。

注1:部活動問題に関して、教員内部から問題が提起されている。運営者は真由子さん@mayuko4460。

注2:神奈川県教育委員会「中学校・高等学校生徒のスポーツ活動に関する調査報告書」。2007年の6月から7月にかけて実施。神奈川県内中学校、高等学校に在籍する生徒とその保護者、神奈川県内中学校、高等学校に在職する教員などが対象。調査の詳細は、こちら

名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教授

学校リスク(校則、スポーツ傷害、組み体操事故、体罰、自殺、2分の1成人式、教員の部活動負担・長時間労働など)の事例やデータを収集し、隠れた実態を明らかにすべく、研究をおこなっています。また啓発活動として、教員研修等の場において直接に情報を提供しています。専門は教育社会学。博士(教育学)。ヤフーオーサーアワード2015受賞。消費者庁消費者安全調査委員会専門委員。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)、『学校ハラスメント』(朝日新聞出版)など。■依頼等のご連絡はこちら:dada(at)dadala.net

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