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【箱根駅伝を陰で支える「白バイ隊員」の凄さの秘密とは!?】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
全国白バイ大会安全運転競技大会

正月の恒例行事でもある「箱根駅伝」。家族でお節を囲みながらテレビ中継を楽しんでいる方も多いと思います。東京大手町から箱根の芦ノ湖までの計217キロを往復2日間かけて10人の選手でタスキをつなぐ、90年以上の伝統を誇る駅伝競技大会です。

出場大学を代表する選手たちが熱い戦いを繰り広げる中、これを支える縁の下の力持ちとも言える存在が白バイ隊員です。テレビ中継の合間にチラッと映る白バイ隊員ですが、彼らは一体どんな人なのか興味はありませんか。今回は箱根駅伝の陰の主役である白バイ隊員の実像に迫ってみます。

白バイ隊員とひと口に言っても、いろいろな所属があります。所轄の交通課や高速機動隊、要人警護を任務とする皇宮警察、そして交通機動隊などがあり、任務のテリトリーや性格も異なります。

白バイ隊員になるためには、まず警察学校を出てから白バイ隊員になるために必要な免許を取ります。いわゆる「青免」というもので、これが白バイ隊員へのパスポートになるわけです。ただ、誰でも隊員になれるわけではなく、白バイという特殊な任務への適性なども見た上で、約2か月間の白バイ乗務員養成講習を受けて、まずは所轄の警察署に配属され、さらに訓練を積み各方面の交通機動隊へと進んでいきます。

交通機動隊とは都市交通の最前線でドライバーや歩行者の安全を守りつつ、危険暴走行為の厳格な取り締まりを行い、円滑な交通を確保するのが主任務ですが、それ以外にも箱根駅伝や市民マラソンなどのイベントの先導や交通整理、一般ドライバー&ライダーに対する安全運転講習など幅広い任務をこなしています。

交通機動隊の中でも特に白バイは少数精鋭の実行部隊です。無線や拡声器、サイレンなどの特殊装備で固めた重量300キロを超える大型バイクを手足のように操り、疾風のように現場に急行し取締りを行いますが、相手は善良なドライバーだけとは限りません。以前、白バイ隊員に直接取材したときに聞いた話では、追走中にわざと急ブレーキをかけるクルマや、細い路地を逆走して逃げるスクーター、荒地に逃げ込むオフロード車などもいるそうです。こうした危険に体を張って公務に当たっているからこそ、隊員はどんな交通環境、路面状況にも対応できる高度なテクニックとタフな精神力の習得に励んでいるのです。

そんな彼らの雄姿を間近で見られるのが、毎年10月に茨城県・ひたちなかで開催される「全国白バイ安全運転競技大会」です。大会に出られるのは交通機動隊の中から選抜された特別訓練生だけです。いわゆる「特練」と呼ばれ、各都道府県警の交通機動隊から集められた20人ぐらいの中から数名に絞られ、さらに大会に向けての選考会を勝ち抜き、最終的に出場できるのが3名という狭き門です。つまり、交通機動隊の白バイ隊から選りすぐられたエリート中のエリートが「特練」ということになります。

ちなみに白バイ大会は4種目の総合得点で競われるもので、団体と個人の部がありますが、その内容がまた超絶で、狭い道路での急旋回や高速8の字、極低速バランス走行やスラローム以外に、トライアルやモトクロスなどの不整地走行などもあります。競技を見ていれば理解できますが、彼らにとってはウィリーやブレーキターン、スライド走行などの曲芸走行も朝飯前なのです。

話は戻って箱根駅伝ですが、東京区間は警視庁、神奈川区間は神奈川県警の白バイ隊員が先導を受け持っています。中継の合間に隊員の紹介が入ることがありますが、中には白バイ大会入賞者の顔も見られます。駅伝の選手や沿道で応援する人々の安全を見守る彼ら白バイ隊員の沈着冷静な表情の奥に秘められた情熱とポテンシャルもまた見どころといっていいでしょう。

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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