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「スクランブラー効果」でドゥカティ単月登録台数記録を更新!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
新たなファン層をつかんだDUCATI SCRAMBLER

ドゥカティジャパンは2015年6月の新車単月登録が502台となり、1998年のドゥカティジャパン発足以来、最高台数となった事を発表した。

同社プレスリリースによると、502台という単月登録台数は、2004年4月に記録していた458台を11年振りに大きく更新し、史上最高値となっている。6月中旬に国内投入された「スクランブラー」シリーズの販売が好調なことに加え、主力車種であるモンスターやディアベルも堅調。1年前に導入された残価設定型ファイナンス「デスモプラン」が定着し、登録台数を押し上げたと原因を分析。また、6・7・8月の新モデルデビューに際して、専門誌・一般誌での記事掲載が増えたことも追い風となったようだ。

この快挙の立役者はやはり何と言っても「スクランブラー」だろう。同社では2015年の年間販売目標を当初500台に設定していたが、発売からわずか3ヶ月で到達。現在、800台以上に販売目標を上方修正する方向で調整中だとか。ドゥカティのような高級車メーカーでこのような爆発的なヒットを記録するのは珍しいこと。まさに同社にとっては「スクランブラー効果」と言える嬉しい状況だ。

その秘密は巧みなブランド戦略にあるだろう。スクランブラーはドゥカティの中にあってドゥカティとは別ブランドとも言える異色の存在。それを象徴していたのが今年3月、大阪、東京モーターサイクルショーにおけるブース展開だ。イタリアンレッド一色に染まったお馴染みのドゥカティ・ブースの隣に、それと同等のスケールで大々的に展開された黄色のスクランブラーのテント。そこでは、太陽と砂浜とサーフボードがビジュアルとして演出されていた。ドゥカティと言えば、高性能やプレミアム感、レースなどの"極み"のイメージを強く打ち出してきたブランドだが、その真逆とも思える"緩い"イメージが衝撃的でさえあった。

コンセプトは「ポスト・ヘリテージ」。過去の遺産をリスペクトしつつも、伝統に囚われない新しい形を創造するという意味らしい。自由であることの価値観をアピールすることで、今までの尖がったドゥカティとは縁のなかった幅広いライダーや、自分らしいライフスタイルを好むファッション感度の高い人々の共感を生んだわけだ。

4輪に例えるなら、メルセデス・ベンツにおけるサブ・ブランド、「スマート」の存在に近いかもしれない。ドゥカティの価値や品質はそのままに敷居をぐっと下げ、誰でも手が出せるデザインと扱いやすさ、プライスで新境地を開拓したのがスクランブラーなのだ。

もっとも、世界的に見てもドゥカティは売れている。ドゥカティ・モーターホールディングs.p.a.の発表によれば、2014年には前年比2%増となる45,100台を達成するなど、販売台数は5年連続で増加している。車種的には新型モンスター1200とモンスター821から構成されるモンスター・ファミリーが前年比31%増となる16,409台を販売。また、スーパーバイク・ファミリーも好調で899パニガーレは、前年比74%増となる5,806台を納車。スーパーバイク・ファミリー全体でも、2014年に前年比12%増となる9,788台を記録している。

地域別には北米が最大のマーケットだが、最近はタイや中国などのアジア諸国やオーストラリアでも需要が伸びているのが特徴だ。ちなみに日本における2014年度販売台数も2567台と4年連続のプラス成長を記録している。

4輪高級車メーカーでも最近の売れ筋はスポーツコンパクトモデルと聞くが、ドゥカティでも車種別にみると同じような傾向があるのかも。そう考えると、ドゥカティの親会社はアウディだったりもするし・・・・・・。単月登録台数記録の陰には、そんな事情も見え隠れする。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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