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【自動運転の未来に警鐘】ロボット化するクルマ、その中でバイクはどうする!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
(写真:アフロ)

クルマの自動運転の実用化に向け、政府が法整備に乗り出すという。最近ニュースでも取り上げられていたが、公道でメーカーによる自動運転車の実証実験ができるようにし、データを分析した上で2020年を目処に法整備を目指すそうだ。

現行法ではクルマにドライバーが乗っていることが前提だが、急速に発展する自動運転技術の現状から、政府ではドライバーを一切必要とせずハンドルもない「完全自動運転」の技術開発を目標にしているとのこと。これに呼応するように、最近にわかに国産各メーカーも次々に自動運転に関する技術的成果を発信している。10月に開催された「東京モーターショー」を見てもそれは明らかだ。

一方、警察庁はドライバーのいない自動運転車が事故を起こした場合の責任の所在などについて法的検討を始めるが、ハッカーによる自動運転車の乗っ取りも想定した対策も課題だという。

超ハイテク都市「TOKYO」を世界にアピールすべく、東京五輪で華々しく完全自動運転車をデビューさせたいという思惑は分からないでもないが、素人目にも100%安全に運用できるまでには難題が山積みに見える。果たして自動運転の未来はバラ色となるだろうか。

翻って二輪はというと、公式には自動運転化の話題は聞こえてこない。グーグルその他のIT起業がモーターサイクルの分野までその対象として研究を進めているという話はあるが、実際の公道における安全性や信頼性を考えると実用化までは遠いと思われる。二輪に自動運転をさせることに意味があるのか、は置いておくとして。

二輪においてより現実的なのは先週、ホンダ、ヤマハ、BMWの3社共同での発表があった「協調型高度道路交通システム(C-ITS)」だろう。これは人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、様々な課題を解決するためのシステムで、先進国を中心に実用化に向けて急ピッチで研究が進められている。C-ITSが実用化されることで、あらゆる交通手段の安全性や効率が向上し、特に二輪車の安全性を飛躍的に向上させると期待されている。前述の3社は共同で二輪に特化したシステムの開発を行い、車載器の標準化を進めていく計画だ。

ただ、そこで問題となるのが四輪と二輪の運転特性の違い。既存のモーターサイクルをC-ITSに組み込むためには、専用のソフトウェアやアルゴリズム開発が必要で、二輪はここでも障壁は高いと言わざるを得ない。たとえば、こういうケースも考えられないか。普段はスムーズに協調して走る自動運転のクルマでも、突発的な事故を避けるために急ブレーキをかけざるを得ない局面もあるだろう。自動化されたクルマ同士は、人間には到底できない短い車両間隔や素早い操作時間で急減速することが今後は可能になるはずだ。その車列の中で、人間が操作する二輪車が安全に混走できるとはとても思えない。かといって何もせずに手をこまねいていては、変化する交通社会の中で二輪の存続すら危うくなっていく気がする。

社会全体が急速にロボット化、人工知能化に向けて進んでいく今、モーターサイクルをその枠組の中でどう親和させていくかがこれからの課題だろう。

※原文から著者自身が一部加筆しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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