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【試乗レポート】DUCATI「Xディアべル」独自の世界観を持つスポーツクルーザー

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
DUCATI X-DIAVEL

ドゥカティが作る初めてのクルーザー

Xディアベルのプレス試乗会が開催された。Xディアベルはドゥカティが作る初めてのクルーザーである。従来のディアベルを表現するワードとして、ドゥカティではクルーザーという表現は使っていなかった。では、ドゥカティが本気でクルーザーを作ったらどうなるのか・・・・・・その問いに対する答えが今回のXディアベルというわけだ

「X」には、スポーツとクルーザーを掛け合わせるという意味でのXや、未知なるものなど、いろいろな意味が含まれている。

これまでのドゥカティと言えば、高性能やパッション、レースなどのキーワードが並んだが、Xディアベルはそうした従来の概念を変えるパラダイムシフトを狙ったモデルということができる。ドゥカティが積み上げてきた「赤」の世界感を含みつつもっとラグジュアリーに、そしてスピードをコーナリングではなくストレート(直線)に置き換えた。

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ジェントルでやんちゃ

ライダーのスタイルイメージも革ツナギではなく、ドレススーツの似合う男でありながら、ときにやんちゃに楽しむ(バスターズ)をテーマとするなど、粋なエッセンスを加えていることが新しい。こうしたコンセプトと価値観を理解した上でないとXディアベルの全体像をつかむことはできないのだ。

スタイリングは従来のディアベルより、さらに長く低いシルエットが特徴。その中でドゥカティのアイデンティティである、Lツインにマスを集中させた、力強くセクシーなライン。それを際立たせるデイタイム・ランニングライトを備えるフルLEDフロント&リヤライトやダイヤモンドコーティングフォーク、ブレンボM50ブレーキキャリパー、マシン加工ホイールなど高性能パーツの数々が装備され、まさにラグジュアリークルーザーとして仕上げられている。

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キーとなる3つの数字

Xディアベルはクルーザーとしての「ロースピードエキサイトメント」とドゥカティ本来のスポーツライディングの楽しさの、完全なる融合を目指したモデルである。そこで用意されたのが3つの数字、「5000」「60」「40」である。

「5000」は新開発の水冷L型2気筒エンジンが13.1Kgmの最大トルクを発生する回転数を表すもの。従来のディアベルのスペック(11.9Kgm/6250rpm)と比べると、Xがいかに低回転大トルク型であるかが分かるはず。排気量はストロークアップにより、1198ccから1262ccまで拡大され、最高出力も112psから156psへと大幅にアップ。加えて、新型ムルティストラーダに採用されているDVT(可変バルブ機構)を搭載し、全回転域でのスムーズかつパワフルな出力特性を得ている。

「60」は設定できるライポジの数で、4つのフットレスト、5つのシート、3つのハンドルバーがそれぞれ用意され、計60通りものアレンジが可能となっている。

そして、「40」は最大バンク角を表す数値で、スタンダードのディアベルの41度と比べても、ほぼ同等のコーナリングパフォーマンスを発揮できる素地があることをうかがわせる。

そして最近のドゥカティの十八番でもある電子デバイスもフル装備。ブレンボ&ボッシュ製9.1MEコーナリングABSシステムに、トラクションコントロール、3種類のライディングモード、全開発進を安全にサポートするパワーローンチなど、最先端のシステムが組み込まれている。

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独自の世界観

今回の試乗で感じたのは「他のどのバイクとも似ていない」こと。もちろん、従来のディアベルとは兄弟関係にあることは間違いないが、トップスローからでもドコドコ加速していく粗粒な鼓動感や、ロー&ロングかつ独特のポジションが生み出すフラットで大らかなライド感などは、明らかに「X」独自の世界観といっていい。

詳しいインプレッションは後日あらためてお伝えするとして、新しさとともに静かな興奮を覚えたことを記しておきたい。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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