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ドゥカティの本気アドベンチャー「ムルティストラーダ1200エンデューロ」発売開始!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
DUCATI Multistrada 1200 Enduro

よりオフロード性能を高めたリアル・アドベンチャーモデル

ドゥカティの「Multistrada 1200 Enduro(ムルティストラーダ1200 エンデューロ)」が、いよいよ7月から国内リリース開始となる。

“エンデューロ”の名のとおり、従来のムルティストラーダ1200Sをベースに、よりオフロード性能を高めたリアル・アドベンチャーモデルとして位置づけている。1200Sも相当なオフ遊びができるモデルだが、さらにその上をいくポテンシャルはどこに秘められているのか、違いを含めてひとつひとつ見ていこう。

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電子制御をさらに充実。坂道発進用VHCを装備

エンジンは水冷DOHC90度Lツインで、総排気量1,198ccから発生する最高出力と最大トルクは、150HP/9,500rpm、128Nm/7,500rpmということで、スペック的には1200Sと同様。先進のドゥカティ・テスタストレッタDVT(デスモドロミック可変タイミング)を搭載し、高回転域のパフォーマンスと低回転域でのスムーズで豊かなトルクを両立している。

ただし、ギアレシオが1200Sとは一部異なっていて、1速のギア比が低めに設定されている。これは悪路において、アクセル低開度でもトラクションを伝えやすくするとともに、モトクロッサーなどと同じ加速重視の特性を持たせるためと思われる。

4つのカテゴリーを1台に凝縮した「4バイクスin1」のコンセプトも健在で、4つのライディングモードのうちでも特に「エンデューロ」モードは、悪路における最適なパワーデリバリーとトラコン、ABSの制御を行うことで、意図的にパワースライドやブレーキターンをこなせる設定になっている。

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その他の電子デバイスも1200S譲りで、コーナリングABS、コーナリング・ライト(DCL)、ドゥカティ・トラクション・コントロール(DTC)、ドゥカティ・ウィリー・コントロール(DWC)を装備。

トピックスとしては、ドゥカティとして初めて坂道発進を助けるビークル・ホールド・コントロール(VHC)を採用したことだ。これは4輪で言うヒルスタートアシストのようなもので、前後どちらかのブレーキを強くかけることで、一定時間ブレーキ力を保持してくれる仕組み。クルマのサイドブレーキのように使えることで坂道発進などで有効だ。

特にオフロードでは滑りやすい急坂を登るヒルクライムのような場面では重宝するだろう。

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オフロードでの走破性と機動性を重視

大きな違いは足回りだ。エンデューロには1200Sと同様、ドゥカティ・スカイフック・サスペンション・エボリューション(DSS EVO)と呼ばれるザックス製電子制御セミアクティブ・サスペンションが標準装備され、オン・オフを問わず路面状況に合わせて常に最適なセッティングを瞬時に調整できる仕組みになっている。

加えて、エンデューロでは前後サスペンションのストローク量を30mm増やして200mmへと伸ばすことでロードクリアランスを稼いでいる。

また、前後タイヤもフロントが2インチ大径化され120/70-19に、リアは170/60-17とホイール径は変えずに幅を2サイズ細くするなど、よりオフロードでの走破性と機動性を重視。タイヤ選択の幅も広がった。

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さらに、スイングアームも片持ちから両持ちタイプへ変更、ホイールそのものもキャストタイプからワイヤースポーク仕様となり衝撃耐性を高めるなど、まさに定番とも言えるオフロード仕様へと変貌している。

これ以外にも、フロントアクスルを前方にオフセットしたリーディングアクスルを採用することでハンドリングに軽快感を持たせたほか、スイングアーム長を延長することでホイールベースも延長するなど、車体ディメンション的にも細かな変更が加えられている点も見逃せない。

ちなみに、最低地上高がアップしてロードクリアランスを稼いだことで、シート高も30mmアップの850mmとなり、ハンドル位置もよりオフロードを意識して高めにセットされている。

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デザインも一新。快適なバイク旅を演出

デザインも一新された。450km以上無給油走行が可能な30リットル燃料タンク(1200sは20リットル)に合わせて、フェアリングもリデザインされ、延長されたフロント・ビークやフロント・マッドガードとともに泥跳ねをプロテクト。カウルサイドにもアルミプレートが装備された。

1200S同様、バンク角に応じて点灯するLEDコーナリング・ライトや、ライディングモードに応じて自動的に変化する5インチのフルカラーTFT液晶タイプのディスプレイ、Bluetooth経由でスマートフォンの通話や音楽を楽しめる機能の他、専用アプリでツーリング情報やバイクのデータを分析、SNSで情報共有できる機能も搭載されるなど、快適なバイク旅を演出するための装備の充実ぶりにも目を見張る。

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元々のオールマイティ性能にさらに磨きをかけ、3次元での行動半径を広げた、まさにスーパーマルチパーパスモデルの誕生である。そして、オンロードのスポーツモデル専業メーカーとして歩んできたドゥカティが、初めて足を踏み入れた本格的オフロードジャンルのバイクとして歴史に名を刻むことになるだろう。

なお、メーカー希望小売価格は2,699,000円(税込)からとなっている。

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※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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