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【時速400km】カワサキ・H2Rが市販車「世界最速記録」を公道で樹立!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
世界最速記録を樹立したKAWASAKI Ninja H2R

「400km/hに到達させる」という、カワサキの夢と挑戦の記録

世界最速マシンとして知られる、カワサキ・Ninja H2Rが去る6月30日に、正真正銘の量産市販車による「地上最速記録」を公道で打ち立てた。

この挑戦はトルコのイズミット湾にかかる長い直線を持つ横断橋を閉鎖して行われた。ライダーとして名乗りを上げたのは、「スーパースポーツ世界選手権」(SSP)で4度の王座に輝く地元トルコのスーパースター、ケナン・ソフォーグル選手。

ちなみにSSPはSBKと併催される600ccのマシンで争われるクラス。改造範囲が狭く、ベースマシンの性能とライダーの腕がそのまま勝敗に結び付くクラスだ。そこで”最も成功したライダー”と言われるソフォーグルの実力は推して知るべしだろう。彼は2015年に続き、今年もカワサキ・ZX-6Rでチャンピオン獲得へ向けて首位を走っている。

「H2Rのこれまでの速度記録である380km/hを超えて、400km/hに到達させる」というカワサキの夢を請け負ったソフォーグルは、今回の挑戦に備えて4ヶ月のトレーニングに励み、何度もこの場所に足を運ぶなど入念な準備を行ったという。着用するレザースーツも、記録挑戦用に特別にあつらえたものだ。

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今さらながら、H2Rは川崎重工が持てる技術の粋を集めて開発したメガスポーツである。一番の特徴は市販2輪車としては初となる「スーパーチャージャー」を搭載したこと。

川重が得意とするガスタービン部門と航空宇宙部門の全面協力を得て完成にこぎ着けた、これまでの量産車とは一線を画するモーターサイクルである。

公道仕様としてブースト圧を抑えたH2が200psであるのに対し、サーキット専用として解き放たれたH2Rは排気量1000cc直列4気筒から最高出力300psオーバーを叩きだす。現代における最強最速のマシンであることに誰も異存はないだろう。

運命の瞬間。タイヤの限界は30秒以内

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そして迎えた運命の瞬間は、ぜひ動画でチェックしてほしいのだが、その凄さをよく理解していただくために、ちょっとだけ予備解説しておきたい。

冒頭では、先が霞むほどの長い横断橋のスタート地点に佇むH2Rが映し出される。これから前人未到の領域に挑もうとする、ウイングレット(小型の翼)のついた異形のマシンは鳥肌が立つほど美しい。

300psオーバーのメガパワーを受け止めるタイヤはスリック仕様だ。ちなみにスリックタイヤがその速度域を支えられる限界は30秒以内だ。

祈りを捧げるソフォーグル。心臓の高鳴る鼓動が聞こえてきそうだ。そして運命の時。ホイールスピンしながら猛ダッシュするH2R。

わずか8秒で300km/hに到達

コックピットに設置されたオンボードカメラにはスタート直後に100km/h、4秒で200km/h、そしてなんと8秒で300km/hに到達し、さらに猛烈に加速しつづける様子が映し出されている。

道路の白線が弾丸のように飛んでくるライダー目線の映像は圧巻で、とても地上の乗り物のスピード感ではない。

そのまま一気に達成かと思えたが、さすがに「そこ」には壁があるようで、390km/hからの数秒が長く感じられる。一呼吸おいて再び加速、26秒台で400km/hの数字が目に飛び込んできた。

こみ上げる感情を抑えきれず、思わずスタンディング・ガッツポーズで歓びを爆発させるソフォーグル。仲間に祝福されて高々と宙を舞い、母国、トルコの国旗を翻しながらH2Rを駆る姿はまさしく伝説の英雄そのものだ。

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そして、動画の最後にはH2Rのキーをオンにして表示される、MAX SPEED 400km/hの表示。良質のアクション映画のラストカットを見ているような、クールな演出にもぜひ注目したいところだ!

「この速度記録を達成して、それを神に感謝するのが私の夢でした」とソフォーグル。彼とその夢を叶えたH2Rの偉業を心から称えたい。

Sofuoglu Hits 400 km/h in Record Attempt

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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