「SV650 ABS」スズキから運動性能を高めた新型Vツインスポーツが登場!
原点回帰とも言える新型SV650 ABS
スズキから新型SV650 ABSが登場、8月11日より発売開始した。
650ccVツインエンジンをスリムで軽量な車体に搭載した新世代ロードスポーツモデルで、海外で好評を得た先代「SV650」の操縦性にさらに磨きをかけつつ、軽快なハンドリングと俊敏で力強いスロットルレスポンス、扱いやすさも兼ね備えているのが特徴だ。
先代SV650は国内向けのSV400とともに1998年にデビュー。VツインスーパースポーツTL1000Sのイメージを投影したハーフカウル付きモデルSV650Sとともに特に欧州で高い人気を誇った。
その後、TL系エンジンを搭載する上位モデルのSV1000/Sの登場に合わせて、SV650/Sも角張った車体デザインと角アルミフレームを採用した新型へとリニューアル。2009年よりSV650系エンジンを搭載した新型ネイキッドモデル、グラディウス(輸出名:SFV650)へと受け継がれている。
そして今回、原点回帰とも言えるシンプルな外観と走りの性能を追求した新世代のVツインスポーツとして誕生したのが、新型SV650 ABSである。
エンジンはシリーズ最高パワー。新技術も投入
新型「SV650 ABS」は、2015年11月にイタリア・ミラノショーでグローバルモデルとして発表され、すでに今年1月より海外ではデリバリーを開始しているが、今回、満を持して日本市場に投入されることになった。
エンジンは熟成された伝統の水冷90°V型2気筒DOHC4バルブ645ccを採用。現行モデルではV-Strom650に搭載されているのと同系エンジンである。ボア&ストロークはグラディウスやV-Strom650と同様、81mm×62.6mmとショートストローク設定であり、基本的には高回転型と見ていいだろう。
スズキのリリースでは「エンジンは先代譲りの低回転域での鼓動感や、中回転域の力強い立ち上がりから高回転域までのスムーズな出力特性が特長」となっているが、加えてシリーズ歴代最高となる56kW〈76.1PS〉/ 8,500rpmのパワーにも期待が高まる。
新技術も投入されている。スズキ二輪車で初めてピストンのスカート部に錫メッキと樹脂コートを施すことでフリクションを低減。また、発進時や低回転走行時においてエンジン回転数をわずかに上げる「ローRPMアシスト」を採用し、発進・停車を繰り返す市街地走行などでの操作性の向上を図っている。
さらに、スタータースイッチを押し続けずにワンプッシュするだけでエンジンが始動する「スズキイージースタートシステム」を採用し、日常用途での利便性を向上。ニュートラル時はクラッチレバーを握らなくても始動可能としている。
また、ABSも標準装備とし安全性を確保。平成28年国内新排出ガス基準に対応するなど環境性能にも最新スペックが与えられている。
コンパクト化した車体。運動性能へのこだわり
デザイン面では”スリム&シンプル”をコンセプトにすっきりとしたボディラインを実現。幅広いユーザーに受け入れられる飽きのこないデザインが特徴で、車体色も白、赤、黒の3色を設定するなどシンプルにまとめられている。価格は73万8,720円(消費税込み)とリーズナブルに抑えられた。
ちなみに2気筒エンジン搭載のミドルスポーツとなると、国産他メーカーではホンダ・NC750Sやヤマハ・MT-07、カワサキ・Ninja650あたりがライバルになると考えられる。
スペック表を細かく見ていくと、先代に比べてホイールベースで20mm短く(1470mm→1450mm)、シート高も15mm低く(800mm→785mm)なり、一層コンパクト化が進んでいる。スリムな車体と相まって足着きも良いはずだ。
車重は196kgとこのクラスとして特に軽いわけではないが、それにはVツインという構造的な条件も関係あるかもしれない。ただ、それでもやはりVツインには、見栄えの良さも含めてそれならではの魅力がある。
エンジンはグラディウスから受け継いだものだが、元をただせば初代SV650に行き着く。当時はキャブレター仕様だったが、穏やかなツキと小気味よい鼓動感が印象的だった。兄弟車のSV400と比べても、やはりエンジンの存在感と気持ち良さは650が上。先代はやや長めのホイールベースで、ハンドリングにも軽快な中にも落ち着きがあり、箱根のワインディングを俊敏に駆け抜けた記憶がある。
車体面での大きな違いは、先代がアルミトラスフレームだったのに対し、SVはグラディウス譲りの鋼管フレームを採用していることである。今春開催された「東京モーターサイクルショー2016」でも展示車両を前にスズキの開発者に話をうかがったが、最もこだわったのは運動性能ということだった。
ハンドリングの良さは初代から折り紙付きだったわけで、それを上回る運動性能を与えるのは容易ではなかったはずだ。ちなみに新型フレームは特に縦剛性を高めることで、コーナリング時の安定感と接地感を高めているという。車体ディメンションも全面的に見直したということで、4ps上乗せされたパワーとともにハンドリングにもさらに磨きがかかっているはずだ。
もうひとつ注目したいのは、最近の定番となっている電子制御を入れていない点だ。これも、電子デバイスに頼ることなく「素」の走りの良さを追求するめため、あえて電制は入れなかったというコメントがあった。その潔さに、新型SVへの自信が垣間見える。どんな走りを見せてくれるのか、楽しみである。